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別れと花

タイにいても日本のカレンダーで生活している我らにとって、この頃は別れの季節。

仕事にプライベートに、お世話になったいろんな方々がいろんな事情で去ってゆく。見送る側はとにかく寂しいばかり。

あと数週間に迫ったタイ正月・ソンクランに向け、近所の学校も「夏」休みに入ったため、前を通ってもひっそりとしている。年長さんの卒園式が済んだ娘の通う幼稚園も、同じくひっそりとしている。

これが日本だったら、やっと咲いた桜とまだ冷たい風が情感を高めてくれるものだけど、ここは南国。ずっと遠慮がちだった太陽もいよいよ本気を出してきたようで、今日は最高37℃。汗をダラダラ流しながら寂しさに浸るのは、どうにも馴染みが悪い気がする。

この暑さに比例するように、街は百花繚乱。この時期にだけ咲く国花ゴールデンシャワーや、お馴染みブーゲンビリアにプルメリア、他にも名前不明だけど、赤に黄色に紫に、とにかく色とりどり。桜もあるにはあるけど、その他に埋もれて存在感がひどく薄い。

いつか、将来、娘の記憶の奥底で、この賑やかな花々が、誰かを懐かしむ心を彩ることになるのだろうか。

昼食に入ったそば屋では、テレビでNHKの高校野球を流していた。こっちが暑いもんで夏の甲子園かと思ったら、センバツとのこと。出された冷えた麦茶を一口、そして下手なタイ語で注文をした。

こうやって我ら家族は、日本人でもなければタイ人でもない、
どちらでもない誰かとなっていく。