大腰筋の概要、解剖、Evaluation、Training

大腰筋の概要、解剖、Evaluation、Training

概要
大腰筋は主に腰椎と小転子を結んでおり、体幹と下肢を連結させている重要な筋です。作用としては股関節屈曲、腰椎伸展、腰椎側屈作用などがあります。歩行においては、遊脚期に脚を前方に振り出す作用や立脚終期では遠心性に収縮して、下肢の動きを制動し、その後のスムースな振り出しに寄与している、とても大切な筋です。高齢者や患者さんでは、大腰筋の短縮、柔軟性低下、筋力低下、筋持久力低下などの問題を抱えており、これに付随して、歩きにくさ、姿勢不良、バランス障害、しびれなどの症状を呈することがある。

解剖と作用(1)
浅層と深層があります。浅層は腹側にあってVertebral regionと呼ばれています。深層は背側にあってTransverse process regionと呼ばれています。浅層の起始が第12胸椎から第4腰椎の椎体側面とそれらの間にある椎間円板の側面となります。深層の起始が第1腰椎から第4腰椎の肋骨突起となります。双方ともに停止が小転子となります。作用は股関節屈曲と外旋、片側収縮では腰椎側屈、両側が収縮すると仰臥位の状態から体幹を起こすことになります。腸腰筋は遅筋(赤筋、タイプⅠ筋線維)の割合が高い姿勢筋です。


Evaluation
疼痛については、安静時痛、運動時痛、圧痛などについて確認していきましょう。圧痛については、大腿骨頭の部位が最も触診が行いやすい部位で、やや股関節を伸展して、骨頭を腹側に引き出して、触るようにしましょう。
 短縮の有無については、Thomas testで確認していきましょう。これは仰臥位で片側の股関節を最大屈曲させ、その反対側の股関節が屈曲するかどうかをみるtestです。屈曲した場合陽性で、腸腰筋の短縮が疑われます。関節可動域については股関節伸展を行い、角度と短縮について評価しましょう。股関節は伸展すると内圧が高まり、疼痛がでやすいので注意しましょう。逆に中間域では内圧が上がりにくいので、痛みが強い場合はTraining角度としては使えると思います。
 筋力については、端坐位で骨盤前傾位での股関節屈曲の動きと筋力を評価していきましょう。骨盤を中間位から後傾位にすると股関節屈曲筋力は発揮しやすくなります。SLRでは挙上ができるかや、コントロールして脚を下せるかを評価すると良いと思います。そのほか代償運動を確認しましょう。
 歩行については特に、立脚終期があるかどうかや、立脚終期や立脚中期で股関節伸展角度が担保されているかどうかを評価しましょう。また骨盤が後方偏位している場合は、大腰筋の筋力低下や股関節周囲筋の筋力低下が疑われます。また初期接地や荷重応答期で股関節屈曲運動がないかのチェックも重要です。衝撃をうけたときの、股関節の安定性が担保できているかどうか、大切な評価になります。

Training
まず最初にTrainingの原則について述べます。筋については、弛緩を得ること、柔軟性を改善すること、伸張性が改善すること、収縮性を改善すること、荷重下で機能すること、実際の歩行などの動作の中で機能することなどが重要になってきます。さらに筋機能の持ち越し効果を高めたい場合は、さらに歩行練習を30分間程度行い、有酸素運動を行うことによって、上記に記載した筋機能の改善を、長く享受できるものと考えます。この考え方に沿って、大腰筋のTrainingを考えてみたいと思います。
1点目では弛緩を得ることが重要です。これは仰臥位で股関節の回旋を他動運動や自動運動によって反復することによって得られます。リラックスできる肢位で行うのが良いと思います。股関節と膝関節が軽度屈曲位で行うことによって弛緩を得られることが多いです。
2点目では柔軟性改善が大切です。大腰筋については直接触ることができる範囲が狭いため、むずかしさがありますが、可能な限りの摩擦と、またはスーパーライザーなどの深部温熱療法を併用して柔軟性改善に努めると良いと思います。
3点目の伸張性改善については、側臥位や腹臥位での徒手的な伸張などを加えていきます。またランジ位や片膝立ち位での前後重心移動によるストレッチも可能です。
4点目の収縮改善については、端坐位、骨盤前傾位での股関節屈曲練習を反復します。またSLRをゆっくり行うなども効果的です。さらにエンドレンジからの収縮練習も大切になります。
5点目については、ランジ位や片膝立ち位での前後重心移動によるストレッチを実施したあとに、屈曲方向への収縮を持続したまま行うことで、荷重下での大腰筋の遠心性収縮を引き出すことができます。
6点目については、実際に歩行練習を行う、また速歩や大股で行うことにより、基礎的な大腰筋Trainingの効果を歩行へ転移させるイメージで実施していきます。
7点目については、有酸素運動としての歩行練習を30分間程度行い、大腰筋の伸張性、収縮性改善を確かなものとしていきます。
以上が大腰筋Trainingになります。これらの要素的な練習は一巡して終わりではなく、何度も繰り返し行うことにより効果を確かなものとしていきます。また回数などについては述べませんでしたが、主観的、客観的に改善してから、次のステップに進んでいくと、確実に効果を積み上げることができます。

参考文献
(1) プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版、医学書院、P470-471、2011年

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