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嘘は青春の始まり(2)

この前の話しの続き。二人目の女子は、眼鏡でおかっぱ頭の、勉強のできる子だった。

英語が得意な子で、プレゼン力もあったので、自治体が主催するオーストラリアへの交換留学で一ヶ月間現地に行っていた。

私は、少しその子に嫉妬していた。海外なんて一度もいったことがない。そもそも、英語がそんなにできるというだけで、羨ましかった。

中2と中3で同じクラスになった。最初はあまり話さなかったが、スキー教室や修学旅行で班を組んだとき、彼女も一緒だったので、多少は話す仲にはなった。

中学時代の自分は、というと暗い表情の陰気な生徒だったと思う。今の思えばそんな陰気な男子にも分け隔てなく話しかけてくれる、貴重な女子ではあった。

修学旅行で京都の八坂神社あたりに自分たちの班が行き着いた。自由行動だったので、班の誰かが「行きたい」と言ったのだ。

その神社を回っているときに、「神社に来たのだから、おみくじを引こう」と思って、おみくじの販売所に行った。

どれどれ、と探していたら「恋みくじ」なるものを見つけた。少し恋愛に興味を持ち始めた年ごろだったので、200円出して恋みくじを買う。

おみくじの結果は、「好きな子にはアタックするようなダイタンさが必要」とか書いてあった。

さすがに恥ずかしい。フラレたら一生の笑われ者だと思った。

何食わぬ顔をして、班の集合場所に戻る。

その眼鏡の女子に、「ねえねえ、さっき恋みくじ買ってでしょ?」と言われた。

思わず、「いや、買ってないよ」と嘘をつく。

彼女は「ふーん、そうなんだ」とつぶやいた。

帰りの宿泊先、私とその女子は経理担当だったので、班の生徒が使ったお金と残りのお金を計算していた。

どうにもつじつまが合わない。もしかして、誰かお金をくすねたのだろうか?

困り果てていると、「先生に言うと色々問題になるから私が足りない分出そうか」と言った。

私は申し訳ないから、足りない分の半分は折半すると言った。結局、その女子と足りない数百円をお互いに折半しあった。

その女子とは、仲が発展した、とかは全然なかった。

でも、私が誰かに悪口を言われたときは必ずフォローしてくれていた。

そして、卒業式。結局彼女とは何もなかった。

卒業式が終わって、今にも帰宅する前、、というタイミングで100円ショップに売ってるような色紙を一枚くれた。

色紙の中には、(1)で触れた女の子と一緒に、「〇〇君は変だけど、高校に入ったら人気ものになれるよ」という文字がかかれた、あと2人の名前が書かれてあった。

何これ?と思ったものの、とりあえずは受け取る。

そして、校門を出るとき誰かに「あの2人、〇〇君のこと好きだったらしいよ」と言われた。

振り返って、教室に戻ろうとも思った。

でも、戻らなかった。

今にして思えば、何かを伝えれば良かったと思う。でも、もう遅い。

桜の季節。3月になると中学時代のエピソードをつい思い出す。

思い出したところで意味はない。恋さえ成就することはなかったのだから。

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