寝てない男

「昨日全然寝てないわ〜」
「テストの勉強全然してないわ〜」

いつになってもこういう類いの「自分、普通の人間じゃないですアピール」は会話の中に溢れている。

そりゃしっかり寝たほうが身体にも良いし、成長ホルモンの分泌なんていうよく分かんないワードは一度は聞いたことあるんだから、どう考えても寝不足はデメリットだらけ。んなことはみんな知っている。
学力を測るテストがあるのに勉強しないことは、自分は努力をしない人間と言っているようなのに。
こんなもの、男らしさでもなんでもない。

普通の人は、寝る。普通の人は、勉強する。

「寝てない男」は自分の存在をアピールする術として、そのような言動をしているのではないか。なんと寂しい。
その証拠と言ってはなんだが、「寝てない男」はモテる。
いや、モテない男が寝てなくても、誰も気に留めない。へー、と、笑って流す。モテる男が寝ないから、モテるんだ。何か特出した技術、例えばスポーツが上手な男が寝ないと、スポーツをしているカッコいい姿と、寝ないというダメな姿のギャップが愛らしく感じるのであろう。そんなことでしか自分を表せない表現力の無さに、当時は気付くはずもないのだが…。

そして、この風潮を促進する存在がいるのだ。
寝てないことに対して、「スゴイ!」と、世にも不可解な言葉をかける人たちだ。
寝てないことはスゴくもなんともない、ただの管理不足だ。勉強してないことはスゴくもなんともない、ただの怠惰だ。
何を思って、そのような奇妙な言葉をかけるのだろう。その場を穏便に過ごしたかったら、モテない男のように、へー、と、笑って流せばいいのに。

普通ではない自分を表現したら、他者に肯定された。

こんな経験をしてしまったら、それは留まるところを知らずに「寝てない男」はどんどん表現しだす。

「紙とか苦手でさ、本読まないんだよね〜」
「今に全力だから、貯金とかしないタイプなんだよね」
「将来の夢とか、考えたことないわ〜」
「就活?なんか社会のレールって感じでヤダわ」

自分を表現するのは全く問題はない。が、浅はかな他者評価によって助長されると、それはいつか自分の身を滅ぼす「逃げ癖」となる。

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