Mon cher Ash

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ルーヴルの硝子にうつる自分に死を見た時 となりで手を握ってくれていた人がいたことを思う

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空を切るばかりだ どれだけ願っても 雨にひとりたたずむ少年の左手

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ドゥオモの鐘 震えた瞼の裏に うつる幸福でありたかった

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異国の少年の 10年前のよすがになりたい

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右の手の 中指に留まる銀の重みを どうか半分分けてほしい

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あんまり美しいから 許せなくなる ちぎれた銀色の髪

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広い背中のすべらかな皮膚に 消された傷跡が見えたこと

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宝石の横顔を 長い長い髪が隠す 私は悪夢を守れただろうか

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その目が私を見た 傷に塗れたからだの震えで深淵を見る

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スクランブラーに乗る青年は笑っていて 業火の先で ただ幸せに

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本物の夜と繋いだ手 ひとりの人間の ただあたたかなその掌

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どうか覚えていて 長い髪をかき分けた先で 睫毛が触れた瞬間を

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