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【試合感想文】 5/27日本ハム3-1楽天:楽天打線ゴロ率63%。独自の進化を遂げる鈴木健矢のしたたか投球術

当方の戦前の予想は大ハズレ

試合前、勝機はある!とみていた。

4月下旬からローテーションに入った相手先発の鈴木健矢は、働きすぎだった。

当初こそ中6日だったが、ポンセや金村尚真が離脱したチーム事情に、「日本の先発投手の登板間隔って長い感じがしません?」という新庄剛志監督の野球観も加わり、ここ最近は中5日、中4日のワーカホリックな起用。そして本戦も中5日での登板だった。しかも今季初の屋外球場での先発である。

前回5/21オリックス戦は3回途中5失点。登板間隔が詰まった中での慣れない調整。身体全体を使って投げるアンダースロー特有の疲労感も顕在化し始めたかな?と想像していたのだ。

今季初対戦の楽天打線は、カード勝ち越しを狙うべく、浅村栄斗以外は左打者8人並べる布陣。

これは鈴木と対戦した打者の左右別成績で、右打者は打率.102/OPS.328と沈黙するいっぽう、左打者は.299/.783と健闘している、そんな傾向に基づいたオーダーだった。

左打者対策を講じたサブマリン

5月月間打率3割超えのフランコを外した大胆な布陣に根拠はあったが、左打者は18打席で14打数2単打4四球、打率.143、現実は鈴木のしたたかな投球術のドツボにハマるかたちになった。

変則右腕と対戦するときの打者の基本はセンターから逆方向へのアプローチである。しかし、本戦の楽天左打者はまるで徹底できなかった。併殺含む二ゴはじつに6本、一ゴも1本。ひっかけたかっこうのゴロ凡打を量産させられた。

そんなわけでゴロ率は62.5%だった。

ふつう、下手投げはフライボール投手が多い。地面すれすれのリリースポイントから浮き上がるかのような独特な軌道を描くため、バットが球の下っ面に入り、ポップフライが増えるのだろう。鈴木もご多分に漏れず。しかし本戦では今季ここまでの数字より20%近く上昇しての62.5%だった。

これには理由があった。

3割近く打たれている対左、「データを見たら、左打者にスライダーが打たれていた」と分析。本戦ではそのスライダーの割合を減らし、真っ直ぐとシンカーを軸に組み立てたのだという。二ゴが多かったのは、「そっちに打たせるイメージでやっていました。狙い通り投げられた」と鈴木。

結局、この日の楽天打線は終始、鈴木の手のひらで踊らされていたと言えそうだ。

この日、鈴木が奪った三振はゼロ。

2019年以降の楽天戦で奪三振ゼロなのに勝利投手に輝いた相手先発は、昨年7/17の田嶋大樹(5回8安打2失点)と、本戦の鈴木の2例しかない。

謎の球速減

鈴木といえば、Twitterに再度ツイートしたけど、独特の進化をみせている。

ストレートを始め、持ち球全てが昨年比で4~5キロ球速ダウンしているのだ。ストレートに関して言えば、本戦123.3キロだった。

今やストレートの平均球速が148キロに突入してきた高速化の時代である。そのなかでの123.3キロ。この数字ははアンダースローの中でも遅い部類で、4/30に対戦した西武の與座海人は128.9キロ、楽天に在籍した牧田和久も128.8キロだった。

それなのに、打者は対応できない。楽天に限らずパリーグ他球団の打者は打ちあぐねてしまうのだ。

もちろん、ピッチングは決してスピードだけで決まるものではないが、それでもである。ここまで逆張りも徹底すると、球界屈指の個性に昇華していくのかもしれない。独自の進化に今後も注目だ。

試合展開

日本ハム=1番・ハンソン(指)、2番・マルティネス(一)、3番・松本剛(左)、4番・野村(三)、5番・万波(右)、6番・水野(遊)、7番・清水(捕)、8番・アルカンタラ(中)、9番・福田(二)、先発・鈴木(右投)

楽天=1番・山﨑剛(遊)、2番・小深田(二)、3番・辰己(中)、4番・浅村(指)、5番・島内(左)、6番・鈴木大(一)、7番・小郷(右)、8番・黒川(三)、9番・安田(捕)、先発・松井友(右投)

両軍のスタメン

四者四様の怠慢プレー

お次のトピックは、2点を追う3回2死2,1塁、浅村の左安で発生した、2塁走者・小深田大翔の生還認められずに無得点の前代未聞劇について、やっぱり言及せずにはいられない。

全く同じボーンヘッドが、先日セリーグで発生したばかりだった。

5/18阪神vs中日戦(バンテリンドーム)。3点ビハインドの8回2死2,1塁、左翼線を襲った左安のときだった。2塁走者はホームへ突入、1塁走者も3塁を狙ったシーン。しかし、阪神の左翼手ノイジーの好守好返球もあり、三進目指した1塁走者は3塁タッチアウト、2塁走者の石川昂弥は本塁手前で走りを緩めてしまったことでホームインできずというプレーがあったばかり。試合後SNSで話題もちきりだった。

翌日・・・(続く)

...続きは『Shibakawaの楽天イーグルス観戦記2023』でどうぞ。

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2018年9月のGM就任から始まった石井体制も5年目へ突入。今年はGM職を外れて監督業に専念する総決算・集大成の戦いに。監督も「狙うのは優勝ですね。優勝以外を掴まされてもハズレ」と不退転の決意を示す今シーズンを試合感想文やコラムなどで綴ります。あなたの野球観戦の「良き伴走者」を目指して。月10回以上を所収。ただいま新規読者さん募集中!

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