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MXR carbon copy analog delayの修理

アナログディレイの定番機CARBON COPY

2008年に登場して以来、アナログディレイの定番機。

BBDを使った完全アナログ仕様のディレイペダル。

モジュレーション機能も搭載していて、コーラス、ビブラートの様なサウンドにもなります。

モジュレーションは中のトリムポットで調整可能です。


症状を確認していきます。

エフェクトをONにしてもディレイが掛かりません。

スルーというか原音の音は出てます。

このディレイの仕様は、常に原音は鳴ってて、エフェクトのディレイ音をMIXのボリュームで足していくというものです。

なので、インプットとアウトプットのバッファは生きてるっぽい。


最初にこれを書いておきます。
回路図が無いので、壊れてそうな場所を交換していきます。

中身を確認したいので分解していきます。

裏蓋の4本のネジ、ジャックのナット、フットスイッチのナット、ボリュームノブ、ナットを外して、基板が外れます。

基板が無事に外れて、表側が見えました。

気になってたBBD素子ありました。BL3208が4個も使われてます。

ディレイ音が鳴らないということで、このBBDを最初に交換していきます。

このBL3208というBBD素子が売ってない。中国にオーダーして買いました。

GOOTのTP-100を使ってハンダを吸い取り、4個交換しましたが、症状は変わらず。直りませんでした。

続いて、よく壊れると噂のFETを交換しましたが、直らず。

FLOのTL082も交換したが直らず。

コンパンダーのSA571も交換したが直らず。

結局、壊れそうな半導体を全て交換したんですが、直りませんでした。

ここで、回路図も無いし、1年以上眠る事になります。

MXRの弱点に気が付く

1年放置してある間に修理した物があります。

それは同じMXRのBASS DI +です。

これの故障原因が表面実装の電解コンデンサの経年劣化。

その前に修理した同じMXRの10BAND EQも表面実装の電解コンデンサの経年劣化。

MXRの表面実装の電解コンデンサが一気に怪しくなったんです。

CARBON COPYももしかしてと思って調べる事にしました。

ディレイ音の信号を追う

電解コンデンサの故障ではないかと思いつつ、確実な証拠が必要です。

そこで、ディレイ音の信号の流れだけでも把握しておこうと、テスターを使って基板上のパターンを追いました。

文章にすると非常に判りづらいというのが分かったので、図にしてみました。

ディレイ音の信号の流れ

正弦波を入れて、信号の来てる場所を調べていくと、U7のSA571Dの7ピンには来てますが、U1のBL3208の3ピンには来てません。

その間に怪しい物が無いか調べたら、C21の表面実装の電解コンデンサがありました。

調べてみると、案の定マイナス側には信号が来てるが、プラス側には来てません。

このC21を交換して、プラス側に信号が来れば電解コンデンサが確実に壊れてる事が判ります。

早速このコンデンサを交換していきます。

表面実装の電解コンデンサの交換はかなりやっかいで、破壊して取り外すのが今のところ1番いいかも。

ニッパーで切断して上と下を分離して、土台のプラスチックを慎重に取って、ハンダで止まってる足を取り外します。

液漏れしてる可能性が非常に高いので、取った後は必ずクリーナーで掃除しましょう。

取り付けは、片方に最初ハンダを流しておいて、コンデンサを仮止め。

その後、反対側をハンダ付けする感じです。

交換したら、正弦波を入れて、交換したコンデンサの両端に信号が来てるか見ます。

無事に両端に信号が来て、BL3208の3ピンにも信号が来る様になりました。

一応ここで、エフェクト音が鳴るかチェックしてみます。

直ってませんねー。

予想通りというか何というか、表面実装の電解コンデンサ全部ダメっぽいです。

全部交換します。


ここで新たに表面実装の電解コンデンサの外し方を知ったので、これを試したいと思います。

コンデンサの頭を摘んで、クリクリと回すと簡単に取れるという事で、やってみました。

回すと
簡単に取れる

確かに簡単に取れます。

しかし、心配してた事が、起こりました。

パターンも一緒に持っていかれました。

こうなるんじゃ無いかとは思ってた。

元々、パターンが細いというのもあるんですが、液漏れしてて、パターンが腐食して剥がれやすくなってた。

こうなってると、どうやってもパターンが剥がれてしまいますねー。

結局、どうやっても綺麗には外せない運命なんですね。

2箇所パターンが剥がれてしまったので、パターンを修正しましたが、1箇所は地獄の様な作業でした。

全部の電解コンデンサの交換が終わったので、エフェクト音が鳴るかテストします。

期待に胸を膨らませ、テストしましたが、直っておらず。

これ、相当ガッカリしました。

まだどこか壊れてる場所があるのか…


信号がどこまで来てるのか、オシロスコープで見てみます。

ここで判明したのは、U1のBL3208の出力の7と8ピンに信号が来てない。

単純な話、BL3208が壊れてるっぽいんだけど、どうなんだろうか?

という事で、速攻で交換。

信号が来てるかというと、7、8ピンには出力が無い。

これは一体なんなんでしょ?

ディレイ音が復活

動画内だと、突然直った様になってますが、途中色々な事やってます。

U1からU4のBL3208は3、7、8ピン以外の足は全て番号同士が繋がってて、同じ条件で動いてる。
INとOUT以外は一緒。

U1の3ピンをU2の3ピンにショートさせたら、U2の7、8ピンに信号が来るのか?という素朴な疑問が出来て試してみました。

これが、信号が来てたんです。

ますます、意味が判らない状況になってきました。


ここで、基板を見てて、目に入った物がありました。

トリマー、トリムポット、半固定抵抗なんて呼ばれてる、調整用のボリュームです。

実は、どこかのタイミングで、一つのトリムポットが目に入って、右に振り切ってて、フル状態になってたのに気がついてました。

こういう微調整用のトリムポットがどっちかに振り切ってるケースというのは、まずありません。

それだったら、最初から付ける意味がない。

それで、トリムポットが全部弄られてる可能性があると思って、問題があるU1のBL3208の8ピンの波形を見ながら、U1に一番近いトリムポットを回してみました。

回す前に、勿論元の位置をメモっておきました。

回してみたら、波形が出てきたんですよー。

素人がこんなの動かすんじゃねーよ!と心の中で叫びました。

U1から順番に8ピンの出力を見て行きました。

そうしたら、U4の8ピンも信号が来てませんでした。

周りの怪しいトリムポットを回してみたら、信号が無事に出てきました。

U4の出力まできたので、これでディレイ音が復活するんじゃ無いかと、ギターとアンプに繋いでチェックしたら、遂にディレイ音が来ました。

やっとディレイ音が復活しました!

長かった。

このトリムポットはおそらくですけど、BL3208のBIAS調整だと思います。
それが各BBDに付いてて、たまたまU2と3が奇跡的に合ってた。

ディレイ音が出たのですが、なんか音が歪みっぽい。
いじられてるトリムポットが原因かもしれないので、全部確認して調整していきます。

各トリムポットの役割

TR4,6,10,12は各BL3208のアウトプット7,8ピンのバランサーになってます。
これは他の個体の基板の画像を見て確認したのですが、12時の位置になってるので、全て12時の位置にします。

TR7はU2のBIAS調整。
調整のやり方は、1KHzの正弦波を入れて、オシロスコープで8番ピンの波形を見ながらトリムポット調整して、上下の波形が一番大きくなる所に合わせます。
オシロスコープが無くても、音が一番大きい所で合わせればいけますが、他のBIASが全部狂ってたらこの手は使えません。

TR9はU3のBIAS調整。

TR8はディレイ音の音量調整。だいたい3時くらい。

TR3はディレイタイムのオフセット。だいたい2時くらい。
ここ上げるとロングディレイ仕様に出来ますが、BBDが壊れそう。
無理はしない方が良さそう。

これで全て調整完了。


ここまで、この基板をそうとういじったので、これを元に戻しつつ整えます。
IC、トランジスタを元に戻して、フラックの掃除をします。


パターンが剥がれた部分の電解コンデンサをホットボンドで固定します。

片方のパターンが剥がれてるので、片足だけで付いてる状態になってます。
更に、パーツの付いてる方が下に向くので、吊られてる状態になるので、非常に良く無い。
重力と振動でパーツが落ちます。

これは非常に重要な作業で、自作とかしてる人も見落としがちです。
パーツが逆さ吊りになる時は気にしておいて下さい。

ホットボンドは付ける量の調整が難しいので、少しカットしてバーナーで溶かして付けてます。
今回も入り組んだ箇所に付けてるので、この方法が有効でした。

ここでやっと組み立て。

そして修理完了です。


直ったCARBON COPYの音のチェックしてます。

アナログディレイって良くも悪くも音がガサガサしてる印象があるけど、これはそうでもなく、使い易いかも。
人気があるのもわかります。

https://youtu.be/lRb3Odaqrss?t=1400

気になる方は動画の方をチェックしてみてください。


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