#24「サファイア 9月の誕生石」に思うこと

さて、前回のカラー豊富なガーネットに引き続き、これまたカラフルな変種であふれている「サファイア」について思うことを綴っていきたいと思います。

サファイアは、もうご存知の通り「9月の誕生石」です。

サファイアといったら通常ですと夜空を思わせる美しい深い青色だと思います。
しかし、実は様々な色のものが存在しているのはご存知ですか?

現在は結構メディアで特集されていることもあるので、一般のお客様でもかなり宝石の知識を持ってる方も多いですし、むしろ店員よりも詳しい方もいるので、言わずもがなな感じもしますが(^^;)

「サファイア」という"宝石”は、「コランダム」という"鉱物”です。
そして、この「コランダム」は、宝石種でいうと以下の2種類に分けられます。

○赤いコランダム→ルビー
○赤色以外のコランダム→サファイア

ここまでは、もうご存知の方も多いですよね。
では、ルビー以外の「サファイア」と呼ばれる種類には、どんな色があるの?という話ですが・・・。

サファイアの場合は、色の違いによる変種で特別な名前があるわけではありません。名前の頭にその色をつけて、「○○サファイア」とそのまま呼びます。

○グリーン→グリーンサファイア
○イエロー→イエローサファイア
○パープル→パープルサファイア
○オレンジ→オレンジサファイア

特別に美しい色合いは、ちょっと捻った名前が付くことがあります。

○黄金色の彩度の高いイエロー
→ゴールデンサファイア
○ピンクとオレンジが混ざり合ったような、蓮の花を思わせる色合い
→パパラチャサファイア

また、サファイアのそれぞれの色はわずかに含まれる不純物によるものですが、全くの純粋な不純物のないコランダムは無色透明の「ホワイトサファイア」になります(カラーレス)。

ここで問題になるのが、「ルビー」と赤色系の「ピンクサファイア」との鑑別結果の線引きです。
結論からいうと、「鑑別機関によって見解が違う」です。

私たち専門家でも、ルビーだと踏んで仕入れた物がぎりぎりピンクサファイアで鑑別結果が出てしまったり、逆にピンクサファイアだろうと思っていた物がルビーで出たり、結構鑑別機関によっても違うなと思いますし、もしかすると鑑別を担当した鑑別士によっても違うのではないかと思ってしまいます。

※注意※
実際はそれぞれの鑑別機関内では、一つの宝石を鑑別・鑑定する際にはダブルチェック、トリプルチェックを行っています。鑑別機関内ではきちんとした色基準を設けているので、その「色基準が鑑別機関によって異なる」ということです。

ルビーとサファイアの違いは成分云々ではなく、本当にわずかに含まれる「Cr(クロム)」という不純物が原因で発色している、その色合いによるものです。ルビーとピンクサファイアではお値段がだいぶ違ってしまうのではっきりして欲しいところですが・・・もうこれは、自分の好みと、自分の目と、そのジュエリーについている鑑別書を発行している鑑別機関を信じるしかないです。

そしてサファイアの魅力は、この色の豊富さだけではありません。

そう、内部のインクルージョンによって浮かび上がる「スター」と、「カラーチェンジタイプ」のものもあります。

個人的には「カラーチェンジタイプ」のものは面白いけれども、やっぱりアレキサンドライトの美しさにはかないません。

なので、「スターサファイア」について、ちょっとだけお話ししたいと思います。(スタールビーもありますが、それはまたルビーの回で・・・)

みなさんは、スターサファイアは見たことありますか?

カボションカットと呼ばれる、ドーム型にカットされた表面に、6条の光彩が現れるサファイアです。

これは、内部にインクルージョンとして存在している「チタン」に光が反射して起こる現象です。繊維状に交差して3方向に入っていて、それぞれの条に光が反射して6条に見えています(髪の毛の"天使の輪”と同じ現象)。

この"スター”が出るには条件があり、

1、シルクインクルージョン(チタンの繊維状の結晶)が十分な長さであること。

2、シルクインクルージョンが十分な量であること。

3、カボションカットの底面(ドーム状の底)が、シルクインクルージョンに対して平行にカットされていること。

などが挙げられます。

では、なぜこのシルクインクルージョンがきちんと3方向にクロスして内包されるのかというと、"インクルージョンは結晶方向に支配されて並んでいるから”です。要は、木目のような成長する方向のようなものですね。

ちょっと分かりにくくなってきましたね・・・。

ちなみに、このシルクインクルージョンである「チタン」は、ブルーサファイアの色の原因でもあります。

ブルーサファイアの色の原因は「Fe(鉄)」と「Ti(チタン)」で、「Fe」のみだとイエローサファイアになります。

そして、この「チタン」が溶けきれずに結晶して並んでいる物がスターサファイアになりうるのですが、逆に"加熱処理”をする事でチタンを溶かし、ブルーの色合いを濃くしたりすることもできます。

なので、「スターサファイア」は必然的に「非加熱サファイア」であるということになりますね。

実際は処理をすることでチタンを再結晶化してスターサファイアにする技術もあると聞いたことがありますが・・・。どうなのかな。

このスターサファイアというのは、インクルージョンによってその姿を現すために、「色の美しさ」と「透明度」のどちらも持った最上級の物と出会うことは滅多にありません。

○スターがはっきり出る→繊維状のインクルージョンが多いので、透明度が下がり、色が濁って見える

○ブルーが濃く、透明度がある→繊維状のインクルージョンが少なめなので、メインの"スター”の出が悪い。

こうしてみると、いかに「最上級であること」が難しいかが分かりますね・・・。
でも、その中でも、
「シルクインクルージョンの一本一本が非常に細く、密で、透明度を邪魔せず、ブルーも濃く、スターもくっきり出るブルースターサファイア」

という物も存在します。

もしこの石に出会ったら、迷わず"買い”です。

おそらく、二度目の再会はありません。

まあもちろん、お財布が許せばなのですが・・・。

ほんの一部しかお話しできていませんが、サファイアは本当に奥深い宝石です。日本の秋に向かう、風情のある季節にぴったりの9月の誕生石。

今年はまだ、真夏の様相ですが・・・。

是非、機会があったらいろいろな色のサファイアを見比べてみてください(^^)

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