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ポルト・リガトの聖母を語る時に僕が語ること
「ただいま」
と語りかけながら会いに行く。
最大で2時間くらいその前に立ち尽くしたこともあるんですよ、ええ、妻に話したらドン引きしていましたから。だいじょうです。普通の反応です。
他には目もくれず帰ろうとすると、「他の作品もありますよ?」と学芸員に声をかけられたこともある。知ってます。ミロやピカソのコレクションもあるんですよね。学芸員に喋りかけられるってよっぽどですかね、きっと、相当変わったやつキタ〜とロッカールームで終業時に話題になったに違いない。
2時間かけて常設展示の初めの絵だけ見て帰る奴はよっぽど頭おかしい気が自分でもするんですが、他の絵をみてしまうことでせっかくの完成された感情と瞑想エクスタシーな脳波の調和を乱されたくない気持ちわかりますか誰か。しかし、パトラッシュよ。僕はもう死んでもいいくらいに幸せなんだよ。この絵にまた会えて。さようなら。
「いいんです。この作品に会いに来たんですから」
サルバドール・ダリの最高傑作 「ポルト・リガトの聖母」
まるで産道から生ま落ちる瞬間にみたような景色だ。
福岡市美術館所蔵の、人類の宝のような作品です。けっこうでかい。
圧倒的な存在感が、モチーフ・象徴が、なにやら語り出してぼくと対話を始めるとでもいいますか、心地よくなるんですよね。変態ですよね。タルコフスキーの映画見ているような感じですか。一曲リピート癖が出るんでしょうね。
この世界は象徴でできている。
んで、みてると小さい時の悪夢を思い出す。
その部屋に赤と青のボタンがあり、ひとつは核弾頭の起爆スイッチ、もうひとつは解除ボタン、そのどちらかを絶対に押さなくてはいけない切迫した状況、、、
その時声が聞こえる。天の声、
「青のボタンを選びなさい」
信用できる声だろうか???? 違ったらどうしよう!!!!
「あなたは本物ですか?」
切迫した状況で、聞こえる声が神だなんてどうやったらわかるのだろう?そもそも、神の声を聞き分けることができるのか?ねえ神様?まじですか!?
冷戦時代の核実験映像がフラッシュバックのように投影。
一瞬の静寂のうちに全てを飲み込み駆け巡る爆風。音のない轟音。
母親や、街の木々、すべての愛するもの、生活が、人生が一瞬で熱風にかき消されていく。飛行機公園も、ももちパレスも、松原も。
気がつくとループしていて、テーブルの上にはボタンが置いてある。
恐怖心で
目覚める。汗びっしょり。
そんな夢を小学4年生くらいに繰り返し見た記憶がある。
そのときどこかで鐘の音が響く。
貝殻と卵、パンは命を象徴しているのだろう。
「わたしが命のパンである。わたしに来る者は決して飢ることがなく、わたしを信じる者は決してかわくことがない」ヨハネによる福音書6:35
ポルト・リガトの波の音を聴く
春のよく晴れた週末の朝に、この絵に、ダリに、聖母に会いに行く
その度に僕は、生まれ変わるのだ。
毎日何者であるかを、選んでいるのだ。
全然会いにいけないけど、お元気で。
全ての聖母に、神の栄光と平安が訪れますように。
全てのろくでもない男どもが、正しい声を選択できますように。
ダリのせいでしょうね。こんな文章書きたくなるなんて。
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