灼熱の小牧山城3

麓の神社に賽銭投げていざ登城。
南から真っ直ぐに上へ段が伸びている。歴史案内板によればここ大手道は真っ直ぐに伸びていること自体が珍しい作りだという。確かに敵の侵入を防ぐにはくねくねさせた方が良い。木々の向こうの天守閣目指して一歩を踏み出す。クマゼミがジュワジュワ鳴いている。暑い。迸る汗。襟に巻いた日本手拭いは既に汗で湿っている。五段くらい上がったところで暑さでぼーっとする。150mと案内板にあったがその道のりが長い。そしてこの石段いや、砂利段か。段といっても右、左、右、左と一歩ずつ上がる階段ではない。一段一段の感覚が長い。リズムが掴みにくい。疲れが増す。左右の信長、家康の幟に励まされながら、上を目指す。「小牧・長久手の戦い 徳川家康本陣の地」と小豆色で書かれ、金色の葵の御紋に白の幟をみると何故か「俺も戦うぞ」と気合が入った。だが、真夏の昼下がり、私ひとりだ。こんな暑い日に決してメジャーとはいえない、駐車場も整備されていないこの城を登る者など余程の城オタクか歴史オタクだろうか。

なんとか石段を登り切りくねくねと山道を登ってゆくと眼前に発掘調査中の現場があった。今なお発掘しているのだ。上を仰ぎ見ると空が広がっている。巨大な花崗岩の石塁の上方に天守閣が見えた。そこが天守閣を模した小牧山歴史館である。やっとのことで辿り着いた時、Tシャツは汗でびしょびしょだった。トレッキングのつもりだったが私に撮っては登山だ。小牧・長久手の戦いに勝った。元気のいい職員と思しきおじさんが名古屋弁訛りで「れきしるこまき行きますか」と聞いてくる。ここの入館券で「れきしるこまき」も入れるという。それは下山に寄ることにした。子供づれの親子がいたので少しほっとする。中に入ると冷房が効いている。さらにほっとする。

四階立ての資料館、こういうところに来ると二時間くらいかけて吟味するのだが暑さで頭がぼーっとする。それにこの後に金華山岐阜城に行く予定だ。展示された説明文をスマホで写真をパシャパシャ撮って足早に展望台に登った。犬山城らしき山が北に見える。北西に見えるのは岐阜城であろうか。とにかく見晴らしの良いところに来ると気持ちがいい。犬山城のように外に向かって傾斜する回廊ではないので恐怖心もない。織田信長が築き、徳川家康がさらに強固にしたこの城の今後の発掘調査結果を待ちたい。ほとんど頭に入らずに館を出た。また元気なおじさんが「れきしるこまき」の生き方を丁寧に説明してくれた。私は彼のいう通りの道順で下山した。つづく


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