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“Pinocchio”の演出について考えてみる回




皆さまお久しぶりです、えびとらと申します


今回はタイトルにある通り、大好きなアイドルの大好きなソロ曲、“Pinocchio”のライブ演出について考えてみようと思います

というのも、“Pinocchio”の曲自体の解説は淳太くん自身がじゅんだいありーにて書いてくださり、今も閲覧することができるので(じゅんだいありートップページのピノキオアイコンから)、淳太くんのプロデュース力が遺憾無く発揮されている演出についての考察をしてみたいなと思いました


そもそもこの“Pinocchio”の物語はベースとなった小説があり、その小説も淳太くん自身が執筆したというセルフプロデュースの鬼のような所業…笑


そんな淳太くんの叡智が詰まった小説を元に作られたソロ曲の演出は、とっても作り込まれています

皆さまもrainboWの“Pinocchio”の映像を観ながらこのブログを読んでいただけると、より楽しめると思います!








まず、この曲の設定をおさらいしておきましょう

・冒頭で会話をしているおじいさんと幼い子ども
・僕(良心を忘れる前)
・ボク(君と関係を保ちながら複数人と浮気をしている) ※僕=ボク
・君(僕の初恋の人、僕に隠れて浮気をしている)
・キミ(ボクの浮気相手、ボクが浮気していることは知らない)


“Pinocchio”の元の小説は叙述トリックを使って書かれているので、漢字表記とカタカナ表記の文字が混在します

その内訳は、
歌詞上のカタカナ表記は、「嘘」および「感情のこもっていない言葉、対象」を表す
と淳太くんの解説内に示されています


この前提を踏まえて、演出についてひとつずつ見ていきましょう





“Pinocchio”は、おじいさんが蓄音機で音楽(“Pinocchio”)をかけるところから始まります

イントロが流れるとともに映し出されるおじいさんと幼い子どものシルエット

(ここ、不思議と曲だけ聞いてる時はおじいさんと子どもというより、男女の談笑に聞こえたんですよね)

ここで2人が話している英語はこうです


👦🏻What song is that?
(この曲なに?)

👴🏻It's the sad love song. Do you like it?
(これは悲しいラブソングだよ。気に入ったかい?)

👦🏻uh-hun!
(うん!)

👴🏻Hahaha!Oh yeah. Then, why don't we enjoy the rest of the song.
Come on,“Pinocchio”!
(ハハハ!そうか、じゃあ一緒に曲の続きを楽しもうか さぁ行こう、“Pinocchio”の世界へ!)



おじいさんと子どもの会話の真ん中では、“Pinocchio”の物語が書かれた本が映し出されています

そして、最後の『“Pinocchio”の世界へ!』の部分でメインのモニターに映る本が開き、物語が始まります


ここで出てくる本の文章は、淳太くんの小説を元に、載せたい文章を淳太くんがピックアップしているとオーディオコメンタリーで言っていました

つまり本に映し出される文章は、“Pinocchio”という作品にとって大事な文章でしょう



では、主役の登場場面から行きましょう

淳太くんの登場はショーが始まる時の様に、お辞儀(ボウ・アンド・スクレープ)で始まります


ここで映る最初の文章は、
『その美しさに、一目で心を奪われた』

ここで思い出しておきたいのは、じゅんだいありーの解説内にある“Pinocchio”の時系列のお話


この曲は、1コーラス目から作品の時系列が始まるのではなく、2コーラス目が始まりです

なので、『心を奪われた』のは「キミ」と「ボク」のお話

つまり左右のモニターに映る男女とは、既に浮気を始めている「ボク」と浮気相手のひとりである「キミ」のことです


モニターの映像では「僕」と「ボク」、「君」と「キミ」で明確な書き分けをしているので“Pinocchio”のストーリーを把握しやすくなっています

「ボク」は赤い羽根のついたハットを被っていて、「僕」は被っていない、
「キミ」はピンクの華やかなドレス、「君」は質素な水色のドレス
を身につけています


『一目で心を奪われた』場面の後では、「ボク」が跪いて告白をしている場面が映ります

その周りに「ボク」が渡したと思われるプレゼントがあります

物で釣って手に入れた偽りの愛情とも捉えられるかもしれないですね


そして告白は成功し、2人は恋に落ちます

恋に落ちた描写を実際に堕ちている様に描き、堕ちた先にはベッドがあるという生々しさ……


キミがベッドで寝静まった夜、そのベッドからひっそり抜け出す「ボク」


『ボクにはたくさんの糸がついている。絡まないよう、慎重に動かないとね。』

「ボク」はたくさんの人と関係を持っています

糸は愛や運命を表し、絡まないよう=浮気がバレないよう「ボク」は動いている、ということですね


そして場面が変わり、この“Pinocchio”の演出の印象的なイラストが映ります

その印象的なイラストとは、ブランコに乗った男女の映像です


これは映像の中に度々現れ、実はベッドが映るシーンでも、壁にこのブランコに乗ったイラストが絵画として飾られています


実はこのブランコに乗ったイラストは、とある絵画作品のオマージュであります

このオマージュに関してはX(Twitter)などでもたくさんの方が詳しく言及していますが、改めてこちらで明記すると、この“Pinocchio”のイラストは、フランスの画家であるフラゴナールが描いた『ぶらんこ』という作品を元にしています


ジャン=オノレ・フラゴナール『ぶらんこ』

https://publicdomainq.net



この『ぶらんこ』という作品が“Pinocchio”内で使われているのは深い意味があります

それは、『ぶらんこ』には破廉恥なテーマが隠されているからです


この作品が描かれたのは18世紀のフランス

当時の貴族階級の結婚は後継ぎを絶やさないことが大きな目的だったことから、恋愛結婚はほとんど無かったとされています


ブランコに乗った女性の足を覗き込む様に描かれている男性ですが、実はこの男性がこの絵の依頼主だそうで、ぶらんこは性行為を指すモチーフと言われています


ロココ時代を代表する画家フラゴナールの「ぶらんこ」。実はぶらんこは性行為そのものを暗示するものなのだそう。片方の靴が脱げているのは貞操の喪失を意味し、スカートの中を覗いている男性は注文主の若い頃の姿であり、左腕は性的に高揚していることを示しているそうです(!)。

ダ・ヴィンチweb


引用元の文章から考察するに、“Pinocchio”でブランコが登場するのも「僕」と「君」、「ボク」と「キミ」が不貞行為をしていることを指していると考えられます


“Pinocchio”の映像内で映ってる「君」と「キミ」もブランコに乗ってるときは靴が脱げているんですよ

キミ



細部までこだわって作られた映像だということがよくわかって感動しています;;



そして、サビに入ります

『あなただけ』

「キミ」から「ボク」に送られた本心の言葉

『アナタだけ』

「ボク」から「キミ」に送られた偽りの言葉

この言葉が交わされている場面は、空に雲が多い曇天
原作のピノキオでは星空の下で願いが叶ったので、曇天の下ではこの恋は“本物”にはならなそうですよね…


そして偽りの愛の言葉を発した「ボク」は今日もそれが“幸せ”だと思いながら過ごしているので鼻が伸びてしまいます


鼻高々な「ボク」の瞳の奥に入ると2コーラス目が始まります

ここからは「僕」が「君」を好きになった時の回想です



『何処にいても何をしていても、君が頭から離れない。こんな気持ちは初めてだ。』


「僕」の初恋のパートである2コーラス目の切り替えの部分のダンスがスキップやターンであることで、すごく流れるように雰囲気が変わるのが素晴らしいなと思います

更に、私が初見で“Pinocchio”を見た時、1コーラス目と2コーラス目で淳太くんの表情や魅せ方が全然違うなと感じて、そこも凄いと思いました

これもきっと淳太くんは確信犯で、1コーラス目は既に浮気をしている「ボク」を表現するためにニヤッとした表情や艶っぽい仕草が多く、2コーラス目では純粋無垢な少年の様な初々しさ、ドキドキが表現されていると受け取りました


この自己プロデュース力、ほんとにあっぱれです



さて、話をストーリーに戻すと、1コーラス目で「キミ」に告白をしていた時の様に、2コーラス目でも「僕」が跪いて「君」に告白をしています

ただ、1コーラス目と違うのは、僕らの周りにプレゼントが映ってないところです


2コーラス目の映像では初恋らしい“純粋さ”が至る所に散りばめてあります

そして告白は成功し、お付き合いが始まります



『何か僕に隠していることでもあるの?部屋を出る君の後ろ姿に、何本もの糸がみえた。』


「君」との愛を確かめ合った夜、「君」はベッドからこっそりと抜け出して「僕」の元を離れます

1コーラス目の「ボク」によく似ていますね

「君」も複数の人と関係を持っているので赤い糸が繋がれています


そしてこのベッドシーンにも『ぶらんこ』が壁にかかっています


この直後に映るブランコに乗った「僕」と「君」の幸せそうな映像は、鼻の伸びた「君」の偽りの笑顔で切り裂かれており、それを思い出している今の「ボク」が『「君」の嘘下手だったな』と笑いながらも落胆している様子は、崩れ落ちる淳太くんの表現からも伺えますね



2コーラス目のサビは「僕」が「君」に愛を囁いている場面


『君に永遠を誓った夜。窓の外は満天の星空。そういえば、ピノキオが人間になったのも、こんな星の瞬く夜だったっけ?』


このサビの場面で会場全体が映し出されるのも素晴らしいアングルだなと感心しました

というのも、オーディオコメンタリーで淳太くんも言っていますが、メンバーカラーが黄色であるため、暗い会場内に灯るペンライトの黄色が星に見えるんですよね

なので、星空がキーポイントな2コーラス目のサビにこのアングルを持ってくる粋な演出と、自身のメンバーカラーで染まる会場も意識して演出した淳太くんに感動しました 凄すぎる


上記の淳太くんの小説の一文にある様に、「僕」が「君」に『あなただけ』と伝えた夜は映像でも星が流れる素敵な夜

しかし「君」が「僕」に伝えたのは『アナタだけ』という偽りの言葉

これは本物の“幸せ”なのでしょうか、という疑問を残し大事なパートに入ります


「僕」は赤い糸に手繰り寄せられ、糸が切れたまま真っ逆様に堕ちていきます


堕ちた先で赤い糸に繋がれる「僕」

この一本の赤い糸は、歌詞にある通り『やっとの思いで掴んだひとつだけの運命』で、「君」との恋を離すまいと、距離が近づく様必死に手繰り寄せます

しかし手繰り寄せた先に見えたのは無数の赤い糸と繋がっている「君」


じゅんだいありーの解説にもありますが、Dメロの歌声には一部フィルターがかかっており(『やっとの思いで〜心を奪われたんだ』まで)、ここは僕の心が壊れるまでを表しているそうです

この解説を聞くと、「君」との赤い糸で繋がれた「僕」は、繋がれているというより「君」が操っている様にしか見えませんね


「君」の偽りの愛に踊らされている「僕」はその現実を知り、良心が崩壊します

ピノキオは良心を知り人間になったということは、「僕」は良心を失って人形(=「ボク」)になってしまうということ


赤い糸を断ち切った「僕」は自分の体から赤い糸が生えてきます

自ら赤い糸に繋がりにいっている(=浮気をする)とも受け取れるでしょうか


ここは「僕」が「ボク」に変わる心の動きだと思うのですが、『その姿に心を奪われたんだ』まではフィルターがかかっているので「僕」が“幸せ”や“愛”に踊らされ、裏切られる運命であることを悟っている様に見えます

そして、『ねえ見てよ今じゃボクの方が上手に踊れるよ』では完全にフィルターが取れて「ボク」に変わっています

「ボク」は自ら踊り、赤い糸を絡ませにきていて、更に赤い糸を外して操る側になることもできます


赤い糸を外した「ボク」は鼻が伸びています

ここ、不思議と淳太くんがしっかり人形の様に見えて鳥肌が立ちます……



『ねえ、見てよ。』

この台詞、こちらもじゅんだいありーで解説があり、この台詞も声が重なるような加工がされているところから、「ボク」の中にまだ「僕」の感情(=人間としての感情)が残っていることを指している、とありました



さて、いよいよクライマックスです


『キミと僕は本当によく似ているね』

真実の告白である『あなただけ』では左に「キミ」、右に「僕」が映し出され、『アナタだけ』の瞬間に小説の文章が
『君とボクは本当によく似ているね』
に変わります

ここもよくできた演出ですよね


ラスサビは、「僕」が「君」に思いを伝えた日の夜のことを、「キミ」と過ごす夜に「ボク」が思い出しているところです


なので、左のモニターには「キミ」と「ボク」が、右のモニターには「君」と「僕」が映り、ブランコに乗った2人の姿が描かれています


この描写もかなり重要な描き分けがあり、「僕」が告白をした日には星空があったため、右のモニターの映像には星がたくさん描かれています


『星の瞬いたあの夜。ピノキオと同じように、人生で1番嬉しかった夜。』


「ボク」は「キミ」と過ごしながらあの時の純粋な告白を思い出しています

ここらへんは、淳太くんの表情からも読み取れる様に、「ボク」と「僕」が最後の葛藤をしています


モニターには、「ボク」と「僕」の経験した恋が走馬灯の様に流れ、これは“幸せ”だったのだろうかと自身に問いかけています


しかしモニターに映る文章は『…幸せな時間』から『…シアワセな時間』に変わってしまいます


『あなただけ』とお互い呼べる関係を“幸せ”と気づくことがもうできず、「君」と本当に成就していたら「キミ」に出会えてなかったから、「君」への『あなただけ』はただの“シアワセな時間”だったんだと拗れて解釈してしまった「ボク」


本当の“幸せ”を“シアワセ”だと勘違いしてしまった「ボク」は良心を失った人形になってしまいます

鼻が伸びていることに気付かぬまま、笑顔で踊り続ける人形に……



ここでもこの演出凄いなと思ったポイントがありまして、先程記述した通り、モニターに『…シアワセな時間』と表示された後から完全に人形になってしまいます

この人形になったところ(=完全に「ボク」になったところ)からダンスにも人形の様な動きが増えてくるんですよね

脱力したように首がカクカクしたり、曲が終わる部分のダンスはゼンマイ仕掛けの様な動きをされています



きっと振付師さんにも歌詞の意図を伝えて、ストーリーに合う様な表現を淳太くんが探ったのかなと思っているのですが、もう感動通り越して怖くなってきました


最後は舞台の幕がおり、ほんとに鼻の伸びた「ボク」が嘲笑して“Pinocchio”が終わります


最後に映される淳太くんの表情は、甲高い笑い声と伸びた鼻が印象的で、もう人間の面影はありませんでしたね

これがFin.なのが最高に後味悪くて素晴らしいです









さぁ、皆さまいかがでしたか?

私は、淳太くんのソロという名の、THE中間淳太ワールドを堪能できる最高のアトラクションに乗った気分です



この、深く考えるとズルズル心の中で引きずってしまう様な後味の悪さが、たまらなく好きですね

このブログを書きながら“Pinocchio”を何回も見たので悪い夢を何度も見ました笑



今回、ずっと書きたかった題材のブログを書いてとても自己満足しているのですが、自分でブログを読み返しているうちにひとつ怖いことを思いついてしまいました


ここからは自分の中の妄想を引っ張ってきた、根拠のない怖い話です……




この“Pinocchio”ですが、冒頭の演出でおじいさんが子どもに蓄音機で“Pinocchio”を聞かせていましたよね


ここ、蓄音機の近くにピノキオ人形がいて、大きくモニターに映るんですよね

映る時間は長くはないのですが、ここで映るピノキオ人形はじゅんだいありーの“Pinocchio”解説ブログのアイコンにもなってます

アイコンにもなっているくらいなので、以前からこのピノキオ人形が引っかかっていたのですが…


この人形、もし、元人間だったらめちゃくちゃ怖くないですか……?

もしもの話、“Pinocchio”に出てくる「ボク」が物語の後も益々偽りの愛に溺れてどんどん人形に姿形が近づいてしまい、月日が経つにつれて完全な人形になってしまったとすれば……

蓄音機の横の人形は、元人間の「ボク」なのかもしれないですね…






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