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やきゅうた入門~第3回~

今回のテーマは「子音」である。

前回の最後に童謡『ぞうさん』を課題として設定した。ここで私の模範解答を紹介する。

ジョーダン ドーマン 呉(オ) 花田 永井 戸根

ぞうさん ぞうさん おはなが ながいのね

大野 ハーマン 呂(ロ) 中井 野茂

そうよ かあさんも ながいのよ

 自分の歌詞と比べてどうだろうか。明確な正解はなく他にも正答は存在するはずであるが、この歌詞はそれなりにまとまっていると感じるだろう。正直、この歌詞にはあまり批判が付かないと考える。強いて言えば中井を別の永井に変えるべきといったところだろうか。それは、この歌詞は単純に母音だけを意識したのではなく、子音まで意識して作ったものであるからではないだろうか。当たり前だが、母音だけでなく子音も近づければ(極論、全ての子音まで一致させることが出来れば)原曲通りに聞かせることが出来るだろう。

前回も述べたが、原則としてどのジャンルの替え歌においても原曲の歌詞と替え歌歌詞は似た響きであることが好ましい。響きを近づけるという観点で言えば、母音だけでなく子音も近づけている方がよりそれっぽくなるのは当然だろう。完全に一致していなくても、サ行やカ行とハ行やマ行は発音方法やその聞こえ方も異なる、ということを考慮した歌詞はそうでないものと比べても違和感が少ないと推察される。そのような細かな発音の違いに注意して、近づけられるところは子音まで近づけていくとさらに違和感の少ない替え歌になるはずである。

では、試しに前回模範解答として紹介した『森のくまさん』の替え歌歌詞について、子音の観点から考えてみよう。

 松井 森野 和田 桑田 辻 江川

 あるひ もりのなか くまさんに であった

 髙松 森 大道 村田 藤井 寺原

 はなさく もりのみち くまさんに であった

まず、「あるひ」という歌詞に「松井」と当てはめるのは極めて雑である。母音こそ一致しているものの、子音が一切一致していないだけでなく、音としても離れすぎている。例えば元広島の丸木選手のほうがより近い音になるだろう。また、刻み方を変えて「アルー 三森 野中」とすればさらに原曲に近づく。

さらに、二回出てくる「くまさんに であった」に統一感がないことも改善すべきである。最初を「桑田 辻 江川」にするのであれば、後半も別の同姓選手で「桑田 辻 江川」とした方が綺麗になる。

この同姓選手の概念がサッカー選手や野球選手名で歌うことの一つのメリットである。同じ苗字でも複数の選手が存在し、それらを駆使することで見せ場を作ることが出来る。例えば「恋は混沌の下柳」や「ドレミ笘篠」などが代表的で、繰り返される同じフレーズを複数の同音の選手でカバーすると統一感や美しさを生み出すことが出来る。これは連打されるタイプ(SAN値ピンチやドレミ)だけでなく、1番のサビとラスサビが同じ歌詞であるときなどでも揃えられることが望ましい。

 最後に「はなさく もりのみち」であるが、髙松がやはり少し雑である。刻むならば「原 郭」や「花田 具(ク)」、マイナー選手なら「花増」などの方が一致度は高い。この辺りは「赤松 森 大道(赤松真人、森跳二、大道温貴)」として球団をそろえる、「原辰徳 大道」とフルネームをねじ込むなどの解答もあるため一概に子音を揃えることが絶対だとは言えないが、少なくとも子音重視の選択肢を考えられるように鍛えておくことは必要だろう。

 ここまで前回の母音のみを意識した歌詞を添削してきた。では、細かく刻むことこそが正義なのだろうか。それを“極端に刻んで作った”『うみ』で考えてみよう。。

呉(ウー) 三輪 ヒロ 伊奈 大木 伊奈

うみはひろいな       おおきいな

辻 狩野 ボール 申 比嘉 シーツ 呂(ル)

つきがのぼるし    ひがしずむ

 正直、ここまで子音に拘って細かく刻んで作ることは“クドい”と感じる人の方が多いだろう。実際問題、長い曲の中でこのような刻み方を繰り返し続けることは不可能に近く、出来てもワンフレーズ程度である。また、この歌詞は「原曲に近い」が「面白い」とは言えないだろう。このバランスがやきゅうた作成のカギであり、難しいところでもある。

 では、子音を近づけた歌詞はどのようにすれば作れるようになるのか。手っ取り早いのはとにかく作品に触れること。特に最近の動画は画像班の台頭などもあって子音まで意識した歌詞のものが多い。また、作詞大会には子音一致ガチ勢の方が何人もいらっしゃるため、そこから学びを得ることも効果的である。作詞大会の場合、自分の作品を他者に評価してもらえるというメリットもある。最後に、数をこなすことである。前回は短い歌詞の童謡を課題として設定したが、多くの楽曲はもっと歌詞が長い。歌詞が長くなればなるほど、重複歌詞の処理や難しいフレーズとの対峙を要するため労力がかかる。けれど労力がかかる分、壁の乗り越え方を習得できるようになる。既に動画化されているものでもいいから、自分な好きな曲で挑戦し、ブログ・動画・大会などで作品公開をすることが良いのではないか。

 今回は子音の一致度について解説してきた。何度も述べているように、子音があっていることが絶対的な正解ではない。先日Twitterでプチバスりをしていた「呼吸を止めてイチロー」のように美しさと面白さ、ノビが一致しないこともよくある。しかし、動画化などを考えない限り、最初のうちは基本に忠実に子音を揃える意識が必要だと考える。

次回のテーマはフルネーム。

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