スーパーマリオ1という特殊なゲーム

アクションと言えばマリオ、と言われることが多く、それを否定する人は少ないでしょう。

しかし、実際のゲームをプレイしてみると、他のゲームと一線を画した操作性の違いを感じるはずです。

アクションは全部マリオのフォロワーかという話題がありますが、実はスーパーマリオブラザーズ1(以下マリオ1)ってかなり特殊なゲームなんじゃないか?というのが本記事の趣旨になります。

私もゲーム制作者の端くれとして、アクションゲームの操作性という側面でマリオ1を見てみました。

結論

マリオ1の挙動は当時の海外/国内アクションゲームからすれば革新的な存在であるどころか、現代のアクションゲームでもマリオ1に類似する操作性のゲームは独自性が強い、あるいはほとんど見かけない挙動をしています。

結果として、マリオ1は今でも新鮮に遊べる、一種シミュレーションやバランス取りのような側面を持った、"プラットフォームアクション"の枠にとどまらない存在だと思います。

当時の状況

出た当時(1983)も国内外で足場を乗り継いでゴールに着く、というアクションゲーム(正確にはプラットフォームゲーム、プラットフォームアクションゲーム)は存在していました。

しかしそのほとんどが初代ロックマンのように、慣性が無く、じっくり進めるようなゲームが多かったとされています。(ハード大戦動画などから)

そのため、マリオのようにハイスピードで、なおかつ制動が困難なキャラクターのゲームというのは衝撃だったと思います。

特に海外ゲームはその後もハイスピードなゲームはほとんど無く、初めて見たのがFPS(DOOM:1994)かなというレベルです。

(海外ではFPSも「Action」という位置づけです)

マリオ1がアクションの王道であるとか、基礎となったというのは見た目やゲーム性の部分ではそうなんですが、操作性を含めて見れば、今でも他に類似しない特性を持って居ると感じます。

マリオ1の操作性を解析してみる

マリオ1の挙動で、他であまりみかけないものを見ていきます。

1.初速が加速方式

ロックマンなどを見ると、ボタンを押せば最高速度で即座に移動します。

しかし、マリオ1は徐々に加速し、押し続けないと最高速度になりません。
そういうゲームは他にもありますが、マリオ1はその加速度がやたらと遅いのです。

なぜこうしたのかは別の話として、加速や減速の物理演算をハッキリとさせてプラットフォームに用いているのは珍しいと言えます。現代でさえ、そうした方式をとっているゲームは多くありません。

逆に、そうした物理演算(特に加速が遅いもの)は、それ自体をゲーム性としたものにはよく使われています(マーブルマッドネスや、Oxyd Magnum、カービィボウルなど、ボールが主人公のゲーム)

つまり、制動が難しいキャラクターを上手くバランス取ってクリアする…というゲーム性をアクションゲームに持ってきている、というのが、既に他のプラットフォームゲームと一線を画している要素です。

2.滑る(慣性が強い)

3Dゲームの現代では見かけることもありますが、2Dでしかもこの時期にここまで滑る慣性を表現しているゲームも珍しい部類でしょう。

カービィなど、ぴたっと止まるか、ほんの少しだけ滑るかがほとんどでしょう。

3.空中制動が難しい

これはマリオ特有というわけではありませんが、カービィは既に(ホバリングなしでも)空中の細かい制動を可能にしていたので、特徴として記載します。

悪魔城ドラキュラや魔界村のように、ほぼ制御不可能というゲームもあるため、制御出来るかどうかは技術や方針の問題と言えます。

しかし、マリオは横方向の加減速要素が相まって、制動が非常に特殊なものになっています。

空中動作が固定ならそれを前提に移動すれば良いですが、加減速が掛かると、それを把握して制御するの必要があり、制動不可とは異なった難しさがあります。

どういうゲームなのか

上記までを踏まえて見ると、マリオ1というゲームは単純にアクションである以上に:

・制動のバランスを取るシミュレーションゲームである
常に加減速の状況を把握し、落ちないよう、接触しないよう制御し続ける必要がある。

・地形や敵を越えるために、どう動けばいいかを考え、準備し、実行する戦術(タクティクス)ゲームである。
一瞬でやっているので、"そういうジャンルか?"と言うわけではありませんが、あまりに制動が難しいので、どういう入力をしていくかを逐一計画立てる必要が出てきます。
慣れれば計画を考える必要もなく、直感で組み立てることもできますが、一度止まってどうやって乗り越えるか、じっくり考えることもあると思います。

…と言った要素を感じさせるゲーム性/操作性になっていると私は見ています。

他のアクションゲームもこういった内容は存在するのですが、加減速の要素まで含めて考える必要がある、というのがマリオ1が持つ他との違いになりそうです。

小ネタ

そういえば8-4以外のクッパは倒すと雑魚スプライトになりますが、あれってやっぱり「影武者」ってことなんですかね。

終わりに

マリオ1のまるまるコピーというゲームはありますが、精神的フォロワー作品というのは「操作性という観点だけで見た場合」、ほとんど無いように思います。

というか、コピーゲームですら、制動はマリオ1よりストレスフリーです。
(地形判定によるイライラなどはあるでしょうが、それは地形判定という問題なので別とします)

やはり2Dでアクションとなれば、制動がしやすく、慣性もほとんどないものが多くなります。

最たる例はカービィやスペランキーシリーズなどでしょうか。

Dead Cellsはわずかに慣性がありますが、崖際でのアシスト機能が非常に優秀であるため、それに気を取られることはありません。
他の慣性ありゲームも、ほとんどは支障が無いレベルです。

加速が遅くてジャンプに失敗する、ジャンプ中の制動が予測しづらいのはストレス、滑って落ちるのがストレス、というのは確かですし、私も個人的にはこれらが解決された現代のアクションの方が好きです。

しかし、もはやこれらの要素が大きすぎるが故に、マリオ1は「そういうゲーム」という位置づけに収まっているように(プレイした今は)思えています。

マリオの挙動を常に制御して、ゴールに持って行く、というバランスゲームという意味では、非常に興味深く、今後もなかなか出てこないゲームであると思いました。

(バランスゲーム自体は他にも大量にあるので、"完全にプラットフォームアクションでありつつも"、という意味で書いてます)


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