八百津町の夏9

山道の左回りカーブ右回りカーブS字カーブ、ヘアピンカーブをくねくね回って降りて行く。朝日に照らされた上代田棚田のところに車を停めた。入り口の石碑の元号は江戸時代のものだ。棚田の上段へ舗装された道を歩いて行き左側を見ると「マイ棚田」だろうか。棚田の一つを所有しているか、借りているのだろう。名前入りの表札が立っていた。地元自治体もこの棚田を残すべく色々とアイディアを模索しているのだろう。借りた人は子供に稲の育つところを体験させたい大人だろうか。町の有力者の付き合いで持たされるハメになった名古屋あたりの小金持ちだろうか、などとつまらないことを考えていると、トンボがチリチリ羽根を震わせ静止飛行をしたりして私のそばについてくる。やはりトンボは1匹や2匹が可愛い。大群はごめんだ。人間も同じかもしれない。集団になると個人とは別の集団の人格が形成される。その彼らも、例外はのぞいて、一人一人と接するといい人なのに、組織に属すると組織の論理が働く。そして各々立場で行動する様になる。序列もできる。人間にうまれた以上「人は人の上に人をつくり、人の下に人をつくる」そして途端に嫌な人になる。これはホモ・サピエンスが集団で強さを発揮する生き物なのだから仕方のないことなのだと、とんぼに話しかけても仕方がない。

閑話休題。
やっとコーヒーにありつけたのは街の中心街はずれのファミリーマートだった。駐車場が広い。工事現場に向かうトラックの運転手やら建設現場作業員、夏休みの片田舎で暇を持て余し、自転車でたむろしている男子高校生。駐車場は広いし、ちょっとした息抜きにはやはりコンビニはその名の如く便利である。トイレも掃除が行き届いている。昨日も気になっていたが、「ハヤブサプロジェクト」と銘打った煎餅が入り口脇に積まれてある。売れていない。少しはこの街に貢献しようと思ったが、思いとどまり箱裏の製造表示を見るとここ八百津町で作られているらしい。安く上がるだろうと直接行ってみる事にした。私はその煎餅屋さんに車を走らせた。ここで思わぬ収穫を得る事になるとは夢にも思わなかった。つづく

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