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良い買い物をした話と昔話

転居先ではタバコOKなので、試しに昔から欲しかったジッポを買ってみた。1番安いやつで、3000円。
狐狼の血みたいなやつはなかった。ニホンオオカミは絶滅したんだ。

刻印はラテン語で「我々は影であり塵のようなものだ」とか書いてある。今、厨二病やん草と思った奴出てこい外出ろ話があんねん

オイルどこで入れんの!?となったが、なるほど綿に染み込ませる…綿!?ええの!?まあ…実験で使ってたやつも綿を編んだ紐やったしな…

困惑の連続である。

100円とかの安いライターなら、学生時代に死ぬほど実験で使ったので、正直ジッポに期待していなかった。ただのカッコつけで買った。
しかしジッポ、着火させる時がメチャクチャかっこいいのだ。これ火がついたらもう完璧じゃね?というもの凄いポテンシャルの持ち主だった。いい買い物した。厨二病の痕跡が残るがそこは適当に誤魔化して使おう。

祖父が愛煙家で、スイートダブリンという銘柄の葉っぱを買い、パイプでふかしていた。私は子供の頃からこの匂いが大好きで、祖父が趣味の囲碁をやっている横で、よく昼寝をしていた。あの匂いは生涯忘れないだろう。

しかし実際の喫煙者は大体マルボロとかで安い紙タバコである。くさい。煙ったい。全然いい匂いじゃねえよこれ。
そこで悩んでいたが、知り合いに偶然アークロイヤルを勧められて吸ってみたらめっちゃ良かった。少しだけ祖父の感覚がした。
そういう事もあり、ちょっとお高く止まったタバコが大好きなのだ。

祖父の匂いは消毒液の匂いと、スイートダブリンの匂いが混ざったものでもある。歯科医師で技工士だったので、清潔な匂いもあった。祖父は本当にすごい人で、定年退職みたいに歯科医院を畳むと、大勢の人がまた治療してくれと祖父の家に懇願しに来たほどだった。そして渋々なのか、知り合いの歯医者に所属して仕事をするようになった。

実は私は漫画でよくある、ギザギザの歯なのである。
前の歯列の咬合が深すぎて、普通ならすり減って真っ平になる所がそのままになっている。
これは祖父もお手上げだったので、今もこの状態で過ごしているが特に問題はない。

私の手の器用さ、絵の上手さは祖父から来ているという。
確かになるほどと思う機会が多く、嬉しい。あと指が反対側に曲がるのも祖父の血らしい。

私は大学受験に受かったよと話せなかった人が2人いる。
ひとりは祖父で、もうひとりが姉の会社の上司のおじさまだった。祖父の件についてはすでに話したので割愛。
おじさまは元レーサーで現在建築士という割と謎の経歴を持っていて、よくクラウンの助手席に乗せられて高速で100キロ以上余裕でぶちかまされてビビった。
フロントガラスに当たった虫がチュン!と潰れる音が怖い。

祖父を亡くして泣いてばかりいた私にめちゃうまプリンをくれたり(今では有名だがまだ無名の頃のエスコヤマである)、父親とはこういうものなんだとふと思った。ふらりと日曜日の朝に家にやってきて、おう元気か、飯食うか?と聞かれ、頷くと車で2時間くらいの山奥でやってる飯屋に姉と3人で連れて行ってもらった。
そこはツーリング客の知る人ぞ知る的な場所で、囲炉裏を囲みながら猪汁やヤマメの姿焼きなど振る舞ってくれた。(関西なので普通に猪肉は食べます)
そして帰りに思想が強すぎるが美味しいおかき屋さんに寄った。この頃から既に若干のカオス感はあった。

しかしおじさまは糖尿病で、あまりご飯を食べられない人だった。なので私にもっと食え〜と大盛りにしたご飯をよそってくれた。優しい人だった。
毎年しっかりと健康診断を受け、人間ドックに行っていたが、ある日膵癌で、手遅れだと言われた。

この時私はまだ高校3年になったばかりで、病室にいるおじさまに「もうすぐ酒が飲めるのう、そうなったら馴染みのマジもんのバニーちゃんがおる店に連れてくで、面白いで」と言われたので、
バニーちゃん行く!やからおっちゃんも頑張って治してな!と私は約束をした。

そんな約束も夏には消えてしまった。膵癌は致死率が高いのも知っていたが、見て見ぬふりをしていた。怖かったからだ。
いまでも酒を飲むたびにおじさまを思い出す。バニーちゃんの店、行きたかったなあと頭の隅で思うのだ。

関西だとそこそこの大学に行けたので報告がしたかった。2人の墓前でしか言えなかった。喜んでいる姿が見たかった。
といってもまあ、今はこのザマであるけれど。

余談になるが、今でも寝ぼけている時に祖母に呼ばれた気がして返事をする。その後にあ、もういないんだったと理解する。

寂しい人生になってしまったが、両親もいなければ祖父母もいない。これはもしかしてラノベの主人公であるのか!?すげぇな。早く美少女でもイケメンでも来てくれ頼む。
みんなの応募、待ってるぜ!

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