イモットトユッコ(Imottotwoukko)


財布もスマートフォンも持たずに家を出ると、この世界のどこにも自分の居場所がない事を痛感する。それでも私はどうすれば生存率を上げる事ができるのかを考え始めていた。「あの時ああすれば良かった」なんて、後悔のたらればは全くなかった。何も無い私には、そうするしかない現実しかなかったからだろう。きっとそうだ。
アスファルトの上を葉っぱがカラカラと音を立てながら、形を崩すのとひきかえに移動していく。髪の毛の色はその葉っぱの色に似ていて、冷え症なのに穴の空いたデザインのサンダルを履いたダサい女。周りからはどう見えるか分からないけど、実は生きるか死ぬかの状態。なのに馬鹿馬鹿しくて笑ってしまいそうになる。
まず考えたのは雨風から身を守ること。とりあえず公園にある大きな遊具の中なら大丈夫だと思った。それに公園なら水が飲める。そして野草を食べること。住居、水源、食糧の3つが揃っている。この時点で思いついた最適解だと思う。
そんな私の事なんて興味のない都市は、外観を保つため、ホームレスの居場所となるような場所に棘を敷き詰め張り巡らせ、公園は24時間監視されていた。まるで富を持たない人間の生存率がゼロになることが、都市に住む人間の幸福であるかのように感じてしまう。それでも植物は小さいながらもたくましく生きていて、それとは反対に、大きいくせにこの植物を食べることができるのかどうか知識を持たない私は死ぬしかないようだった。
考えてみれば学校の先生は「自分の力だけで生きていきなさい」と、世間の厳しさを教えてくれはしたけど、困った時に誰を頼れば良いのかは教えてくれなかった。似たような名前の通販会社はあるけどコンクリートジャングルでターザンは見たことないし、私には野良猫のように魚屋に擦り寄る可愛さもなければ、カラスのようにゴミを漁る図太さもない。「昆虫食は人類を飢餓から救う!」と誰かが言っていたけど、郊外にあった数少ない森も駐車場へと姿を変えて、昆虫が住む木さえ生えてやしない。資本主義を最優先にデザインされたこの都市は、私みたいに価値を失った人間と、値札の付かない命を徹頭徹尾殺しに来ていることに気付いてしまった。


曽和田春香は私の生き別れた妹だ。
通称『ハルッペ』は生き別れた私に会うためにストリーマーになっている。
最初のうちは生まれ育った生い立ちや、かすかな記憶を頼りに情報を募集していたみたいだったけど、全国規模で放送するテレビ番組と違って、そんな面白くもないモノを見てくれる視聴者は10人もおらず、個人情報の扱いに厳しくなった昨今においては否定的な意見も少なくなかったようだ。それでも「続けていればいつか会えるんじゃね?」という意識改革のもと、魚を釣って自分で捌いて料理をするアグレッシブさとゲーム実況の二本柱で活動する事に舵を切ったらしい。なんてたくましいんだ。我が妹よ。「本日もご視聴ありがとうございました。チャンネル登録、姉の情報よろしくね!」というのが決まり文句。風の噂なんてものは珍しく、データ化されたあらゆる事は鮮明に見えてしまう時代。昔よりもドラマチックさが少ないし、自分の生活エリアの狭さを感じる事もある。妹の活動を知ったのは簡単な話、私も会いたかったからだ。同じ誕生日、同じ血液型、同じ街の出身。それだけでもかなり絞り込める時代に、妹も自分と同じように私を探しているとなれば、出会えない確率はむしろ低く、出会えない場合に考えられるのは「死んでいる」か「出会いたくない」のどちらかだろう。
彼女がどこに住んでいるのか私は知っている。それなのに会えないのは、もし妹に会った時に何て言えばいいのか全く思い付かなかったからだ。さらに今は生活する場所を失ったという状況が、それをより困難なものにしていた。
「いきなり現れて家に泊めてくれなんて言ったらさ、幻滅するに決まってるじゃん。何コイツってさ…」
そう考えてしまうと言葉が出ない。妹に会える可能性が数%でも残っている事が「希望」であって、それが消え去ってしまうような一切の行動は遠ざけてきた。度を越した誹謗中傷のコメントが妹の目に触れないように、逐一サイトの運営に報告したし、バイトで貯めたお金をガンガン投げ銭したりもした。遠くから見守っている事が少しでも伝わればと思っていた。でも私は、今日まで生きていたフリをしていただけなのだ。限界に達した今、そう思う。いくら探しても私が現れなければ、結局傷付くのは妹なのだ。
橋に差し掛かった時。向こうからファッションブランドのスポーツウェアを身に纏い、白いキャップにサングラスをかけた男が最先端の時計型デバイスに時折視線を落としながら走ってきた。私は体力を消耗できる事を羨ましく思って、男とすれ違ってまた遠ざかっていった。排ガスと少し潮の匂いが混じった風は、私と男の皮膚を平等に伝ってどこかに消えた。

しばらく歩いて、少し遠くを見て、沈む夕陽と目があって、「さようなら」と言いかけた時、背後から「ガシャーン」という音と共に「キャー!」という悲鳴が聞こえた。
振り返るとアスファルトの上に女性が倒れていて、私は女性と自転車がぶつかったのだと思った。その少し前方には、倒れた自転車を起こして、よろめきながらも走りさろうとしている黒いジャージ姿の男が居た。女性は自転車を指差して「引ったくり!捕まえて!」と誰にともなく大声で叫んだ。あとはそれを耳にした誰かがその自転車を追いかければいいだけだった。
私には得意なことが1つだけある。それは走ること。子どもの頃から走るのが楽しくて、身体が弱かった妹を毎日のように連れまわしていた。そのうちにだんだん妹もタフになっていき、釣りに関しては私よりも上手くなったし、そこそこ足も速くなった。
「双子でありながら何が違ったのだろう? どうして私が姉で、どうして妹は妹で、どうしてお母さんは妹を選んで、どうして私は父さんと暮らさなきゃいけなかったのか。どうして蒸発してしまったのかーー」
やる事は分かっていたのに少し判断が遅れた理由は、妹に会うために体力を温存しておきたかったから。それでも自転車がトップスピードになる前に追いつけるのが私だけだとしたら、追いかけないわけにはいかなかった。
「重力に逆らうと速くは走れないよ。スタートの瞬間、平行移動の力を足を踏み出す力に変えて、上半身を一気に起こすの。それで背筋が反るのを利用して膝を高く保ちながら地面を蹴り続けるの。できるよ。私にできるんだもん」
その時ふと懐かしい感覚が湧いてきて、私はサンダルを脱ぎ捨てた。息を止めて地面を蹴ってヨーイドン。私の他に犯行現場を目撃していた人がいたらしく「待てー!」という野太い声が聞こえた。泥棒にもその声が届いたのだろう。後ろを振り返っていた。
「スピードが落ちた! 追いつける!」そう私はそう確信したし、タイミングよく泥棒の前方の歩行者用信号は赤に変わった。それでも泥棒はペダルを踏み込んで、逃してなるものかと一気に距離を縮めた私は、ゴールテープを掴みとるかのように自転車の荷台に指をかけ、どうにか自転車を止めることに成功した。往生際の悪い泥棒は自転車を乗り捨てて逃走を図った。自転車は倒れた拍子に私の脛に当たって血を滲ませた。息を切らしながら「待てぇ!」と叫んだ後、「プオォォォーン!」というけたたましい音が返事をして、鼓膜をビリビリと震わせた。
「ああ、私は轢かれてしまうんだ」と理解した。頬っぺたが冷たくなって、目の端に見えた親友のゆっこがくれた編みぐるみのストラップが宙を舞っているのが悲しかった。だってこの後、踏み潰されてしまうのだから。


私は家庭科が絶望的に苦手だった。お裁縫の授業でエプロンを作った時なんて、指に何回も針を刺してしまって、せっかくの白いエプロンがホラー映画の小道具みたいになってしまった。先生は「もっと、ゆっくりやりなさい」としか言わないし、コツを教えてもくれない。お手上げ状態の私を助けてくれたのがゆっこ様だった。
ゆっこ様はいわゆる転勤族の家庭に生まれた転校生で、学校に来て日が浅いにも関わらずみんなの人気者だった。それもそのはず。ゆっこ様の身に付けている服や持ってるアイテムの何から何までがオシャレで、この街のどこにも存在しないようなセンスを感じるのだ。血だらけで発狂寸前の私に「手伝うことあれば手伝うよ?」と手を差し伸べてくれた時、私にはその手から輝いている天使の鱗粉のようなものが見えた。その粉に直接触れたり、舞い上がったものを吸い込んだり、浴びてしまった者は誰もがゆっこ様の虜になってしまう魔法だ。性格の良さも決して演技などではない。その証拠に不器用すぎる私がミシンの針を5本も折って、先生にこっぴどく怒鳴られ心を折られている間、エプロン作りのほとんどをゆっこ様はやってくれたのだ。「ありがとうごぜぇます!ゆっこ様ぁぁ!」と土下座で感謝をすると、側で見ていたクラスメイトから私は笑われた。別によかった。この感動と感謝がゆっこ様に伝わればピエロになっても構わなかった。でもその直後に「あっ!感情を押し付けてゆっこ様に恥をかかせてしまった!」と焦った。すると、ゆっこ様はドン引きするどころか可愛いクマの絆創膏を私にくれたのだ。「これ指に使って」って。これは泣くよ。これは泣く。痛いくらいの優しさに私は心を打たれた。
「この恩ぜってぇ返さねば!」
私は気付かれないように距離を保ちつつ、ゆっこ様を観察した。そしてチャンスは意外と早く訪れた。というか、その日の午後だった。
ゆっこ様は体育が苦手だったのだ。準備運動で校庭を一周するぐらいなら普通だが、ダッシュになるとまるで両手首に付けた時計を確認するような仕草のせいで身体が左右に揺れてしまい、推進力がなくなって結果的に遅くなる。まぁ、天使だから羽が生えているし、何の問題もないし、逆に私たちが火を焚いてお供え物をして「わざわざ地上に降りてきてくれてありがとうございます」と言わなければならないのに、ゆっこ様は一言も文句を言わない。なんて寛容なお方だろうか。
そんなゆっこ様の唯一の弱点が運動神経だと分かった今こそ、私の唯一の才能であるスプリント力を天使に継承する時じゃないか。そう考えた私は無い知恵をギュルギュルと絞って、いきなり「教えてあげるぅ」と言うのではなく、まずは実力を見せるべきだと判断し、全ての力を一本の走り込みに集中する事にした。凍った海を砕氷船が進むように空間を割いて進むイメージが頭の中に広がった。
あとは聞きなれたホイッスルの直後、そのイメージと同化するだけだった。
「うわぁ、すごい! 曽和田さんってとても足が速いんだね!」
効果はばつぐんだ!
ここでバカは「ソンナコトナイヨぉ」と言ってしまいがちだが、私は単刀直入に「さっきのお礼じゃアレだけど、走り方なら教えてあげられますんで。アチシ」と返答した。
「ん? 今なんて?」
天使は無の表情で聞き直した。大失敗だった。
「いや、さっきのお礼でさ。体育なら自身あるから、ゆっこ様に…走るの苦手なら教えてあげられるよ!」
「ありがとう。でも様付けなんてやめてよぉ〜」
これがキッカケで2年間もの間、天使との楽しい交流は続いた。足の遅かった彼女はいつも体育の授業や運動会の日が憂鬱みたいだったけど、私の技術力を身に付けてからは、万年ビリの状態から3等賞に入るまで足が速くなった。そして手先の不器用な私に天使が教えてくれたのが編みぐるみ。天使が毛糸に命を与え、私がモンスターを作り出す遊びはとても楽しかった。
ある日、私が生み出したウサギちゃんがよほどツボに入ったのか、天使は笑いをこらえながら「あの…これはさ?w ワザとやってるでしょwww?」と声を絞り出すように問いかけた。私は「いや、マジっす。上手くなってますもんで」と言いながら、天使の眼前に目が虚ろで赤い舌が血を吐いているように見えなくもないウサギちゃんをヌッと出した。天使は目から涙を流して、ついでに鼻水も垂らしながら「うっw ウソだよぉwww」と言ったきり、しばらく腹を抱えてのたうちまわっていた。この子も人間なのだと思ったし、その日を機会にさらに毎日が楽しくなった。彼女のおかげで私は、かぎ編みで「ネコに見えなくもないモノ」が作れるレベルになれた。どんなに苦手なことでも、小さな積み重ねの中に楽しさがあれば、やがてそれは大きな進歩につながるのだ。
天使と別れる日、お互いに一番完成度の高い編みぐるみを交換した。その編みぐるみを私はいつもバッグに付けていた。天使の糸で出来ているから、この世界のどこにいても繋がっている気になれた。
それが今、地上に落ちて踏み潰されようとしているーー。
ここから私の記憶は抜け落ちている。


目を覚ました途端、目が覚めないほうがよかったんじゃないかと思うほどの痛みに襲われた。
神様さん。こういう時ぐらい幸せだった頃の余韻に浸せてくれたっていいじゃない。多分「シャー」っという音はカーテンか何かの音。多分「プップ、プップ」と鳴ってるのは緑色の棒のやつ。頭が回らない。名前わかんない。そのあと誰かが来て「なんとかレッショウ!」とか「フンサイコッセツ!」とか必殺技みたいな診断名を読み上げられたけど、何を言っているのかよく分からなかった。どれくらいの時間が経ったのだろう。日付けも分からなかった。少なくとも今いる場所が病院であることや、自分は轢かれてしまってミイラみたいにグルグルになってること、とくに左半身が酷いのは分かった。
「もう走れないとしたら…私に何が残るのだろう。妹に会えないとしたら、何のために生きればいいんだろう。なんで生き残ってしまったんだろう」
不安がこみ上げて止まらなかった。生きている限り可能性はあると他人(ひと)は言うかもしれない。でも、こんな姿になってしまって、心に一切の希望がなければ生き地獄でしかないじゃないか。
夜になると、たまに誰かの呻き声が聞こえた。その声は私が今、生きようとする人と死にゆく人のちょうど真ん中にいることを教えてくれた。事故前の生きるか死ぬかと、今の生きるか死ぬかは繋がっていて、自由と希望の濃度が少し違うだけだ。きっと、目には見えない少しの違いが、このちっぽけな命を強くもするし弱くもするのだと思った。
意識が戻って、容態が安定した私は集中治療室から一般病棟に移されることになった。移動する途中に車椅子を押してくれた看護師さんから「あとは治るだけだから私たちに任せて」と言われた。私のような患者さんが他にもいて、それぞれ勇気づけないといけないんだから大変な仕事だと思う。だけど、その言葉の通りにはできなかった。事故前の自分と、ボロボロになった今の自分のギャップを受け入れるのは、どれだけ泣いても涙が足りなかった。泥棒を追いかけた事に悔いはないし、できれば逮捕されていて欲しいけど、今はあんなバカもうどうでもいい。私は回復できるかどうかも分からないほど疲れているのだし、今はひたすら眠りたかった。身体は動かせないけど、手や足はギプスで重いのに身体は軽くなっていく気がした。


それは、規則正しくバタバタと忙しい看護師さんの姿と、気だるそうにラジオ体操をする患者さんの声に慣れた頃だった。
「気分転換に外でも見たらどう?」
仲良くなった看護師さんに促されるまま、私は虚ろな目で窓の外を見ていた。
巨大なコンクリート構造物の中で、生者と死者とが入れ替わるこの場所では新鮮な空気は貴重だ。外を行き交う人たちの服装は長袖から半袖に変わりつつあり、その上を体が小さいスズメの群れが人間には分からない会話をしながら飛んでいくのが見えた。
再び視線を下にやると、病院の前にある芝生の上に2人の女性がいた。歳は自分と同じぐらいだったから見るのが辛くて、それでも「ああやって歩ける日が来るのかなぁ」なんて考えていた。
等間隔に並んだイチョウの木の下で、1人はダンボールか何かに書かれたメッセージボードを掲げて、もう1人がそれを撮影していた。
『オネェちゃんココにいるってよ!』
「ゑっ!?」
私にとってそれは、地獄に天使の糸が垂らされて世界中に配信され始めた瞬間であり、彼女たちにとってはネタバレの瞬間だった。どうやら私が目を覚まさない間に事態は大きく進展していたらしい。

「ひったくり犯を捕まえようとした女性がトラックとぶつかり重体です。事故があったのはーー」
そのニュースを見た何人かのフォロワーから「もしかしたらお姉さんじゃないですか?」という情報が妹の元へと届き、同じようにハンドメイド作品のファンから「ニュースで見た事故現場の映像にデザインが似ている編みぐるみが映ってました。パクリですかね?」というコメントがゆうこのところにも届いたそうなのだ。2人はそれぞれに搬送先の病院を調べて、わざわざ駆けつけてくれたらしい。そして偶然にも2人は同じ日の同じ時間帯に病院のロビーで遭遇し、私と瓜二つの顔を見つけたゆうこは、感極まって抱きついたそうだ。初対面の人間から抱きつかれた妹は驚いて「ヨシヨーシ」と言うしかなく、この日のために着てきた下ろしたてのワンピースは鼻水でベチャベチャに汚れたと証言している。
それから妹とゆうこは私の治療費と入院代を稼ぐため2人で活動し始めた。
ひったくり犯を捕まえようとして重体となった女性が生き別れた姉だったという話題は、日本国内では早々に消費されたが海外メディアでは大々的に取り上げられて話題となった。そしてそれが地球を一周して帰国する頃には、妹のチャンネル登録者数は爆発的に増えて、ゆうこのハンドメイド作品も飛ぶように売れたそうだ。全てを知った私は2人に心からの感謝の言葉を送ると共に、借金を返し終わるまで一緒に活動しなければならない奴隷契約書にサインをしてしまった。迂闊だった。
「名前どうします?」
「チタン入ってるから『ちーたん』でよくね?」
「ヒェッ!!」

現在、ハルッペ様とゆうこ様とちーたんの3人はシェアハウスに住んでいる。平日はそれぞれで動画を投稿して、再生数が一番少ないメンバーが土日の配信で発表されるという生活サイクルだ。最下位になるとお風呂掃除や洗濯物などをやらなければならない。買い物のレビュー動画や料理動画と違って、動画のネタにも使えない家事である事を2人は見抜いていた。
固定化されたファンもおらず、面白いアイデアも思いつかない。何をどうしても2人に勝つことはできず、しばらくのワンサイドゲームが続いて、気が狂った私はゴミの中に性癖という付加価値がある事に気付いてしまった。
「ゴミじゃない!宝の山だ!」
洗濯機のネットに溜まるゴミのグラム数を毎日測ったり、生活ゴミを測る『ちーたんのゴミ奇行』は一部に熱狂的な支持者を作り出すことに成功した。自分でやっておきながらアレだが「ゴミ奇行を毎日見てます」というコメントを見ると背筋が寒くなった。しかし、この効果は絶大で、最下位の固定化を脱出する事に成功。今では首位も珍しくなくなった。
このいつ終わるとも分からない楽しい生活を満喫すべく、脚にボルトを埋め込まれたちーたんは全く守備範囲外だったスチームパンクの格好をしたり、低気圧が近付いた時に「傷が疼くぜ!」と言って再生数を稼いでいる。

人間は生きている限り、いつ死んでもおかしくない。いきなり病気になるかもしれないし、不幸な事件や事故に巻き込まれることも当然ある。人生は何が起こるか分からないのだ。でもそれは同時に、幸せになれる確率もあるという事。誰かを救おうと懸命に仕事をする人々や、自分にも何かできないかと繋がりあって血液を循環させようとしてくれる人がいる。何が起こるか分からないこの世界には、目には見えないところに困っている人が、助けようとする人が必ずいるのだ。
人に優しくしよう。誰かが困っていたら助けよう。人生の最期は切ないぐらいに孤独だから、それを満たされた瞬間に変えるため、私はまた走れる気がする。
#小説

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