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建設DXで現場の課題を解決!事例や成功のポイントを徹底解説

経済産業省がDXを推進していることもあり、多くの業界がDXに注目をしています。建設・土木業界においても、人材不足や技術継承などのさまざまな課題を解決する手段として、DXの活用が進んでいます。しかし、建設DXに興味を持つものの「建設業界にDXを組み合わせることで何が解決できるの?」「自社でどのように導入するのかイメージが湧かない」とお悩みの企業ご担当者もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、建設DXの概要や流れ、建設DX成功のポイントを事例も合わせながら解説します。

建設DXとは

そもそもDXって

DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略で、ITを活用したさまざまな仕組みを導入することで、我々の生活を豊かにしていく概念のことです。

DXは、単純に新たなシステムやツールの導入をするだけではなく、仕組みそのものも変革していくような取り組みを表し、業務効率化の先にあるビジネス発展や社会のニーズを満たすことを目的としています。

建設DXが推進される背景には、経済産業省が提唱する「2025年の崖」と呼ばれる大きな問題があります。この2025年の崖とは、レガシーシステム(古くから運用されているシステム)が残ることで、経済的損失が最大12兆円に達すると言われている問題です。

レガシーシステムは業務に合わせて柔軟に作り込まれている一方、システムに習熟した人間が定期的にメンテナンスしなければなりません。システム管理が属人化し、運用コストが増大してしまうのです。

DXは、このようなレガシーシステムも刷新し、誰でも使いやすいシステムや仕組みを導入することでより効率的に業務を進められ、さらには私たちの生活を豊かにしてくものです。

建設業における課題とDX化の必要性

多くの業界でDXが進んでいるなか、建設業においてもDXの重要度が増しています。建設・土木業では、以下のような課題を解消するために、DX化が必要だと言われています。

  1. 作業の省人化による労働力不足の解消

  2. 若い世代への技術継承

  3. 建設生産効率性の向上

  4. 改正労働基準法が建設業界に適用

それぞれを詳しく解説していきます。

1.作業の省人化による労働力不足の解消

建設業界は、慢性的な人手不足に悩まされています。国土交通省が発表した「建設産業の現状と課題」によると、建設業就業者は1997年に685万人程度いたところから2016年には492万人まで減少しているのです。

さらに、人手不足と同時に高齢化も加速しています。建設業就業者は、2016年時点で全体の約3割が55歳以上で29歳以下は約1割となっています。こうした課題があることから、労働力不足が懸念されているのです。

そこで注目されているのが建設DXです。ITを活用したツールの導入などによって、大きな業務効率化を期待でき、人手不足によって生じる労働力不足の解消につながるでしょう。 例えば、建設現場で機械等に異常がないか監視する業務があるとします。今までは、人が機械ごとに点検作業を実施していたため、機械の数だけ点検する工数がかかっていました。建設DXをすれば、機械の点検作業をシステム側が自動で実施するため、定期的に監視する必要がなくなり、異常が発生したタイミングで検知されるため大幅に工数を削減できます。 こうした作業の省人化が進んでいくことにより、労働力不足の解消につながっていくのです。

2.若い世代への技術継承

建設業界では高齢化も問題になっています。高齢化が進むことで、若い世代への技術継承ができず、技術力の低下につながります。さらに、若手の人手不足も加速しています。技術を継承しきれずに、建設業界全体が衰退してしまう可能性が考えられるのです。

建設DXは、技術のデータ化によって技術継承も効率的に進めることが可能です。例えば、熟練技術者による設計技術や判断力をAIに学習させ、若い世代がデータモデルとして参照できる基盤にもできるのです。

3.建設生産効率性の向上

建設DXは、建設・土木業界全体の業務効率化に効果があります。特に、建設現場で利用される図面設計の業務は、飛躍的な効率化が期待できるでしょう。

なかでも「BIM(Building Information Modeling)」や「CIM(Construction Information Modeling)」と呼ばれる立体モデル構築用システムに注目が集まっています。なお、BIMは建築物(Building)、CIMは土木構造物(Construction)でそれぞれ使われます。

BIM/CIMは3Dモデルで設計するシステムのため、完成形が分かりやすくなり、今まで見えなかった不具合も発見しやすくなるでしょう。

既に3DCADは存在しますが、BIM/CIMは3Dモデルに加えて、各種コストや仕上げ、管理情報、組み立ての工程や、作業工数に関する情報も入力できます。他社と材料について情報共有するときもBIM/CIM一元化できるなど、さまざまなメリットがあるのです。

これ以外でも建設DXはさまざまなITツールを活用して、建設生産効率を向上することができます。

4.2024年度より改正労働基準法が建設業界に適用

改正労働基準法とは労働時間に関するルールを定めた法律です。労働時間について、以下のような縛りを設けています。

  • 労働時間の大原則(1日8時間/週に40時間)

  • 36協定を結べば月に45時間かつ年360時間の残業が可能

今までの労働基準法では、36協定の月45時間という上限規制が、建設業には適用されませんでした。建設業の業務量は、工事の受注量や天候に左右され、労働時間に波があるためです。しかし、2024年4月以降に施行される改正労働基準法では、建設業においても時間外労働の上限が月45時間までとなったのです。 したがって、今までと同じく、繁忙期に残業して労働力を確保できなくなります。少ない労働時間でも仕事を回していけるような基盤が必要です。建設DXでは、新たなシステムの導入や業務フローの見直しに取り組んでいくことで、少ない労働力でも今までと同様に仕事を回せる仕組みを構築します。

国も推進する建設DX

生活を支えるインフラ分野において深刻な人手不足が懸念されるため、国交省は建設DXの推進に力を入れています。そのなかでも、注目されているのが下記3つの取り組みです。

  1. i-Constructionの推進

  2. 公共工事のBIM/CIM原則適用

  3. infrastructureDX総合推進室などの発足

1.i-Constructionの推進

i-Constructionとは「新たなIT技術を建設現場に導入し、業務効率化や企業の経営環境の改善を目指す」という、国土交通省が提唱する取り組みです。

人手不足や高齢化が進んでいるため、建設業の賃金水準の向上や働き方の見直しも求められています。そのためIT技術で業務を効率化し、経営状況も改善しようというわけです。

「i-Constructionの推進」では、建設現場の生産性を2025年までに2割向上を目指すとしており、これを実現するには、今までよりも少ない人数と工事日数で同じ工事量を実行する必要があります

2.公共工事のBIM/CIM原則適用

国土交通省が発表した「令和5年度のBIM/CIM原則適⽤に向けた進め⽅」によると、2023年までに小規模を除いた公共の工事ではBIM/CIMを原則的に適用するとしています。2021年時点では、大規模構造物に対して全ての詳細設計で原則適用、それ以外では一部の詳細設計で適用となっています。

建設現場では、BIM/CIMの適用によって生産性向上やスムーズな情報共有が可能です。今までは、設計時点で建築物の模型を作成しているケースが多くありましたが、3次元モデルの活用によって不要になります。修正も容易となるでしょう。

令和5年度のBIM/CIM原則適用に向けた進め方
令和5年度までの小規模を除く全ての公共工事におけるBIM/CIM原則適用に向け段階的に適用拡大。令和3年度は大規模構造物の詳細設計で原則適用。

令和3年3月2日 第5回BIM/CIM推進委員会 資料より
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001389577.pdf

3.infrastructureDX総合推進室などの発足

国土交通省では、社会変化に対応していくためのインフラ分野を支援していくためにも、インフラ分野のDX推進本部を設置しました。
(参考:インフラ分野におけるDXの推進について)

DX推進本部ではさまざまなデータやデジタル技術を活用し、インフラ分野における組織・業務プロセス・働き方の変革を目指しています。また、建設DXの推進を効率よく実施していくためにも、建設現場・研究機関が連携しながら進めていける推進体制の構築、3次元データを活用した新システムの導入支援、これらを活用できる人材の育成にも取り組む方針です。

建設DXに必要とされるデジタル技術

建設DXで重要になるのはさまざまなデジタル技術です。建設DXで利用されるデジタル技術としては、下記の5つがあげられます。

  • ICT(情報通信技術)

  • 第5世代移動通信システム

  • IoT(モノのインターネット化)

  • AI(人口知能)

  • クラウドサービス

ICT(情報通信技術)

ICT(Information and Communication Technology)とは、日本語に訳すと「情報通信技術」で、ネットワークをつかったコミュニケーションを指します。スマートフォンなどの普及により、メールやメッセージングアプリなど手軽に情報の伝達、共有が実現できる環境ならではの概念です。

建設現場においてもICTは活用されています。例えば、現場にいなくても遠隔地から機械を操作できる技術や、ドローンで撮影された画像を3次元モデルに活用してデータ化する技術などがあげられます。

第5世代移動通信システム

第5世代移動通信システムとは、5Gと呼ばれる次世代通信規格のことです。 5Gには主に以下3つの特徴があります。

  • 高速かつ大容量

  • 超低遅延

  • 多数同時接続可能

4Gでは通信速度の制限により、遠隔地からの操作やリアルタイムな情報のやり取りが難しい場合がありました。しかし、5Gが導入されることで、遅延なく大容量の通信を実現できます。遠隔地からでも少ないタイムラグで建設機械が操作できるようになります。

IoT(モノのインターネット化)

IoTとは「Internet of Things」の略で、物理的なモノとインターネットをつないで活用する技術です。最近では外出先から自宅のエアコンを操作したり、車のエンジンを付けたり、冷蔵庫の中身を遠隔地から確認できたりするなど、我々の生活を便利にしています。

建設DXでもIoTは活用されています。建設現場で利用する建設機械に専用の端末を載せてインターネットとつなぎ、データを収集・分析するのです。機械の自動監視などによる省人化が生産性の向上につながるでしょう。IoTの活用は、建設DXを推進する上で欠かせません。

AI(人工知能)

AIとは「Artificial Intelligence」の略です。人間の行動や考えを機械に覚えさせて、さまざまな課題の発見や判定を機械に行わせる技術です。AIに大量のデータを学習させると、その中から共通化されたパターンを導き出します。 建設DXでは、AIを活用した画像認識技術が活用されています。ドローンで現場を撮影し、画像をAIが分析、転圧や掘削作業の進捗具合を把握可能です。

他には、舗装の点検などにもAIが活用されています。車体前面にカメラをとりつけ、撮影しながら走行すると、舗装の画像がAIに送られます。AIが舗装のひび割れや陥没を分析し、補修箇所を割り出すのです。同様に、橋梁のひび割れをドローンで撮影してAIが分析するツールも開発されています。

クラウドサービス

クラウドサービスとは、インターネット上の仮想的なリソースを利用できるサービスです。Googleドライブや、Dropboxなどのクラウドストレージが有名です。

建設・土木業界は、紙の書類が根強い業界です。それは建設業界が古いのではなく、現場で図面に書き込めたり、紙だからこそ見える「現場のイメージ」があるためです。

しかし、紙には管理が煩雑なことや汚損する恐れがあるというデメリットがあります。
最近ではタブレット端末で図面を開き、文字やポンチ絵も書き込めるようになりました。契約書類などもデータ化し、書類管理も楽になります。共通のフォーマットをつくれば、書類作りも効率化が期待できます。違和感のないIT化・仕事が楽になるDXが可能になるはずです。

建設DXを成功に導く4つのポイント

ITツールを導入するだけでは、なかなか建設DXは進みません。スムーズに建設DXを成功させるためには、以下4つのポイントが重要です。

  • 業務と課題の洗い出し

  • 現場スタッフへのヒアリング

  • ITツールの機能や使いやすさ

  • 企業経営トップによる推進

それぞれのポイントを解説します。

業務と課題の洗い出し

まずは、建設現場で行われている業務と抱えている課題の洗い出しから始めましょう。どんな問題を解決したいのか、そのために必要なITツールは何か、明確にすることが重要です。整理していくうちに、今まで気付かなかった問題点や、最終的なゴールも見えてくるでしょう。ゴールが見えれば、目的を見失わずに建設DXを推進していけます。

現場スタッフへのヒアリング

建設DXは一部の組織だけで進めるのではなく、現場を巻き込むことが重要です。 例えば、パソコン上では便利に見えても、現場でタブレットを持って使うと不便なこともあります。建設DXの実現には現場の意見や悩みをヒアリングしつつ、細かなコミュニケーションを取っていくことが重要になるため、社内全体で取り組んでいきましょう。こうした取り組み自体が、現場の建設DXへのハードルを下げ、建設DXへの関心へとつながります。

ITツールの機能や使いやすさ

建設DXを進めるときは、ITツールの導入自体が目的とならないように注意しましょう。ITツールに必要な機能が搭載されているかだけでなく、現場が扱いやすいかという観点も持って選別することが大切です。

ITに不慣れな担当者もいます。ITツールが使いにくければ、建設DXの進みは遅くなってしまいます。 認知度の高いツールを選ぶことも大切ですが、あまりに高性能なものや、業界の特性に合っていないツールは避けましょう。プロセスごとに分けられたITツールや、業界の特性を理解したツールのほうが使いやすく、建設DXがうまく進みます。

経営トップによるDXの推進

建設DXでは、企業のトップとなる経営層が全社的に推進していくことが必要不可欠です。 経営層が推進しないと、現場の人間はこのまま進めていっていいのかが不安になってしまい、推進に対して前向きに取り組めなくなってしまいます。その結果、現場が主体的に動かず、建設DXが進まないこともあります。 まずは企業の経営層が従業員へ向けて建設DXに取り組んでいく旨を共有し、企業全体が同じ目的に向かって進んでいける体制づくりを構築することが大切です。

まとめ

建設業界は、人手不足や若い世代への技術継承などの課題を抱えています。建設DXは、こうした課題を解決する手段として効果的です。
建設業界ではi-Constructionの推進によってさまざまな課題解決が期待されています。また、 建設DXを企業で進めていくときには、企業の経営層が積極的に推進をして従業員も一丸となって進めていける体制づくりが重要です。

その後は、現場を巻き込んで業務や課題を洗い出し、自社の課題を解決できる最適なツール選びをする必要があります。 建設DXをお考えの企業の方は、今回紹介した進め方を参考にしながら社内で推進していきましょう。

EARTHBRAINの考える建設DX
Smart Construction

EARTHBRAIN(アースブレーン)では、建設DXによって現場作業の「生産性・安全性・環境性」を向上させるサービスを提供しています。 ICTやIoTの活用により、建設現場で取得できるさまざまな情報をデータ化。現場作業を最適化していきます。

最適化された業務の中で課題を見える化し、スムーズに情報共有をしながら現場作業を進めていけるでしょう。 さらに当社では建設DXを実現するために、建設生産プロセスの全てをカバーするような商材群を提供しています。 プロセスごとに最適な製品を選定することで、建設現場にも大きな価値が生まれます。

建設DXを前向きに進めていきたいとお考えのお客様は、ぜひ、EARTHBRAINまでお問い合わせくださいませ。皆様のDX推進を全力でサポートいたします。

参考URL:
■ 建設業の働き方改革の現状と課題
■ i-Constructionの推進
■ 令和5年度の BIM/CIM原則適⽤に向けた進め⽅
■ インフラ分野におけるDXの推進について