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映画感想文【リベリオン】

2002年 製作
監督:カート・ウィマー、主演:クリスチャン・ベール

<あらすじ>

第3次世界大戦後、生き残った指導者たちは戦争勃発の要因となる人間のあらゆる感情を抑止させるべく、精神に作用する薬を開発。これを国民に毎日投薬し、徹底した管理国家体制を敷いた。そして反乱者は、クラリック(聖職者)の称号を持つプレストンを中心とした警察に、厳しく処罰されるのだった。銃を用いた武道ガン=カタの達人でもあるプレストンは、冷徹に任務を遂行する非情の殺人マシーン。しかしある日、封じていたはずの感情に目覚めたプレストンは、国家に疑いを抱くようになる……。

映画.com

2002年製作、つまり20年前に描いた未来の姿は全くアナログであり、その点においてはちょっとツッコミどころがちらほら。

まずは兎にも角にも、管理社会と言いながら管理が甘すぎる。
主人公、プレストンは勝手に感情抑制剤”プロジウム”の接種義務を放棄する。徹的な管理社会なら、政府高官の未接種なんて一瞬でバレるのでは?
またこの社会では創作された物語や、動物を愛玩飼育することも禁じられているのだが、感情が芽生えつつあったプレストンはつい子犬を保護してしまう。その事実が露見しそうになって取締の警らを全員射殺してしまう。
それもまた銃痕照合とかすりゃ一発でアウトじゃないの?監視カメラなんてなんぼでもあるやろ?

…まぁ、その点はプレストンをスパイに仕立て上げるため、つまりレジスタンスに無意識の二重スパイとして自然に潜入させる目的で仕組まれた、という理屈でなんとか納得できなくはない。
しかし一方、彼を陥れようとするライバル、ブラントの感情(=出世欲)は良いのか?支配者層は感情抑制剤を接種しない設定なのか?愛情もないのに結婚というシステムは残っているの?子供も厳格な管理下で育てなくていいの?
等など…。

ディストピア映画、つまりユートピア(理想郷)と相反する絶望的な世界を描いた映画としては典型的な、徹底的に管理・監視された未来社会を描いた作品だろう。
なにより1999年にはあの『マトリックス』が公開されている。
近未来、管理社会からの自我の目覚め、レジスタンスたち、そしてガン・アクション……そりゃあ二番煎じにも見られる。あるいはオマージュなのでは?と言われても仕方ないと思う。

と、いうわけでだいぶ辛口である。
もしもだが『マトリックス』と公開年が前後しているなら逆にこちらが先行作品として持ち上げられていたことだろう。制作者の頭の中まではわからないので構想自体だけならそういう逆転現象はあるかもしれないが、記録が現実である。
しかしディストピア映画は全体としてだいぶ典型化されており、今更新鮮味を生み出すのはなかなか難しい。であるならオリジナリティは細部に見出すべきだろう。
その観点から見れば、「どうせこういう流れなのだろう」という大体の観客が簡単につく予想を逆手に取って幾度か騙される流れがあって面白かった。さんざネタバレを重ねてきたが、ここはぜひ視聴して騙されて欲しいので明記は避けようと思う。
あと個人的に、犬が死なない点は大きい。

そしてクリスチャン・ベールのガン・アクション、ガン=カタ。
先程は『マトリックス』との比較で辛口を述べたが、キアヌ・リーブスのアクションはカメラワークの素晴らしさもあってこそ。
世界観の類似などもあってつい並べてしまうけれど、別個で見ればカンフー要素を詰め込んでバッタバッタと一人で敵をなぎ倒すクリスチャン・ベールのガン=カタ、十分カッコいい。

加えて『マトリックス』と比較してこちらが良い点は、「シンプル」なところだろうか。分かりやすく先の未来が明るそうなのも良い。
あんまり設定モリモリだと観客はついていけなくなるんだよネ…。

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