涙が止まらない
気合を入れて、早く来すぎた
大きな門の前で待っていると、園長先生が出てくる
「すいません、早く来すぎちゃって」
怒られるかなと思って、言い訳のように言ってみたものの、園長先生は笑顔だった
鉢植えの花で飾られた卒園式の立て看板を指差して、あそこで写真撮れますから、式が始まるまで時間があるのでね
そんな会話をしているうちに、ほかのご家族もやってくる
顔を見知ったパパさん、ママさんともご挨拶をしながら、あっという間に卒園ですねと、皆同じことを口にする
立て看板でそれぞれが写真を撮り、子供たちは先に教室へ向かう
しばらくして、入り口が開放される
1番乗りの我が家は妻さんが最前列を押さえる
カメラ担当のパパは、後ろの端っこに座る
しばらくして、卒園児が入場してくる
袴姿の担任のうしろを、一丁前に緊張感を纏った子供たちが姿勢よく歩く
卒園生起立
ザザッと衣擦れの音だけで、全員がピシッと立ち上がる
園歌を元気に歌い上げる
卒園証書の授与がはじまる
ひとりひとり名前を呼ばれると、はい!と返事をして、壇上で証書を受けとる
うちの娘だけではなく、見知った子供たちが、みんな立派に証書を受け取っていくのを感慨深く見守る
全員が受け取ったあと、卒園生のことば
幼稚園生活の思い出、先生や家族、お友達への感謝と別れの言葉が紡がれる
大人の座る方から、鼻を啜る音が聞こえる
さよなら僕たちの幼稚園を合唱する
式が進行するにつれて、啜り泣く声が、子供たちの席からも漏れてくる
それに共鳴するように、先生方も、見守る親にも伝播してゆく
式が終わり、卒園生が退場してゆく
カメラのレンズ越しに、溢れる涙で目を真っ赤にした娘を捉えた瞬間、胸に込み上げるものがあり、一瞬視界が揺らぐ
グッと堪えて、教室に向かう子供たちを見送る
子供たちの成長を感じられる素敵な卒園式だった
1クラスずつ、体育館で集合写真を撮る
教室に戻ってから、担任の先生から最後のお話を聞く子供たち
涙が止まらない
先生のお話も終わって、少しずつお友達が教室を出ても、先生やお友達と写真を撮っては、涙が止まらない
園庭に出て、お世話になった先生方に会うたびに、涙が止まらない
他のクラスのお友達に会うたびに、寂しくて涙が止まらない
先生に、お友達に、みんなとお別れをして、家に帰っても、涙が止まらない
こんなに寂しくて涙が止まらないくらいに、幼稚園が楽しくて大好きだったんだね
卒園、おめでとう