ヤシの実を食べた
昔、好きな人がいた。
少年は、伝えるのが恥ずかしく、告白するのをためらう。
「〇〇をからかうのはやめろよ」と言って、女子からその少年をかばうその友人。
気がつけば、友人は私から少しずつ距離を置く。
友人は美味しいディナーを作って、いつしかその女子と逆に距離を縮めていく。
そして。私の知らないうちに、友人は甘い蜜を吸い続けていた。
とてつもない後悔と嫉妬。やり切れない想い。
ヒゲを剃っても、顔にクリームを塗っても、消えぬ過去の入れ墨。
少年はいつしかオトナになる。中年になる。
ヤシの実を吸い続けた男たちは、これからどこに行くのだろう。
歩道もないような狭い道を、大型トラックが駆け抜けていく。
16年かかえ続けた教科書のたぐいは全て灰の中。
記憶はいつしか色褪せていく。
昔のポラロイド写真も色あせてきた。
さて、これからどこに行こうか。
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