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MXR DIME DISTORTION DM-11の修理

MXRのDIME DISTORTION。
Dimebag Darrellのシグネチャーペダルですね。

調べたら2008年に発売されたようで(もしかしたら違うかも)、
DIMEが亡くなってから発売されてるんですね。

色々なショップの説明では『ダイムバッグ・ダレルが望んだヘビーでシャープでアグレッシブなディストーションサウンドを実現』って書いてあるんだけど、本人が2004年に亡くなってるので、開発に関わってたかは、かなり怪しい。

海外のサイトでは『DIMEの音をシミュレートして設計した』なんて書いてあったり。こっちの方が正しい様な気がするんですが…。

あと、本体のデザイン。今回修理した物はグリーンの筐体なんですが、迷彩柄にDIMEの顔が描かれてる物もあるんですね。

訂正、追記です。
コメントで判ったのですが、このDIME DISTORTIONが発売された時期は2003年でした。
当時の雑誌も確認し、2003年は間違いないです。
DIMEが亡くなる前に販売されているので、開発には関わっている事が判りました。
元々は迷彩柄にしたかったようですが、当時戦争があり、その影響でグリーンの筐体で最初販売されたようです。
情報ありがとうございます。

なぜグリーンと迷彩柄が存在してるのかは謎

これも情報が無くて、2種類存在してる理由が判らない。
一説にはヨーロッパではこのグリーンが販売されてたなんて書いてあったり。そうだったとしても、その理由までは解りません。

当時の開発された経緯など、情報が全く判らないので、知ってる人がいたらコメント欄にでも書いてくれると有り難いです。

ちなみに生産終了してるモデルになります。


症状を確認していきます。

結果的に電源が接続不良だったのかも

エフェクト音が全く出ません。

事前にチェックした時はLED点いてたのに、なぜか点灯せず。

実は電源が18V必要なんですが、こちらも問題無し。

電源は18Vです

分解して中身をチェックしたいと思います。

裏蓋を外すんですが、ネジが六角になってます。
しかもインチで7/64インチです。
MXRの大きいケースはこのネジ多い。

7/64インチの六角レンチ

裏蓋が取れて基板が見えますが、パターンしか判らないので、ケースから基板を外します。

裏側にはコンデンサとジャックだけ

グランドのケーブル、ボリュームノブ、ボリュームのナット、ジャックのナット、スイッチナットを外して基板は外れました。

ナット緩める時は傷が付かないように

基板の表側を見ると、表面実装のパーツで出来てます。

この基板は何かの機種と一緒っぽくて、基板の下半分はパターンがあるのにパーツが付いてないんです。
何と共通なのかは、よく判らず。
上位機種を作りたかったのかな?

下半分のパーツは空です

電源から調べようと思ったんですが、ここでなぜかLEDが点きます。

アダプターの接触か何かが悪かっただけとか考えてたんですが…。

Scoopスイッチが本来だとONの状態の時だけLEDが光るんですが、ONでもOFFでも点きっぱなしになってるんですね。
ここの原因を探っていけば、エフェクトの音も出る様になるんじゃないかと思ったんです。

Scoopスイッチは常に点きっぱなし

動画内では説明出来てない考えを書きます。
まず、フットスイッチがDPDTなんで、スイッチ制御のICを使ってると思いました。
そうなると、ScoopスイッチのLEDも同じICで制御してると思って、このICが壊れてると、各LEDとエフェクトの切り替えも全部出来なくなると考えたんですね。

ScoopスイッチのLEDが繋がってる先を調べます。
GAINポットの下にあるCD4016に繋がってました。
ここが壊れてる可能性が非常に高いと思いました。

ボリュームの下にパーツが付いてるのはやりにくい

しかし、このIC CD4016は交換も大変で、手持ちも無い。
と言う事で、少し後回しにして、Scoopスイッチ周りも見てみる事にしました。
このプッシュスイッチのハンダ端子を見ると、一度弄った跡があるんですよね。

ハンダをやり直した跡

外して一度見てみる事にしました。

外す前にテスターでチェックしてみたところ、外側の端子同士が通電してるんですね。

なぜか外側同士が通電

通常このタイプのスイッチは真ん中の端子がコモンになってて、両側で切り替わるので、動作的におかしい。
(何かがおかしいとは気が付いてるんだけど、何がおかしいのか判ってない。)
スイッチが付いたままでは何とも言えないので、やはり外して調べなおします。

スイッチを外すにはアウトプットのジャックが邪魔なので、これから外します。

こういうパーツの配置は外すのきつい

gootのTP-100を使ってハンダを吸い取ってジャックとスイッチを取ります。

スイッチが取れて、下の基板のパターンが見えました。
それを見ると、両側の端子が繋がってるので、テスターの動作は正常だったのが判ります。

パターン上は問題無し

スイッチもテスターで計って、ちゃんと切り替わってるので問題無し。
(本来はおかしいのですが、気がついてません)

と言う事で、パターンもスイッチも問題ないので、ICを交換する事にしました。

ICを交換する際に、GAINのボリュームポットが邪魔なので、これを先に取ります。

邪魔なので取り外し

ボリュームポットの足が折り曲げられてて、取りにくいですが、パターンを剥がさない様に折り返してハンダも綺麗に吸い取ります。

ボリュームポットが取れたらICを取り外します。
14ピンある表面実装のICなので、低温ハンダを使って取ります。
専用のフラックスを塗って、ハンダを流し込むとあっという間に取れます。

専用フラックスと低温ハンダ

取れたら余計なハンダやフラックスを掃除します。

ハンダ吸い取り線も使います

新しいCD4016のICを取り付けます。
細かい型番が若干違うんですが、多分動作は一緒だと思ったので気にせず取り付け。
昔からある定番なスイッチICなので、大きな仕様の違いは無いでしょ。

位置を決めて、1箇所ハンダを流し込んで止めてから、全部のハンダをします。

位置が決まったら1箇所仮止め

取り付けたら、外したスイッチを取り付けます。

ここで直ったか動作確認します。

何も変わらず

全く直ってません。

どこが壊れてるのかサッパリ判りません。


最初に電源を調べたんですが、詳しく調べてなかったので、ここで調べ直します。

最初にオペアンプの電源がちゃんと来てるか見たら、実は来てませんでした。
全部のオペアンプに電源が供給されてなかったんですね。

オペアンプの8番ピンに電源来ず

ここを最初に詳しく調べなかった理由はLEDが点いてたっていうのもあるんですが、Scoopスイッチの変な動作の方が気になってたんですね。

電源を追っていったら、抵抗が切れてるのを発見しました。

TREBのボリュームの下にあって、値は10Ω。

抵抗もボリュームの下

電源周辺を色々調べたら、もう一本10Ωの抵抗が付いてて、これも断線してました。

この二つの10Ωの抵抗を交換していきます。

抵抗を交換するのに邪魔なTREBのボリュームポットを最初に取り外します。

断線してる抵抗を取り外そうと思って、ハンダゴテを当てたところ、抵抗が真っ二つに割れてました。

真っ二つの抵抗

もう一個も真っ二つでした。

何か変な電源が入って両方割れたんですかね?この割れたおかげで中の回路は守られたのかも。

この抵抗を新品に交換します。

片方を最初にハンダしてからもう片方

交換し終わったら動作テストします。

Scoopスイッチの動作がおかしいままです。

ああ無常

絶望的な状況ですね。


修理あるあるな話ですが、故障箇所が2個以上あると、マジでハマります。
これは経験した人にしか判らない。


改めてScoopスイッチ周りを調べ直しました。

このスイッチは2回路入ってて、1つはLEDの制御で、1つは音声信号の制御で使ってます。
LEDの方はスイッチICに行ってて、音声信号の方はトーンのボリュームポットに繋がってます。
このスイッチを押す事で、MIDが固定されるようになってます。

ここで私はようやく気がつきます。
基板のパターンとスイッチの動作が合わない。

赤線がパターン

これに気がつくまで何日掛かったんだ。

前に書いた通り、左右の両端が基板はショートしてるのに、スイッチの動作は左右の両端を切り替えてるので、ONでもOFFでもON状態なんですね。

そこで、同じスイッチが使われてると思われる以前直したMXRのCARBON COPYを分解して、スイッチの動作を確認しました。

以前に修理したCARBON COPY

そうしたら、端がコモンになってて、真ん中と反対の端が切り替えになってるんです。

端がコモンのDPDTスイッチ

この動作だと、Scoopスイッチも正常に動作します。

こういう動作のプッシュスイッチを見たのも初めてです。

まさかまさかの動作の違うスイッチが付いてたんですね。
前に修理を試みた人が間違えた物を付けたのでしょう。

原因の動作が違うスイッチ

これね、なんで気が付かないんだ?って思うでしょ?
最初から違う動作のスイッチが付けられてるなんて想定外過ぎて、そんなもん気が付かんよ。
付いてるはずの無い物が付いてるんだから無理。

と言う事で、原因は判ったのですが、問題はこのスイッチが手に入るのか?

このプッシュスイッチは予想通り、どこにも売ってない。
ていうか、スイッチ売ってても、データシートが無く、動作を確認出来ないパターンが多過ぎ。

ダメ元でDigi-Keyで探した所、発見出来たんです。
Digi-Keyの検索システムは世界一だと思います。

E-SwichのTL2285EEです。

日本から買う時はマルツで委託するか、6000円以上注文して送料を無料にするしかないので、注文するまで時間が掛かってしまったんですね。

ようやく手に入ったので、スイッチを取り付けていきます。
端子の順番は対になってるので、方向は気にしなくて大丈夫です。

カルフォルニアから来たスイッチ

スイッチを取り付けたら、取り外したジャック、ボリュームポットも元に戻して、スイッチICも元の物に付け直しました。

ここで、ようやく動作テストです。

エフェクトの音が掛かりました。
全部のツマミも動作して、Scoopスイッチも無事に動作しました。

泣けてくる

やっと直りましたよ。


直ったので、仮止めのハンダを全部やり直して、フラックス掃除して組み立て、修理完了です。

直るまで長かった


修理が終わったので、音のチェックしていきます。

とにかく歪む

よく歪んで、硬い音が出ます。

3つのトーンの効きが非常に良い。

Scoopスイッチを押すと切り裂く様なアノ音が出ますね。

音が気になる方は動画の方でチェックしてください。
頑張ってパンテラのフレーズ弾いてます。

YOU TUBEでは他にも色々エフェクターを修理しています。
ぜひ、チャンネル登録宜しくお願いします。




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