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ウィリアム・マッカスキル「効果的利他主義の定義」

こちらは ウィリアム・マッカスキル による "The Definition of Effective Altruism" の日本語訳です。(原文はこちらより)
翻訳者: 清水颯 (Hayate Shimizu, link to his Researchmap)


 今日、世界にはさまざまな問題がある。7億5千万人以上の人々が1日1.90ドル以下(購買力平価換算)で生活している[1]。マラリアや下痢、肺炎など、簡単に予防できる原因で、毎年約600万人の子どもたちが亡くなっている[2]。気候変動は環境に大打撃を与え、経済に何兆ドルもの損失をもたらすと言われている[3]。世界の女性の3分の1は、性的または身体的な暴力に苦しんだことがある[4]。3,000発以上の核弾頭が世界中で高い警戒状態(high alert)に置かれていて、短時間の内に使える状態にある[5]。細菌は抗生物質に耐性を持ち始めている[6]。党派心は強まり、民主主義は衰退しているかもしれない[7]。

 世界はこれほど多くの問題を抱えており、これらの問題が深刻であることを考えると、私たちはこれらの問題に対して何かをする責任があることは確かである。しかし、何をすればよいのだろうか。私たちが取り組みうる問題は数え切れないほどあり、また、それぞれの問題に取り組む方法もさまざまである。しかも、私たちの資源は限られているから、個人として、あるいは地球全体(globe)として、これらの問題を一度に解決することはできない。それゆえ、私たちは自分たちがもつ資源をどのように配分するのかを決めなければならない。しかし、私たちは何を基準にそのような決断を下すべきなのか。

 効果的利他主義運動は、その一つのアプローチを先導してきた。この運動に参加する人びとは、さまざまある資源の使い方のうち、不偏的に考えて、どの使い方が最善なのかを見つけ出そうとする。この運動は、かなり活発になってきている。科学研究、シンクタンク、政党政治、社会起業、金融(寄付を通じて善を行うため)、非営利活動など[8]、少なくとも部分的には効果的利他主義の考えに基づいて自分のキャリアを選択した人々が、今や世界中に何千人もいるのである。毎年、サンフランシスコ、ロンドン、香港、ナイロビなど様々な場所で開催されるEffective Altruism Global会議には、総勢1000人以上の人々が集まる[9]。3,500人以上の人々が、Giving What We Canの誓約書に従って、最も費用対効果が高いと思われる団体に残りの人生で収入の10%以上を寄付し、合わせて15億ドル以上の生涯寄付を誓約している[10]。また、GiveWellが最も推奨する慈善団体には年間9000万ドル以上の個人寄付が集まるし[11]、現在140億ドルの潜在資産を持つ財団GoodVenturesは、効果的利他主義の原則に基づき、Open Philanthropy Projectの助言を受けて、毎年2億ドル以上の助成金を配布している[12]。

 その結果、効果的利他主義コミュニティは、世界の破局的リスクの軽減、家畜のアニマルウェルフェア、グローバルヘルスの分野で大きな成果を上げることに貢献した。2016年だけでも、効果的利他主義コミュニティは、効果の持続する殺虫剤処理された蚊帳を提供することで650万人の子どもをマラリアから守り、3億6000万羽の鶏をケージの檻の中の生活から救い出し、技術的AIセーフティを機械学習研究の主流領域として発展させることに大きな推進力と支援を提供した[13]。

 この動きは、学術的な議論にも大きな影響を及ぼしてきた。このテーマに関する書籍には、ピーター・シンガー著『あなたが世界のためにできるたったひとつのこと:〈効果的な利他主義〉のすすめ』や私自身の『〈効果的な利他主義〉宣言!』などがあり[14]、効果的利他主義を支持ないし批判する学術論文は、Philosophy and Public AffairsやUtilitas、Journal of Applied Philosophy、Ethical Theory and Moral Practiceその他の刊行物に掲載されてきた[15]。Essays in Philosophyの一巻はこのテーマに特化しており、Boston Reviewには学者たちによる効果的利他主義についての論考が掲載されている[16]。

 しかし、効果的利他主義について有意義な学術的議論を行うには、何について話しているのかについて合意を形成する必要がある。本章では、その一助となるべく、効果的利他主義センターの定義を紹介し、同センターがなぜそのような定義を選んだのかを説明し、その定義に対する正確な哲学的解釈を提供することを目指す。私は、効果的利他主義コミュニティで広く支持されているこの効果的利他主義の理解は、一般の人々の多くや効果的利他主義を批判する多くの人々が持っている効果的利他主義の理解とはかけ離れていると考えている。本稿では、なぜ私がこのような定義を好むのかを説明した後で、この機会を利用して、効果的利他主義に対して広く流布している誤解を訂正する。

 始める前に、「効果的利他主義」を定義することで、道徳の根本的な側面を説明しようとしているわけではないことに注意することが重要である。経験的研究分野では、科学と工学を区別することができる。科学は、私たちの住む世界の一般的な真理を発見しようとするものである。工学は、科学的理解を用いて、社会に役立つ構造物やシステムを設計し、構築することである。

 道徳哲学でも、同じような区別ができる。典型的に、道徳哲学は、道徳の本質に関する一般的な真理を発見することを目的としている。これは規範的科学に相当する。しかし、道徳哲学の中にも工学に相当する部分があり、例えば、社会で広く採用されれば、世界を改善することになる新しい道徳的概念を作り出すことができる。

 「効果的利他主義」を定義することは、道徳性の基本的な側面を説明することではなく、工学的な問題なのだ。この観点から、私は定義が満たすべき二つの主要な要件を提案する。一つ目は、現在、効果的利他主義に従事していると言われている人たちの実際の実践、そしてコミュニティのリーダーが持っている効果的利他主義の理解に沿うことである。二つ目は、その概念が可能な限り公共的な価値を持つようにすることである。つまり、例えば、様々な道徳的見解に支持され、またその道徳的見解にとって有用であるほど十分に広い概念でありながら、その概念の使用者が世界をより良くするために、そうしなかった場合よりも多くのことを行えるほどには限定された概念が望まれる。もちろん、これはバランス感覚を要する作業になる。

 

1. 効果的利他主義の以前の定義

 「効果的利他主義」という言葉は、「効果的利他主義センター」を設立する過程で、2011年12月3日に関係者17名による民主的なプロセスを経て作られた言葉である[17]。しかし、この用語の公式な定義は導入されていない。長年にわたり、効果的利他主義は、さまざまな人々によって、さまざまな方法で定義されてきた。以下はその例である。

  1. 私たちにとって「効果的利他主義」とは、持っている1ドル、1時間を使って、最大限の善いことをしようとすることである[18]。

  2. 効果的利他主義とは「どうしたら、自分にできる最大の違いを生み出せるだろうか」と問いかけ、その答えを見出すために、証拠と慎重な推論を用いることである[19]。

  3. 効果的利他主義は、非常にシンプルな考えに基づいている:私たちは、できる限りで最大の善を行うべきである〔・・・・・・〕最低限受け入れ可能な倫理的な生活を送るには、余剰資源の相当部分を、世界をより善い場所にするために使うことである。完全に倫理的な生活を送るには、できる限り最大の善を行うことである[20]。

  4. 効果的利他主義とは、質の高い証拠と慎重な推論を用いて、可能な限りで最大限、他者を助ける方法を考え出す研究分野である。また、そうして出た答えを真剣に受け止め、世界の最も差し迫った問題に対する最も有望な解決策に力を注ぐ人々のコミュニティでもある[21]。

  5. 効果的利他主義とは、他者に利益をもたらす最も効果的な方法を決定するために、証拠と理性を用いる哲学であり、社会運動である[22]。

 以上の定義には、いくつかの共通点がある[23]。すべての定義が最大化という考え方を引き合いに出し、福利を高めるという価値であれ、ただ一般に善を達成するという価値であれ、ともかく何らかの価値の達成を話題にしている。しかし、相違点もある。定義(1)(3)は「善を行う」ことについて述べているのに対し、定義(4)と(5)は「他者を助ける」「他者に利益をもたらす」ことについて述べている。他の定義と異なり、(3)は効果的利他主義を、活動や研究分野、運動といった非規範的なプロジェクトではなく、規範的な主張としている。定義(2)、(4)、(5)は、証拠と慎重な推論を用いるという考えを引き合いに出しているが、定義(1)、(3)はそうしていない。

 効果的利他主義センターの定義は、効果的利他主義を下記のように定義することで、これら各論点に態度を取っている。

 この定義は、私が中心となって、効果的利他主義コミュニティの多くのアドバイザーから意見を聞き、Julia WiseとRob Bensingerの多大な協力を得て作成した。この定義と、それに沿った一連の指針的価値は、効果的利他主義コミュニティの大多数のリーダーによって正式に承認されている[25]。 効果的利他主義に「公式」な定義はないが、当センターの定義は他のどの定義よりもそれに近い。しかし、効果的利他主義のこの声明は、哲学的な読者ではなく、一般的な読者を対象としているため、アクセスしやすくするために、ある程度の正確さが失われている。そのため、ここではより正確な定式化を行った上で、定義の内容を詳しく解説していきたい。私の定義は次のようなものである。

(i)は知的プロジェクト(または「研究分野」)としての効果的利他主義を指し、(ii)は実践的プロジェクト(または「社会運動」)としての効果的利他主義を指す。

 この定義は以下の特徴をもつ。

  • 非規範的。効果的利他主義は一組の規範的な主張ではなく、ふたつのプロジェクトから成る。

  • 最大化。両プロジェクトの眼目は、投入された資源を使って可能な限りで最大限の善を為すことである。

  • 科学整合的。最も善いことをする方法を見つけ出すための最善の手段は、科学的方法であり、慎重で厳密な議論と理論的モデル、およびデータへの依存を含むように広く解釈される。

  • 暫定的に不偏的かつ厚生主義的。暫定的な仮説または第一近似値として、善を行うことは福利を促進することであり、すべてのものの福利は等しくカウントされる。より正確には、有限個の同じ個体からなり、またそれのみを含むふたつの世界A、Bにおいて、Aにおけるすべての個体がBにおける対応する個体と同じ福利を持つように、AからBへの個人の一対一の写像が存在する場合、A、Bは等しく善いということである[26]。


 なぜこのような選択がなされたのか、順を追って説明しよう。

 そのうちの二つは議論の余地のない選択である。まず、効果的利他主義の定義として提案されているものはすべて最大化であり、この考えはピーター・シンガーの著書『あなたにできる最善のこと(The Most Good You Can Do)』〔邦訳のタイトル『あなたが世界のためにできるたったひとつのこと:〈効果的な利他主義〉のすすめ』〕のタイトルを含め、効果的利他主義に関するほぼすべての説明に織り込まれている。しかし、一点、明確にしておくべき重要な点がある。自らの為す善の量を増やすためにはふたつのやり方がある。ひとつには、善を行うために捧げる資源の量を増やすことであり、もうひとつは、善を行うために捧げた資源の効果を高めることによってである。私が提案する定義では、効果的利他主義が問題とするのは後者の意味での最大化である。他の定義では、この点は明確にされてこなかった。次節でこの選択の理由を説明する。

 第二に、効果的利他主義が広義の科学的手法に依拠するという考え方も、明らかにこの概念の核となる部分をなす。効果的利他主義の主要な研究組織はすべて、理論的モデルや明晰で厳密な論証と共にデータや科学的研究に依拠できる場合にはそれに依拠する。

 しかし、ここでも明確化が必要である。一部の批判者は、効果的利他主義が科学的手法を支持することが、ランダム化比較試験(RCT)にのみ依拠することを意味すると解釈している。もしそうだとすれば、それはもちろんナイーブなことだ。しかし、私たちは「科学的手法」をもっと広く理解する必要がある。例えば、今後二世紀にわたって人類が絶滅する確率はどの程度か、といったように、実践的な理由からRCTに基づいて直接評価することができない問題がある。また、RCT以外にも、回帰分析、準実験、調査、単純な事実調査など、経験的証拠を得る方法は多種多様に存在する。そして、倫理学、認識論、決定理論など、一般に実験的証拠が関係しない問題も多く存在する。

 上記の定義でより議論を呼ぶのは、この定義が非規範的であることと、暫定的に不偏的かつ厚生主義的であることの二点である。これらについて順次述べていくことにする。

 

2. 規範的主張というよりも、プロジェクトとしての効果的利他主義

 私が与えた効果的利他主義の定義では、効果的利他主義はふたつのプロジェクトから構成される。一つは知的プロジェクトで、与えられた単位資源をどのように使えば最も善いことができるのかを特定しようと試みること、もう一つは実践的プロジェクトで、知的プロジェクトの成果を実践に活かし、自らの資源の一部を使って世界をより善くしようとすることである。

 次のふたつの仕方で、この効果的利他主義の定義が規範的な主張を含むこともありえた。第一に、各人が払うべき犠牲の程度について主張を行うこともできた。例えば、誰もが自分の資源のできるだけ多くを、最も善いことをするために使わなければならないとか、あるいは、誰もが自分の時間やお金の少なくとも10パーセントを、何であれ最も善いことをするために使わなければならないなど、より限定的な犠牲の義務があると述べることもありえた。

 私たちが犠牲の義務を定義に含めなかったのには、3つの理由がある。第一に、効果的利他主義コミュニティのリーダーの間で非常に不評だったことである。2015年にそうしたリーダーを対象に行った調査では、回答者の80%が「定義に犠牲の要素を含むべきではないと思う」と答え、「犠牲の要素を含むべき」と考える人はわずか12.5%だった。第二に、より広い範囲の効果的利他主義コミュニティの内部でも、効果的利他主義に従事する義務があると考えるのは一部のメンバーだけで、その他のメンバーは、効果的利他主義に従事することは自分にとって意味のある人生の一部であるが、そうする義務はない、と考えていることである。2017年に行われた、効果的利他主義コミュニティのメンバー1,843人を対象とした調査では、「どちらかと言うと、あなたは効果的利他主義を「機会」と「義務」のどちらとして考えていますか?」という質問が含まれていた。これに対して、56.5%が「道徳的義務」または「義務」を、37.7%が「機会」を選択した(この年には「両方」を選択する選択肢はなかった)[27]。前回2015年の効果的利他主義調査では、同じ質問に対して「両方」を選んだ人は42%、「機会」を選んだ人は34%、「義務」を選んだ人は21%だった[28]。

 第三に、〔規範的主張を含まないことで〕このコンセプトはよりエキュメニカルなものとなる。効果的利他主義とは規範的な主張ではないので、どのような道徳観とも整合的である。しかしそれでもなおこのプロジェクトは、様々な道徳的見解をもつ者の関心を惹くものである。最も妥当な道徳観は、善を促進するプロ・タントな理由があり、ウェルビーイングには何らかの価値があることを認めるだろう。したがって、与えられた単位資源で厚生主義的な価値を最大限促進することがいかにできるのかという問題は、どうしたら道徳的に善い人生を送ることができるのかという問題に対する答えの一部として解決する必要がある。これに対して、善を最大化する義務に関するいかなる主張は、特に所得水準や個人的状況が大きく異なる人々を対象に一般論を展開しようとすれば、より論議を呼ぶことになるだろう。従って、効果的利他主義という概念の公共的価値は、犠牲の要素を含まない方が大きいと思われる。つまり、より多くの人が効果的利他主義を実践することができ、一般に、あうりは特定の事例で、強い善行の義務が存在すると信じない人々にとって、この概念が不快なものとなるのを防ぐことができる。このことはGiving What We Canの関係者の逸話にも裏付けられている。同団体の関係者は当初、10%の誓いを立てるよう人々を促すために「義務」と「機会」の両方の枠組みを試してみたが、「機会」の枠組みの方がはるかに効果的であることに気づいたのである。この事実は、善行の義務という考え方が数十年前からあったにもかかわらず、善行の義務に関するピーター・シンガーの見解を真剣に受け止める人の数をGiving What We Canがこれほどまでに増やした理由の説明にもなっている。

 最後に、効果的利他主義の最も特徴的な側面、すなわち、世界をできるだけ善くするために資源をどのように使うことができるかという開かれた問いに注意を向ける。この問いは、利他主義のどの形態がどの程度、人に求められるかという問いよりも、はるかに軽視されており、間違いなく重要である[29]。そのため、効果的利他主義のコミュニティでは、どの程度、どのような方法で、最も善いことをする義務を負うのか、ということよりも、いかにしてより善いことができるのか、というプロジェクトに取り掛かることに関心が集まっている。

 効果的利他主義の定義を規範的なものにしうる第二の方法は、条件付きの義務に訴えることである。例えば、資源を使って善を行おうとする場合、付随制約に反しない限り、何であれ善を最大化する行為を選ぶべきだという考えを定義に盛り込むこともできた[30]。

この意味でも規範的ではないことを支持する議論は、犠牲の要素を含めることに反対する議論ほど強くないと思うが、私たちが定義を完全に非規範的なものにしたのは、犠牲の要素を含めたくない理由とほぼ同じである。まず、ほとんどのEAリーダーが反対していた。2015年の調査では、回答者の70%が「定義は非規範的であるべきだと思う」と述べ、「規範的であるべきだと思う」は20%だった。

 二つ目は、やはりエキュメニズムである。自分の資源を使って善を行おうが行わまいが、どちらも許容可能なのだから、ある程度の善は行うが、自分に行えた善よりも少ない善を目指すことも許容される、という理に適った考え方がある。さらに、このような形式の条件付き義務が成立する場合があると考えるとしても、その範囲については難しい問題がある。誰かの権利を侵害する場合に、善を最大化する条件付き義務が存在するという考えにコミットしたくないのは明らかだが、行為者の全一性を損なうという条件ではどうだろうか。あるいは、すでに資源の大半を利他的に費やしてしまったが、今度は効果の低い、しかし自分の心に訴えかける慈善活動にお金を使いたいと思う場合はどうか。この論点についてのどの見解も大いに議論を呼ぶだろう[31]。

 例えば、「人はできるだけ多くの善を行う理由がある」というように、単に理由の観点から表現することで、規範的な主張を薄めることは可能である。しかし、そうすると、効果的利他主義の主張は非常に弱くなり、あまり面白みがなくなるだろう。効果的利他主義の特徴は、「できるだけ多くの善を行うために、自分の資源の一部をどう使うことができるか」という問いと、「できるだけ多くの善を行うにはどうしたらよいか」について、引き出した結論に焦点を当てるという選択であり、「人はできるだけ多くの善を行う理由をもつ」という非常に薄い主張ではない。


3. 効果的利他主義は暫定的に不偏的厚生主義的である

 この定義の物議をかもす第二の点は、暫定的に不偏的かつ厚生主義的という点である。どのような価値論的な見解を効果的利他主義の枠内とし、どのような価値論的な見解を効果的利他主義の枠外とするかは微妙なところである。両極端の一方では、効果的利他主義を何であれ個々人がもつ善についての見解に従って、最も善いことをしようとすることであると定義することもできた。他方では、完全な快楽主義的功利主義のような、ある特定の善の理解に基づいて最善のことを行う試みとして利他主義を定義することもできた。いずれの選択も深刻な問題に直面している。もし、どのような善の見解も許容するならば、白人至上主義者が効果的利他主義を実践しているとみなされる可能性があり、これは明らかに我々が望まない結論である。もし、ある特定の善の見解に限定してしまうと、エキュメニズムに訴えることができなくなるし、効果的利他主義のコミュニティ内部にも、価値論の多くの領域で活発な意見の相違があるため、当のコミュニティ自体を代表する定義でなくなってしまう。

 あるいは、効果的利他主義を制限して、「合理的」な善の見解のみをカバーする試みもある。しかし、その場合、まず、何が「合理的」であるかを説明する難しさに直面する。そして第二に、効果的利他主義コミュニティの実践を誤って表現してしまうことになる。効果的利他主義のコミュニティは、現在、福利に焦点を当てており、また主要な効果的利他主義研究機関のすべての分析が、各個体の利害を平等に考慮しているという点で特徴的である。さらに言えば、例えば芸術や生物多様性を目的それ自体とする人々やプロジェクトが、このコミュニティ内に登場することは、当分の間はありそうにないと思う。同様に、不正は残るが、全体としてはより善い結果をもたらす行為が他にあると考えられる場合、コミュニティの人々が不正の是正に注力することは考えにくい。

 私が望ましいと考える解決策は、上で定義した暫定的な不偏的な厚生主義である。これは、例えば生物多様性や芸術に本質的な価値があるとする非厚生主義的な見解や、例えば外国人よりも同国民の福利を重視する偏向主義的な見解を排除する。しかし不偏的な厚生主義には、功利主義、優先主義(prioritarianism)、十分性主義(sufficientarianism)、平等主義、人口倫理に関する様々な見解、異なる生物の福利をどのように評価するかに関する様々な見解が含まれる。

 しかし、この厚生主義は、単なる作業仮説として受け取られる限りで、「暫定的」なものである。効果的利他主義というプロジェクトの究極の目的は、できるだけ多くの善を行うことである。現在、福利に焦点を当てているのは、世界の現状と、私たちが他者に利益をもたらす素晴らしい機会を考えると、厚生主義的価値を促進する最善の方法は、善を促進する最善の方法と概ね同じであるという考えに基づいている。もしこの考え方が変化して、効果的利他主義のコミュニティに属する人々が、善を行う最善の方法は非厚生主義的な善の促進も含みうると確信したならば、私たちは定義を修正して、「他者の利益」ではなく端的に「善を行う」ことについて話すようになるだろう。

 この理解は、EAのリーダー達の意見にも裏付けられていると思う。先に紹介した2015年のEAリーダー達へのアンケートでは、厚生主義と不偏性を含む定義に52.5%が賛成し、25%が反対している。つまり、不偏的厚生主義を含めることは幅広い支持を得ているが、定義の他の側面ほど説得力のある支持を得ているわけではない。

 さらに、この制限は効果的利他主義のエキュメニズムを減らすものではない。福利は、ほとんどの、あるいはすべてのもっともらしい道徳的見解において善の一部である。効果的利他主義は、道徳的生の完全な説明であると主張しているわけではない。しかし、私たちが善を促進する理由を持ち、福利が善の一部であるとするあらゆる見解にとって、福利を促進する最善の方法を探るプロジェクトは重要かつ適切なものであるだろう。

 効果的利他主義とは何かを説明したので、ここからは効果的利他主義とは何ではないかを説明し、よくある誤解を解いていこう。

 

4. 効果的利他主義についての誤解

4.1 一つ目の誤解:効果的利他主義とはたんなる功利主義である

 効果的利他主義は、単に功利主義の焼き直し、あるいは応用功利主義を指すと考えられ ることが多い。例えば、John Grayは「功利主義的な効果的利他主義者」に言及し、その批判の中で効果的利他主義と功利主義を区別していない[32]。Giles Fraserは、効果的利他主義の「大いなる計画」は「善を行うための広義の功利主義的/合理主義的アプローチを奨励すること」だと主張している[33]。

 効果的利他主義は功利主義と似たところがあるというのは確かである。最大化を問題にしているし、福利の向上に主眼を置いている。コミュニティの多くのメンバーがより善いことをするために大きな犠牲を払っており、コミュニティの多くのメンバーが功利主義者を自称している、などである[34]。

 しかしこれは、効果的利他主義が功利主義と同じであることとは全く異なる。功利主義とは異なり、効果的利他主義は、他者により大きな利益をもたらすためには、常に自己の利益を犠牲にしなければならないと主張するものではない[35]。実際、上記の定義では、効果的利他主義は、どのような善行の義務を負うかについては、何も主張していない。

 功利主義とは異なり、効果的利他主義は、手段を問わず、常に善をなすべきであると主張するものではない[36]。実際、指導原則の中で示唆されているように、「目的が手段を正当化する」式の推論に反対する強いコミュニティ規範が存在する。このことは、例えば、Ben Todd と私が書いた 80,000 Hours というブログ記事の中で強調されている[37]。

 最後に、功利主義とは異なり、効果的利他主義は、善が福利の総和に等しいとは言わない。前述の通り、平等主義、優先主義と両立可能であり、そして、福利だけが価値ある唯一のものだとは主張しないので、非厚生主義的な善が価値をもつという見解とも両立可能である[38]。

 一般に、非常に多くのもっともらしい道徳的見解が、善を促進するプロ・タントな理由があること、そして福利向上が道徳的価値をもつことを含意している[39]。もしある道徳的見解がこれらふたつの考えを支持するならば、効果的利他主義は道徳的に善い生活の一部となる。

4.2 ふたつめの誤解 効果的利他主義はたんなる貧困との闘いである

 メディアや批評的な学術的な議論の中で効果的利他主義に焦点が当たる場合、その大部分は効果的利他主義の、貧困との戦いに関わる部分が取り上げられる。例えば、Judith Lichtenbergはは論文の冒頭で、「悲惨な貧困を救済するために、あなたはどれだけのお金と時間、労力を提供すべきか」という問いを投げかけている[40]。Jennifer Rubensteinは効果的利他主義を「貧困の緩和に焦点を当てた社会運動」と表現し、Iason Gabrielは効果的利他主義を「個人ができるだけ善いことをするように、典型的には最もパフォーマンスの高い援助・開発組織にお金を寄付することによって」奨励することだと述べている[41]。

 もちろん、貧困との戦いが、効果的利他主義のコミュニティに属する人々のひとつの中核的な焦点であることは事実である。2017年のEA調査では、回答者の41%が極度の貧困を最優先の課題領域とし、GiveWellなどの効果的利他主義団体の中には、貧困削減にのみ焦点を当てたものもある[42]。それは効果的利他主義の中の他の団体が、アニマルウェルフェア[43]や存亡リスクにのみ焦点を当てているのと同様だ[44]。

 しかし、効果的利他主義の核となるふたつの部分は課題中立的であり、手段中立的である。すなわち、どの問題に焦点を当てるのか(例えば、グローバルヘルスか気候変動か、工場畜産かなど)には原則的に開かれており、その問題に対処するために(側面制約に違反しない)どんな手段を用いることにも、原則的に開かれていることである。どのような場合でも、基準は単に、どのような活動が最も善い結果をもたらすかということである。原因および手段の中立性は、最大化と不偏的な厚生主義の仮定から率直に導かれる。もし、他方の課題よりも一方の課題に焦点を当てたり、他方の手段よりも一方の手段を(付随制約に違反することなく)選んだりすることで、福利をより促進することができるならば、効果的利他主義にコミットする人は、そうすることだろう。

 そして、実際には、効果的利他主義コミュニティのメンバーは、動物の苦しみのを減らすこと、刑事司法改革、存亡リスクの軽減など、他にも多くの課題に対して支援を行っている。2017年のEA調査では、極度の貧困を最優先の課題領域とした回答者41%に加え、課題の優先順位付けを最優先とした回答者が19%、AIが16%、環境保護が14%、合理性の促進が12%、AI以外の存亡リスクが10%、アニマルウェルフェアが10%となっている。以上の結果は、2015年および2014年の調査とほぼ同様で、貧困は効果的利他主義コミュニティ内の個人にとって最も一般的な焦点領域だが、コミュニティの大多数の個人にとっては焦点ではない。

 これは、Open Philanthropy Projectによる助成金の配分に反映されている。2017年の同団体の支出額は以下の通り。

  • 1億1,800万ドル(42%):グローバルヘルスと開発 

  • 4,300万ドル(15%):高度な人工知能がもたらす潜在的なリスク 

  • 3,600万ドル(13%):科学研究(課題横断的な予算) 

  • 2,800万ドル(10%):バイオセキュリティとパンデミック対策

  • 2,700万ドル(10%):畜産動物のアニマルウェルフェア

  • 1,000万ドル(4%):刑事司法改革 

  • 900万ドル(3%):その他のグローバルな破局リスク 

  • 1,000万ドル(4%):土地利用改革、マクロ経済政策、移民政策、効果的利他主義の促進や意思決定の改善など、その他の課題領域

Effective Altruism Funds(個人寄付者が専門家が管理する財団に寄付し、財団が特定の課題領域内で受け取った寄付金を再助成することができる)の受領額も、同様の物語を語っている。2017年に、財団がが受け取った額は以下の通りである。

  • 982,000ドル(48%):グローバルヘルス・開発基金

  • 409,000ドル(20%):アニマルウェルフェア基金

  • 363,000ドル(18%):長期的未来基金

  • 29万ドル(14%):効果的利他主義コミュニティ基金

つまり、効果的利他主義を貧困削減のみと同一視するのとは反対に、効果的利他主義のコミュニティは現在、少数の他の焦点領野と共に、極度の貧困、工場畜産、存亡リスクに焦点を当てているというのがより正確な表現といえるだろう。


4.3 3つ目の誤解:効果的利他主義は寄付か、与えるために稼ぐことに尽きる

 ほとんどのメディアは、効果的利他主義の寄付への応用に注目しており、かなりの割合で、「与えるために稼ぐ」という考え方、つまり、人々はその収益の多くを効果的な慈善団体に寄付できるようにするために、意図的に稼ぎのいいキャリアを追求すべきだという考え方に焦点を当てた[45]。

 このことは、効果的利他主義に対する批判にも当てはまる。Iason Gabrielは、効果的利他主義を「フィランソロピーのあり方に変革をもたらす哲学であり社会運動」であるとし、効果的利他主義とチャリティに焦点を当てた議論を行っている[46]。同様に、Jennifer Rubensteinによる『あなたにできる最善のこと』と『〈効果的な利他主義〉宣言!』のレビューでは、効果的利他主義運動の慈善活動の側面に焦点を当てている[47]。

 慈善活動が効果的利他主義のコミュニティの主要な焦点であることは間違いないし、80,000 Hoursでも初期のマーケティング資料[48]で、与えるために稼ぐこととを過度に宣伝していたことを認めているので、その側面に焦点を当てた記事を書くのはまったく妥当なことだと思う。しかしこれが意味するのは、何気なく見た人が、効果的利他主義が重視しているのはこの点だけだと誤って考えてしまう可能性があるということだ。

 80,000 Hoursという団体は、個人が自分のキャリアをできるだけ効果的に使えるようにすることにもっぱら焦点を当てている。そして、多種多様なキャリアパスで幸福になれるであろう利他的な大卒者の15%は長期に渡って与えるために稼ぐよう推奨している[49]。同様に、EA運動が慈善資金の調達に成功したこともあり、Centre for Effective Altruismは、そうした課題に助成を行うよりも、特別重要な課題への取り組みを奨励することに焦点を当てている[50]。また、2015年のEA調査では、調査対象者に「どのようなキャリアパスを歩む予定ですか」と尋ねている。この質問項目に対して、「寄付をするために稼ぐ」と答えたのが36%と最も多かったものの、13%が「非営利の仕事」、25%が「研究」、26%が「いずれでもない」と回答している。このことから、効果的利他主義コミュニティのメンバーのほとんどは、インパクトを与えるための主の手段として寄付を利用する予定はないようだ。

 

4.4 4つ目の誤解:効果的利他主義はシステムの変化を無視する

 効果的利他主義に対する批判のすべてで最も共通して見られるのは、効果的利他主義がシステムの変化を無視するというものである。例えば、Brian Leiterは次の所見を残している。「私は、効果的利他主義のような企てには、少し懐疑的である。その理由は単純に、人間の不幸にはシステム上の原因があり、それにはチャリティではなく、政治的な変革でなければ対処することができないからである。それゆえ、すべての資金と労力は、システム改革と政治的改革に向かうべきである。」[51]この反論は、Amia Srinivasan[52]、Iason Gabriel[53]、Jennifer Rubenstein[54]も論じている。

 しかし効果的利他主義は明らかに、原理的にも実践的にもシステムの変革に開かれている[55]。「システムの変化」の広い意味と狭い意味を区別することができる。広義には、システムの変化とは、長い間持続する利益を得るための一回限りの投資を伴うあらゆる変化のことである。狭義には、「システムの変化」とは、長期にわたる政治的変化を指す。いずれにせよ、効果的利他主義のコミュニティに属する人々は、政治的変化のような計測しがたい尺度を避けた定量化を望むバイアスがかかっているという主張がよく聞かれる[56]。

 効果的利他主義がシステムの変化に原理的に開かれていることは明らかである。効果的利他主義は課題中立性、手段中立性にコミットしており、もし何かしらシステムにアプローチする方法で世界を改善することが(期待値として、いかなる付随制約も犯さず)最大の善をなせるような行為の進路であれば、それは効果的利他主義の観点からは最善の進路となる。しかし、より重要なことは、効果的利他主義者はしばしば狭い意味においても、システムの変化を提唱する実践を行っていることである。完全なリストではないが、例を挙げると以下のようになる[57]。

  • 国際的な労働移動は、以前から効果的利他主義コミュニティのメンバーが注目してきた領域である。Openborders.infoは利他主義コミュニティのメンバーが運営しており、貧しい国から豊かな国への移住の劇的な増加という選択肢に関する研究を集約し、推進している。Open Philanthropyはこの分野で、Center for Global Development、US Association for International Migration、ImmigrationWorksなどに助成金を出している。この課題に焦点を当てる理由は、貧困国の人々が貧しいのは、より生産性の高い国へ移動できないことが構造的な理由の一つであるからである。事実上、他のすべての国々が協同し移住制限を行うことによって、貧困国の人びとは自分が生まれた国に幽閉されているのである。このため、国境を越えた移動の自由度が高まれば、貧困に苦しむ人々への恩恵は莫大なものになるという経済的な議論がある[58]。

  • Center for Election Scienceは、代替投票システム、特に承認投票(approval voting)を推進している。この団体は効果的利他主義コミュニティのメンバーが運営しており、私の推薦によりOpen Philanthropy Projectから助成金を受け取った[59]。

  • Centre for Effective Altruismは、世界銀行、WHO、国際開発省、Number 10 Downing Streetにアドバイスを提供してきた。

  • 80,000 Hoursの推奨するキャリアリストには、政党政治、政策志向の公務員、シンクタンクなどがあり、テクノロジーリスクの分野で政策や行政に携わりたい人へのアドバイスを提供する専属の社員がいる。

  • Mercy for AnimalsやThe Humane Leagueなど、効果的利他主義のコミュニティのアニマルウェルフェア部門は、大手小売業者やファストフードチェーンにロビー活動を行い、そのサプライチェーン内でケージ飼育された鶏が産んだ卵を使用しないことを誓約させるという、驚くべき成功を収めてきた。

  • また、Future of Humanity InstituteやCentre for the Study of Existential Riskなどの組織は、新しいテクノロジーの開発にかかわる政策に積極的に取り組み、米国政府、英国政府、国連などの組織に助言を行っている。

  • Open Philanthropyプロジェクトは、土地利用改革、刑事司法改革、政治的意思決定の改善、マクロ経済政策などの分野で数多くの助成を行っている[60]。

 広い意味でのシステムの変化を考慮するなら、効果的利他主義のコミュニティの努力のうち、 システムの変化に焦点を当てたものはさらに大きな割合を占めることになる。例えば、存亡リスクに対処するすべての活動が、このカテゴリーに入る。科学研究や科学の改善(臨床試験の事前登録の奨励など)に焦点を当てることも、同じカテゴリーに入る。実験室育ちの肉や植物由来の肉代替品の開発にも焦点が当てられている。

 もちろん、効果的利他主義のコミュニティがみすごしている「システム」的介入があることは十分にあり得る。独裁国家からの天然資源の購入を禁止する国際法を作る運動は、現在の効果的利他主義者のどの活動よりもさらに効果的な活動なのかもしれない。しかし、これは効果的利他主義内内部の論争であって、効果的利他主義それ自体への批判ではない。この考え方が軽視されるのは、効果的利他主義のコミュニティに属する人々の考え方の本性に組み込まれているのだ、と言うこともできる。しかし代替となる仮説が既に存在する。すなわち、そうしたキャンペーンが成功する確率は天文学的に低く、たとえ成功したとしても、法改正は数十年後に起こり、その時には極度の貧困の問題は現在よりもはるかに小さく、深刻でなくなっていることだろう[61]。このことを考えると、また、上記のようなシステムの変化に対する様々なコミットメントを踏まえると、なぜその批判が単に福利を促進する最善の方法についての意見の相違ではなく、効果的利他主義それ自体への批判だと考えなければならないのか理解するのは難しい。

 

5. 結論

本章では、Centre for Effective Altruismの定義の中身を説明し、その定義を選んだ理由を一部説明した。それから私は、効果的利他主義に対するよくある誤解に応答してきた。そうすることで、今後の効果的利他主義をめぐる議論において、どのような反論であれば、効果的利他主義が私たちの道徳的生にほとんどあるいは全くふさわしくないということになるのか、また、どの反論が実は、最大の善を為す方法に関する効果的利他主義内部の論争に過ぎないのかを明らかにする手助けになればと願っている。


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  1. World Bank Group, Poverty and Shared Prosperity: Taking on Inequality 2016, Herndon: World Bank Publications, 2016, ch. 2. 

  2. UNICEF, ‘Levels & Trends in Child Mortality’, September, 2015,

  3. Broome (2012); Nordhaus (2015)

  4. United Nations Department of Economic and Social Affairs (2015).

  5. Davenport (2018).

  6. World Health Organization (2016).

  7.  Norris and Inglehart (2018).

  8.  キャリア選択に応用される効果的利他主義については、www.80000hours.orgを参照せよ。

  9.  www.eaglobal.orgを参照せよ。

  10.  ‘The Giving What We Can Pledge’. https://www.givingwhatwecan.org/pledge で利用可能。

  11. ‘GiveWell’s Impact.’ https://www.givewell.org/about/impact.で利用可能。

  12.  ‘How Can We Accomplish as Much Good as Possible?’. https://www.openphilanthropy.org/で利用可能。

  13.  Bollard (2016); Dewy (2015).

  14.  Singer (2015a); MacAskill (2015a).

  15.  例えば、Berkey (2018); Pummer (2016); Gabriel (2017); MacAskill (2014); McMahan (2016).

  16.  Singer (2015b).

  17.  これらの人たちがいた: Will MacAskill(当時は「Crouch」)、Toby Ord、Nick Beckstead、Michelle Hutchinson、Holly Morgan、Mark Lee、Tom Ash、Matt Wage、Ben Todd、Tom Rowlands、Niel Bowerman、Robby Shade、Matt Gibb、Richard Batty、Sally Murray、Rob Gledhill、そして Andreas Mogensen。

  18.  Karnofsky (2013).

  19.  MacAskill (2015a, pp. 14–15).

  20.  Singer (2015b).

  21.  ‘Introduction to Effective Altruism’ (2016).

  22.  ‘Effective Altruism.’ Wikipedia.

  23.  4番目だけが定義となるべき文法的に正しい形であったが、私はそれぞれを定義として扱うことにする。これらの文章はすべて一般読者に読まれることを意図しているので、「~についてである」とか「~に基づいている」といった具体的な言葉の選び方はあまり重要視していない。

  24.  この定義には、効果的利他主義のコミュニティに属する人々の幅広い行動規範を形成することを目的とした、一連の指導原則が添えられている。これらの原則とは、他者へのコミットメント、科学的思考、公開性openness、真摯さintegrity、そして協調性である。 ‘CEA’s Guiding Principles’、Centre for Effective Altruism、https://www.centreforeffectivealtruism.org/ceas-guiding-principles/ を参照せよ。

  25.  これには以下の団体が含まれる。 Impact Investing、80,000 Hours、Animal Charity Evaluators、Charity Science、Effective Altruism Foundation、Foundational Research Institute、Future of Life Institute、Raising for Effective Giving、The Life You Can Save。そして、以下の個人も含まれている(ただし、それぞれの組織ではない)。GiveWellのElie Hassenfeld、Open Philanthropy ProjectのHolden Karnofsky、Future of Humanity InstituteのToby Ord、プリンストン大学とメルボルン大学のPeter Singer、そしてMachine Intelligence Research InstituteのNate Soares。

  26.  なお、CEAの定義にある「他者に利益を与える」は、文字通りに読むと、厚生主義の見解の一部を除外することになる。例えば、人は善い人生を創造することによって良いことができるが、それは存在しないであろう人々に利益を与えることにはならない、という見解である。この場合、哲学的な正確さは読みやすさのために犠牲にされた。

  27.  McGeoch and Hurford (2017)。サンプルは非ランダムであることに注意せよ。アンケートに答えたい人は全員答えることができ、それはコミュニティ内でできる限り広く宣伝された。そのため、この調査から引き出されたすべての統計は、示唆的ではあるが確定的なものではないと考えるべきである。

  28.  Cundy (2015).

  29.  より重要であるという主張については、Toby Ordによる本編第2章を参照せよ。

  30.  条件付き義務の考え方は、Pummer(2016)によって探求されているが、彼が擁護する主張はこれよりもかなり弱いものである。

  31.  例えば、Pummer (2016), Sinclair (2018), McMahan (2018)を参照せよ。

  32.  Gray (2015).

  33.  Fraser (2017); Bakić (2015); Gabriel (2015); Tumber (2015).

  34.  2017年の効果的利他主義に関する調査では、「あなたが傾倒している道徳哲学があれば教えてください」という質問に対して、52.8%の回答者が「功利主義」を選んだ。さらに、12.6%が「帰結主義(功利主義ではない)」、5.2%が「徳倫理」、3.9%が「義務論」、25.5%が「見なし、またはこれらの用語に馴染みがない」と回答している。ただし、注意点として、回答者がこれらの用語をどの程度理解しているかは不明である。例えば、会話の中で、ある回答者は「功利主義とは、効用関数で表すことができる道徳理論を指す」と考えていることを学んだ。

  35.  功利主義に対する要求の厳しさに対する異論については、‘The Demandingness of Morality: Toward a Reflective Equilibrium’(Berkey 2016)を参照せよ。

  36.  功利主義と制約については、Kagan (1989)を参照せよ。.

  37.  Todd and MacAskill (2017).

  38.  Parfit (1997), Temkin (1993), Hurka (1993)を参照せよ。

  39.  Kagan (1998); Ross (1930).

  40.  Lichtenberg (2015).

  41.  Gabriel (2017).

  42.  McGeoch and Hurford (2017).

  43.  例えば、Animal Charity Evaluators (ACE).

  44. 例えば、the Berkeley Existential Risk Initiative (BERI).

  45.  例えば、Herzog(2016)、Rubenstein(2015)、Earle and Read(2016)、そしてこの立場を支持する私自身の論文として'Replaceability, Career Choice, and Making a Difference'(2014)がある。

  46.  Gabriel (2017)

  47.  Rubenstein (2015).

  48.  ‘Our Mistakes’ 80,000 Hours.

  49.  MacAskill (2015b).

  50.  Hesketh-Rowe (2017).

  51.  Leiter (2015).

  52.  Srinivasan (2015).

  53.  Gabriel (2017).

  54.  Rubenstein (2015). この批判の他の例として、Herzog (2016); Snow (2015); Earl and Read (2016) がある。[Gabriel and McElwee、本編第7章も参照せよ。]

  55. この問題についてのさらなる議論については、Berkey (2018)を参照せよ。

  56. Clough (2015).

  57. さらなる議論については、Wiblin (2015)を参照せよ。

  58. Caplan and Naik (2015, ch. 8).

  59. Center for Electionの役員による投票理論の紹介を参照せよ。Quinn (2018)

  60. Grant Database. Open Philanthropy Project.

  61. 貧困は過去2世紀にわたって劇的に減少しており、この傾向は今後も続くと予想される。Roser and Ortiz-Ospina (2017)を参照せよ。

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