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IBANEZ ANALOG DELAY MINI ADminiの修理

IBANEZ ANALOG DELAY MINI ADminiの修理

2016年に登場したIBANEZのANALOG DELAY MINI ADmini。

小さい本体の中に往年の回路が入ってます

IBANEZのアナログディレイAD-9のMINIバージョンですね。

このシリーズは見た目も良くて小さくていいのですが、上二つのノブが見づらいのが難点。


症状を確認していきます。

ノイズ発生機状態

エフェクトをONにするとノイズが出て入力した音声は出ないです。

LEDは点きます。

DELAY TIMEをいじると、ノイズも変化するので、ここは生きてるみたい。


分解して中身をチェックします。

裏のゴム足の下にネジが隠れてるので、これを取ります。

ゴム足の裏の隠し扉

ジャックのナットも裏蓋に干渉してるので、ジャックのナットも外します。

12mmのナット

これで裏蓋が取れました。


基板を見ると、BBDが5個も付いてます。

BBDはCOOLAUDIO製

元になってるだろうAD-9は2個です。

3個足されてるんですが、これはおそらくDELAY TIMEを稼ぐ為に増やしたのでしょう。

MXRのCARBON COPYと同じ感じだと思います。


全てが見えないので、基板をケースから外します。

基板にネジが1本付いてるので外します。

奥に隠れてるネジ

ボリュームのノブ、ナットを外し、フットスイッチも外したら基板が外れます。


中身が見えて驚くのが、パーツのクオリティが高さ。

量産品でここまでクオリティの高いパーツ

フットスイッチはALPHAの3PDT。

ボリュームはALPS。

コンデンサはAVXのチップタンタル。

ケースも凝ってるし。

これを1万円以下で販売してるのは、かなり頑張ってます。

今まで修理したエフェクターの中でもパーツのクオリティはトップクラス。


基板を見ておかしな部分が見つかりました。

DCジャック部分のダイオードが付いてない。

ピンセットの先の部分、パーツが付いてない

この手の物は必ず付いてるはずなので、無いのはおかしい。

テスターで調べた所、逆電防止のダイオードみたいです。

更に基板を色々見た所、変な場所に付いてるダイオードを発見します。

ジャック付近のシールド部分に付いてます。

意味不明な部分にダイオード

シールド部分は、勿論ショートしてるので、ダイオードの両足が付いてても意味ないです。

ピンセットで触ったらあっさり取れました。

大きさ手に電源部の消失したダイオードじゃないかと思ったら、やはりビンゴでした。


このダイオード自体壊れてるのかチェックしましたが、壊れてなかったです。

ダイオードは頑張った

元の場所にダイオードを取り付けます。

ただこれは、逆電防止のダイオードなので、あっても無くても動作はするので、これ付けても直らないだろうとは思ってました。

予想通り直りません。


ここで、故障原因がなんとなく見えてきました。

まず、変な電源を突っ込んだ。

ダイオードは耐えたんだけど、ハンダ部分が耐えられなくて、ハンダ部分が飛んだ。


この逆電防止のダイオードって今まで機能してるの経験した事ない。
(自分が知らないだけで、機能してるのかもしれないが)

とある真空管アンプでは、これが原因でヒューズ飛ばしまくってたり。

とある高級なオーディオインターフェースも、これが原因で電源が自動で落ちる様になってたし。

エフェクターでは丸焦げになって終わってたり。

個人的には無くてもいいじゃないかと思ってます。


話は脱線しましたが、変な電源を入れたとなって、ダイオードが全く機能してないとなると、そこに繋がってる物が壊れてる可能性が非常に高い。

電源の9Vに直接繋がってるパーツ、これがオペアンプのNJM4558MとコンパレーターICのSA571D。

怪しいIC2つ

一応、テスターで確認しましたが、やはりこの2つ。

BBDは直接は繋がってません。


まず、NJM4558Mの方を交換していきます。

全部の端子にハンダをたっぷり乗せて、一気に剥がします。

一気に強引に剥がす

周りの小さな抵抗やコンデンサも一緒に剥がさない様に注意。
この時は抵抗が一つ巻き込まれました。

余分なハンダをハンダ吸取線で吸ったら、軽くフラックス掃除して、新しいオペアンプを取り付けます。

全く同じNJM4558Mです。とれた抵抗も忘れず取り付け。


交換終わったので、直ったかチェックします。

エフェクトをONにすると、ノイズは無くなり、ギターの音出ましたが、ディレイが掛からず。ドライ音だけ鳴ってます。

ノイズは消え、ドライ音だけ鳴ってます

インプットとアウトプットのバッファ部分が直った様です。


もう一つ怪しかったSA571Dを交換したいのですが、その前に、確実に壊れてるかオシロスコープで見てみます。

基本的な回路構成はAD-9と一緒なので、これを参考に見てみます。

SA571Dの6ピンに入力信号が来てます。

5ピンの出力はドライ音で、小さいけど来てます。

7ピンの出力はBBDに繋がってて、これがディレイ音になります。
ここの出力がかなり小さいので、やはりSA571Dが壊れてる様です。

7ピンの波形

A571Dを交換します。

まず、このICはピン数が多いので、低温ハンダを使います。

低温ハンダは温度は低いが価格は高い

専用のフラックスを付けて、全体にハンダを流して外します。

取れたら、余分なハンダを吸い取って綺麗にします。


新しいSA571Dを取り付けたいのですが、実は生産終了してて手に入らない。

仕方がないので、COOLAUDIO製のV571Dを取り付けます。
これも実はどっかから取り外した物で、買うとしたら手に入れるの大変かも。

どっかから外したV571D

取り付ける前に一度フラックスを綺麗にしておきます。

取り付けは1箇所仮止めして位置を決めてから全体をハンダします。

取り付け終わったので、波形でまず見てみます。

7ピンに出力来てます。

正常時の7ピンの波形

アンプとギター繋いで直ってるか確認します。

無事にディレイ音も復活しました。

無事にディレイしてます

中身が直ったので、後は掃除して、組み立て、修理完了です。


音のチェックをKEELEY MODのAD-9と比べながらしてます。

こう見るとかなり大きさ違います

音が気になる方は動画の方をチェックしてみてください。

比べるとADminiの方がディレイ音のハイがきつくて、今時と言えば今時なんだけど、アナログディレイの良さみたいなのが無い感じ。

これならデジタルディレイでいいじゃんとか思っちゃう。

ハイカットした改造したらAD-9っぽくなると思うんだけど。

【重要】IBANEZ miniシリーズのトゥルーバイパスの仕様について

修理した後にコメントで色々判明したんですが、このシリーズ、トゥルーバイパスなのに、なぜかバイパス時の音が小さくなってしまうらしいです。

エフェクターの回路や中身に詳しい方なら、ALPHAの3PDTスイッチ使ってて、そんな事がある訳ないじゃん?って思うはず。
私もそうです。

しかも二人から指摘を受けたので、修理終わったのに、また分解して調べました。

そうしたら、C44とC47がバイパス時でも常に音声ラインとグランドの間に繋がってる状態になってます。

ADmini 矢印のC44とC47がバイパス時でも付いた状態

たぶん、かなり小さな容量のコンデンサだと思いますが、ハイがカットされる状態。

トゥルーバイパスなのにコンデンサが入ってるんです。

正直、意味が分からない。

TSminiでも同じ症状があると聞いたので、TSminiは持ってないんですが、CHORUS MINI持ってるので、分解して調べる事に。

分解して見た所、C36とC38がバイパス時にも繋がってるコンデンサなんですが、シレっと取り外されてます!

CHORUSminiのC36とC38は最初から付いてない

これは、IBANEZやってます!

要するに、途中で気が付いて、内々に仕様変更した模様。

という事で、このIBANEZのminiシリーズはトゥルーバイパスにコンデンサが入ってるバージョンと無いバージョンが存在するって事です。

購入される方は、気をつけてください。
(どうやって?w)


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