インセプション感想

インセプションとは?

端的に言うと、他人の夢の中に入り、深層心理に考えを植え付け(インセプション)ること。
これにより、自分が考えて決めた様に見えて、実はインセプションした人間の思惑通りに行動していることになる。

一種の洗脳行為であり、当然違法。
より軽い犯罪である「エクストラクション(情報の抽出)」をしていた主人公らが、その任務に失敗したところから話が始まる。

※全体的にネタバレで書いてます。
アマプラで見られますがやや難解なので、軽く用語や階層のことを調べてから見るとまた面白さが違います。

準備段階

結論から言うと、失敗して当人(サイトー)から呼び出されたものの、その手腕を買われて「インセプション」の仕事を請け負うこととなる。

メンバーを集めるのもワクワクするシーンだが、建築士が夢の中の世界を作る、というのは若干都合が良すぎるかなと思った。
どれだけ詳細に認識出来ても、ぼやけるところは必ずあるはず…。
とはいえ、逆に脳に曖昧さを補完する機能があるからこそ、建築士によって操作できるのかも知れない。

妨害に次ぐ妨害

夢に干渉することへの防御が可能ということで、エージェントや戦闘部隊が現れて妨害する。
さらに主人公コブの妻モルがとことん邪魔してくる。

最終的に第四層である虚無にて、ギリギリのところで自分と向き合い、罪悪感≒妻の幻影と決着をつけ、なんとか帰還している。

「寝ている皆を守る(ホスト)」「防御機能=戦闘部隊を倒す(ホストや、残った者」「任務遂行」「自分の問題を解決し、虚無から脱出する」
これらを全て実行し、タイミングを見てキック(起こす作業)を成功させているのは、理解してから見るとかなり脳汁の出る怒濤の展開である。
そんなに上手くいくのか?という思いも正直出るが、計算された美しさは目を見張るものがある。

ロバート

今回インセプションのターゲットにされたロバート、「経営を失敗させるための情報の植え付け」とあるが、自然な範囲での植え付けの結果「上の言いなりになるのではなく、自分の道を進め」といった、それはそれで良い遺言になっているのが良かった。
ロバート自身、父親に「失望した」「真似をするな」と言われて生きがいを見失っていた。
しかし、それを上の(偽ではあるが)解釈だと知ることで、前向きになれたのだ(子供の頃の風車は、幼い頃のことを覚えているという意味で、良いだめ押しになった)
これによって会社自体は傾くかも知れないが、ロバート自身に生きる目的が生まれた、というのは良いオチだと思った。

妻への後悔

夢にのめり込んだ妻を連れ戻すため、「現実に戻るには死なないといけない」という内容のインセプションをした結果、現実を夢だと思った妻は自殺した。
コブへ同情もするが、ここまで聞くと正直コブのせいでしょ、という気持ちにもなる。(そもそもインセプションが違法だ)
ただ、インセプション行為を除けば、戻すためにはわりと真っ当なセリフだし、これにより現実で自殺するのを予測出来るかと言えば難しい。

そういうもやもやを残しつつ終わるのだが、あくまで妻とコブの話だということで納得することにした。
でも義父の人かわいそうだよね。

ラスト

虚無の時間で何十年も過ごして年取ったり、先に落ちていたサイトーが老人になっている描写は面白かった。
最初のシーンにつながっているのも上手い。

ラストでトーテム(夢か現実か確かめるための個人ごとの標識)であるコマが止まるのか止まらないか、というのが大体のレビューで言われているが、私も正直それはどっちでも良いと思う。
子供と会えたかどうかはコブにとっての話であり、夢だろうと現実だろうと虚無で妻(≒自分の罪悪感)と和解したことは事実であり、コブにとっては問題では無い。
あくまで、これが(今見ているシーンが、人が感じている世界が)夢か現実か、分からないよ、というメッセージを添えるだけの意味にとどまっている様に感じた(監督もどっちかは分からない、と締めている)

おわりに

一部もやっとした部分もあるが、あくまで当人の問題といえるのが夢や罪悪感、深層心理や虚無なのだと思った。
たとえ夢であっても、夢で誰それを見た、というのは紛れもない事実なのだということを感じさせる映画だった(共有しているので、余計そう思える)

また、被害者であるはずのロバートが生き甲斐に気づく流れになっているのが良かった。
途中がほとんどアクション映画なのだが、単純な善悪の話ではない。
そのため、よけいなノイズ無く、コブとロバートの自分との会話を見ることが出来た。


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