20200222_ジレンマの_ジレンマによる_ジレンマのためのジレンマ_

ジレンマの ジレンマによる ジレンマのためのジレンマ。

ジレンマの ジレンマによる ジレンマのためのジレンマ。

今日はこんな話をひとつ。


アンソニーとボブはある犯罪の容疑で逮捕されました。実はこの2人、警察が密かに追ってきた伝説の銀行強盗「ロビンソン銀行強盗団」の一味。
しかし銀行強盗の確固たる証拠をつかむことは出来ず、今回は窃盗罪で別件逮捕されてきたのでした。

薄暗い取調室に捜査官の怒鳴り声だけが響き渡ります。警察側もこれを機に銀行強盗の罪も自白させようと意気込んでいるのです。
取り調べはお互いが意思疎通できないよう別室で行われています。

「おい!アンソニー、お前がやったんだろ!」
「…………。」
アンソニーは鍛えられた筋肉が自慢の男。捜査官と目を合わせることなく、不満そうな表情を浮かべます。

一方、もうひとつの取調室ではボブの尋問が行われています。
「ボブ!お前がやったんだな!?」
「…………。」
ボブは細くて気弱な男。先程から捜査員の噛みつくような尋問に怯えています。

逮捕から数日。取り調べはこのような感じで一向に進まず、捜査官のジョニーはとうとう困り果てました。

この州の法律で銀行強盗の罪は懲役10年と決められています。このまま黙秘が続けば罪を認めさせることは難しい。窃盗罪だけだと懲役1年しか求刑できません。

そこで、捜査官のジョニーはアンソニー、ボブのそれぞれにこう話しかけました。

「もし、相手が自白したらお前だけ懲役10年の実刑だ。しかし、お前も自白するなら2人を懲役5年に減刑してやるぞ。」

さらにこう続けました。

「相手が黙秘して、お前だけが自白したら無罪にしてやる。」と。

その夜、アンソニーは牢屋の中でこう考えました。
「このまま黙秘し続けたら損するかもしれねぇ。
俺が黙っている間にボブの奴がビビって自白しちまったらどうすんだ。俺だけ懲役10年になっちまう。
ここは自白しちまった方が良さそうだな。」

同じ頃、ボブも牢屋の中で震えていました。
「アンソニーは逮捕される前に『もし捕まっても、絶対に余計なことを喋るな!』と言っていたな。
ずっと黙秘してきたけど、こんな取り調べが続いたら気が狂いそうだ。
もしかしたら、アンソニーが裏切って先に自白するかもしれない。俺、10年も刑務所なんかに居たくないよ。自白したら5年に減刑されるし、そっちの方が良いよな…。」

捜査官のジョニーが2人にこう持ちかけた結果、アンソニーとボブはあっさり銀行強盗の罪を自白したのでした。
この自白で「ロビンソン銀行強盗団」の残りの仲間も全て逮捕。再び街に平和が戻ったのでありました。

ジョニー捜査官の戦いは続く…。
(この物語に登場する人物、場所などは架空の内容です。笑)


利害関係にある2人がいます。
2人にはある条件が提示され、お互いに相手の思考が読めない状態にいると仮定します。

するとお互いに「相手はどう出るのかな…」と様々な思考を巡らせ、なるべくリスクの少ない選択肢を選び行動しようとします。
人間の心理はきっと、そう。自分が損しないようにしたいと思うはず。

アンソニーとボブの場合、黙っていれば窃盗罪の懲役1年だけで済んだのに、懲役10年の刑というリスクを避けるため「自白」を選びました。その結果、2人は懲役5年になりました。

自分の利益を優先させた結果、1番ベストな選択肢を取ることができない状態を「囚人のジレンマ」といいます。
このケースだとベストな選択は「黙秘したまま窃盗罪で起訴され、懲役1年の刑を受ける」という選択肢でした。

しかし、リスクを回避するために「自白」を選んだので懲役5年となり、その結果ベストな選択肢を取ることが出来ませんでした。ここに矛盾が生じています。

これを理解するのにかなりの時間を要しました…。経済学は苦手かもしれない。
ジレンマのジレンマ。その前に窃盗も銀行強盗もアカン。


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