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アート⊿ライフ

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旅先で、レストランで、はたまた自宅で、 そこでデジタル筆を使って、またはスマホの写真で、それとも文章で、 その瞬間を切り取り。
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2023年2月の記事一覧

アート⊿ライフ033 : 書初め (タッチペン)

 字が汚いので誰からも信じてもらえないが、小中学校は書道に通っていて、確か六段か七段ぐらいまでなっていた。当時の習っていた先生の名前を検索すると、美術協会の会員 であり、賞の名前にもなっていた。  由緒正しい先生から教わった書の心を忘れない為にも、毎年正月には子供たちに書初めを続けさせているが、時代はすっかり変わってデジタル書初めである。  私のスマホに筆のタッチペンで書くのだが、1月2日に息子はノリノリで書き、1月5日に遅れて娘は渋々と書いていた。言葉のセレクションの癖

アート⊿ライフ027 : 小説『眼鏡』

中学一年生の息子の、自作ショートショート3部作、その2。 『眼鏡』「やった!遂に完成したぞ!」  ここは地下二階の薄暗い部屋。一人で部屋に閉じこもっていたエフ氏は、完成した喜びと、復讐する企みとの、不気味な笑みをうかべていた。復讐というのは社長のこと。エフ氏は社長を恨んでいた。いや、恨んでいる。話せば長くなるが─  十年前のことだ。医師試験に落ちた俺は、仕方がなく中小企業の会社に務めることにした。しかし、運の悪いことに、そこはブラック企業だった。毎日残業続きで、給料も安い。

アート⊿ライフ026 : 小説『武勇伝』

 元旦に机に向かい、親指を素早く動かして、中学一年生の息子がスマホにフリック入力していた。何をしているのかと覗き込むと、スケッチブックに書いた自作のショートショートを入力していた。そう言えば、すでに三作品できているとの事で、共有してもらった、作品その1。 『武勇伝』台風は勢力を上げ、間もなく上陸しようとしていた。その中に台風の円から抜け出した風があり、畑の中の小さな風力発電へと向かっていた。  その時、豪雨の中一人で立つ人間らしきものが感じとられた。  名を鈴木敏郎。二十年