#066 なぜ投資のプロはサルに負けるのか(藤沢 和希)-第一章①

(※本記事は2021/4/21に投稿されたものとなります(https://earth76.com/066-%e3%81%aa%e3%81%9c%e6%8a%95%e8%b3%87%e3%81%ae%e3%83%97%e3%83%ad%e3%81%af%e3%82%b5%e3%83%ab%e3%81%ab%e8%b2%a0%e3%81%91%e3%82%8b%e3%81%ae%e3%81%8b%ef%bc%88%e8%97%a4%e6%b2%a2-%e5%92%8c%e5%b8%8c/))

本日は同書の第一章その①をお届けしたいと思う。

第一章は以下の内容となる。

うち、今日は1~6までを紹介したいと思う。

・1.不思議なプロの投資助言ビジネス ←本日

・2.コイン投げ大会と株式投資の微妙な関係 ←本日

・3.確実にお金持ちになるたった一つの方法 ←本日

・4.投資信託と投資用ワンルームマンションの共通点 ←本日

・5.クレジットカードの年会費と色の関係 ←本日

・6.見逃せないシグナリング効果 ←本日

・7.ブランドとは愚か者から搾取する為のマインドコントロール

・8.都会に住んでいる人が車を買って一体何に使うのか

・9.生命保険は命をかける宝くじ

・10.35年ローンで家を買うということ

・11.教育はもっとも難しく成果の見えにくい投資

・12.ファイナンシャルインテリジェンスを身に付けよう

■1.不思議なプロの投資助言ビジネス

・書店には「株式投資で誰でもうん億円」という本が山積み

 ・法外な料金を請求する投資セミナーも日本各地で開催

 ・これらは短期間で利用者をお金持ちにするという触れ込みで商売をしている

・筆者は外資系投資銀既往の最前線で数年間仕事をしてきた

 ・投資のプロとして投資理論もマスターしている

 ・会社の敏腕トレーダーと組んで、マーケット内のかずかな歪みから利益を得る為のトレーディング戦略を毎日死に物狂いで研究している

 ・世界的な投資家とも親交がある

 ・1か月の利用料金が100万円を超えるような最新鋭のデータベースもいくらでも使える

 ・そんな筆者でも、投資で確実に儲ける方法はわからない。同僚も分からないという

・それなのに千数百円の本に「投資の必勝法」が書いてあるのか

 ・仮にそんな方法があったとして、何故わざわざ本に書いて、みんなに教えなければいけないのか

・法外な料金を請求するセミナーも同じ

 ・そんなに儲かる投資手法を知っているならば、どうしてセミナーでわざわざお金を稼がなければならないのか

 ・どうして赤の他人に、金の卵を産むガチョウの居場所を教えてあげなければいけないのか

・もちろん答えは一つ

 ・そんな投資方法は存在しないので、確実に小銭を稼げる出版やセミナーでお金を儲けて、六本木のキャバクラで遊んだり、南の島でクルージングしたり、自分の老後に備えたいから

・中には本当に大儲けした人もいるだろう

 ・但し宝くじやラスベガスのスロットで大当たりして大金持ちになったのと一緒 

 ・過去にとてつもなく運がよかったとしても、今後も運がいいとは限らない

 ・セミナー講師自身が今後も運が続くとは限らないことを一番よく分かっている

 ・だから安定した収入を得ようと、本を書いたりセミナーをしてみたりする

 ・「一日5分の努力で宝くじに確実に当たる方法」なんて本が売られていても、たいていの人は信じない

 ・ところが少々複雑な株式投資や不動産投資となると、不思議なことにコロッと人は信じてしまう

 ・たまたま株で大もうけするのと、幸運な人が宝くじにあたるのとは、実はあまりかわらない

・世界的な才能の持ち主が正しい知識を身に付けて、非常に厳しい訓練をすれば、わずかながら、偶然よりは高い確率でもうけ続ける事も可能 

 ・ただそういう人材は、オリンピックでメダルを取るとか、大リーグやセリエAで主力選手として活躍するといった、ずば抜けた才能とそれを活かす超人的な努力をする能力を持ち合わせた人

 ・そういうプロ中のプロでも、運が悪ければ簡単に損失を出してしまうのが投資や投機の世界

・LTCM(Long Term Capital Management)というヘッジファンドはスーパーリッチな個人等からお金を集めて、金融市場でありとあらゆる手段を使ってお金を儲ける投資のプロ集団

 ・一般の投資信託と違い、金融当局から規制を受けることがない

 ・ノーベル経済学賞受賞者やファイナンス学会最高の頭脳と、ウォール街の伝説的トレーダーが設立

 ・ドリームチームは数年で大損失を出して破綻

 ・それでもサル以下の成績だったり、子供だましの投資助言ビジネスが繁盛したりと、マネーの世界は実に摩訶不思議な世界


■2.コイン投げ大会と株式投資の微妙な関係

・簡単な架空のゲーム
 ・ウォーレンバフェットさんが言っていたものを、筆者がアレンジしたもの
・ゲームは日本国民全員が参加する全国コイン投げ大会
  ・毎日夜の8時にコインが一つ投げられる
  ・表が出る確率が50%、裏が出る確率が50%
  ・毎晩夜の8時までに表か裏か100円かけなければならない
  ・また、現在何人の国民が表に、何人が裏に賭けているか、リアルタイムで全ての国民に知らされる
  ・負けた人の100円はすべて勝った人に等分に配分される
  ・負けた人は退場しなけらばならない
  ・勝ったお金は次の日に全てかけなければならない
  ・日本の人口は1億2千万人とする
・1日目
  ・国民が表か裏に賭ける
  ・午後7時の時点で表に4千万人、裏に3千万人賭けている
  ・当たる確率が半々なら、40億円を3千人で分けた方が、30億円を4千人で分けるよりも得
  ・その為、裏に賭ける人が増えてくる
  ・そのように理論値を計算して有利な方を買う投資家をアービトラージャーという
  ・アービトラージャーがいるので、夜の8時には表と裏はほぼ半々になる
  ・ちょうど6千万人ずつになったとする
  ・コインと投げた結果は「表」だった
  ・半分の国民は100円をもらうことができた。残りの半分は退場になった
・2日目
  ・掛け金が200円になる
  ・6千万人でコイン投げをし、3千万人が200円を得て、持ち金が400円となる
・3日目
  ・掛け金が400円になる
  ・3千万人でコイン投げをし、1500万人が400円を得て、持ち金が800円となる
・10日目
  ・掛け金が10万円になる
  ・12万人でコイン投げをし、8万人が10万円を得て、持ち金が20万円となる
  ・このころには有頂天になり、合コンで自分がどれだけコイン投げの才能に恵まれているか、酔った勢いで吹聴している(ただ運がよいだけだが)
・20日目
  ・掛け金が1億円になる
  ・120人でコイン投げをし、60人が1億円を得て、持ち金が2億円となる
  ・「一日5分の努力だけ!20日で1億円稼ぐ方法」なんて本が出版される
120人はスター同然
  ・コイン投げに対する投資哲学を語ったりする
  ・自信満々なのでホリエモンみたいに女優を口説き落とす人も出てくるかもしれない
  ・過去のコインの表、裏のパターンから将来を予測するテクニカル分析や、コインを投げるひとの経歴やコインの材質から表、裏のパターンを予測するファンダメンタル分析に関する本も出版されるかもしれない
  ・彼らが幼少期にどんなことをしたかを調べて「金持ち父さんが教える、投資の天才を育てる教育法」なる本が出るかもしれない
・実際の株式市場も、このゲームによく似ている
株も不動産も、投資ははるかに偶然が支配する部分の多い、コイン投げのようなゲーム
  ・それにも関わらず、投資の必勝法に関する本がたくさん出版されたり、必勝法を教えるセミナーが開催されたりしている
・投資をしているひと、またはこれから投資を始める人に一番理解してほしいのは、「投資とは非常に偶然の要素が強いゲームだ」ということ
  ・投資が完全に偶然が支配するゲームだと仮定すると、必要なのは運だけ
  ・プロと素人、プロとサルの成績が同じでも納得できる
  ・ノーベル賞学者とウォール街の敏腕トレーダーが束になってサルに負けたとしても、不思議はない


■3.確実にお金持ちになるたった一つの方法

・皆が楽してお金持ちになりたいと思っている
お金持ちになる方法は、たったひとつの方程式で完全に記述できる
 ・資産形成=(収入ー支出)+利回りX資産
 ・具体的には
 ・一年間で増える財産=(年間総収入ー年間総支出)+年間運用利回りX運用資産
・つまり
①収入を増やす
・②支出を減らす
・③利回りをあげて投資からの収入を増やす


■4.投資信託と投資用ワンルームマンションの共通点

・投資信託
 ・金融機関の投資のプロであるファンドマネージャーが多数の投資家から、資金を集めて、株や債券に投資して、利益を投資家に分配する
・投資用ワンルームマンション
 ・不動産業者がワンルームマンションを選んであなたに売ってくれる。サラリーマンでも大家に成れて、家賃収入を得ることができる
どうしてそんなに素晴らしい商品を、自分で買わずに見ず知らずの人に電話してまで売ってくれるのか
 ・投資に必要なのは、難しいファイナンス理論や投資の専門知識でなく、子供でもわかるような常識
 ・誰がどういう目的でどういう商品を売っているのか考えるだけで、人生は経済的にかなりよくなっていく


■5.クレジットカードの年会費と色の関係

・クレジットカードで一括払いすると、無利子でお金を借りることが出来る
 ・支払いが翌月になる
・何故それが可能かは、お店がカード会社に毎日手数料を払っているから
 ・お店からすると、クレジットカードがお客の財布のひもを緩めてくれたお礼
高い年会費を払うと、クレジットカードの色がゴールドになる
 ・得られる効用は大して変わらない
 ・経済合理性からすると、払う必要性は全くない


■6.見逃せないシグナリング効果

・ゴージャスな色のクレジットカードを持っていれば、女性にもてるならば話は変わってくる
 ・カードの色は経済学でいう「シグナリング」という効果がある
・恋愛マーケットでは女性は常にお金持ちの男性を探している
 ・偽物の金持ちでないか、女性は情報収集にやっきである
 ・男性は「本当の」お金持ちだよ、と情報を送る
 ・これを経済学では「シグナルを発する」という
というのが、前段1~6の流れである。

最後の5と6の、ゴールドカードの経済合理性がないが、もてたいという一心でシグナリングの目的でもつ、という説明がしっくりきた。

続きは明日また。。

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