へなちょこトレーダー物語


このnoteはタクという初心者トレードが、何度も何度も相場に
痛い目にあわされながら、あきらめず、成長していく物語です。

投資に必要なエッセンス、マインドについての考えを盛り込みました。
物語なので、読んでいるだけで自然に投資について学べる事を
目的としています。

投資の本はお堅い本が多いのですが、このnoteは気軽に読めます。
投資で痛い目にあった人には共感できるシーンが多くあると思います。

でも投資で必要だと思われる部分はしっかりと書いてあります。

FXなどで勝てている人は読む必要はありません。
負けて苦しんでいる、でもあきらめられない人達がなにかの
ヒントがあればいいなと思いnoteにしました。


バブル崩壊後の世界。冒険なんてしない。仕事があるだけまし・・・だったが。

僕の名前はタク。
三流の大学を出て、地元の中小企業に働くサラリーマンだ。
かれこれ3年勤めている。

スーパーマーケットの社員だ。
バイトの管理とか、テナントの管理、あと特売日やらなにやら企画
を立てたりする。

大学出たのにスーパーの店員かよと友達によく言われる。
僕の大学はそんなに有名ではない。というか全然有名ではない。
高校の推薦で面接だけで入れた。
今となっては、受験勉強して、もっといい大学に入ればよかった。
と思っている。
もう勉強したくなかったんだよね。

しかも卒業するときは就職氷河期真っ只中。
これも内定もらえれば何でも良かった。
もう就職活動したくなかったんだよね。

まあ、そんなんでスーパーで勤めているけど、特に楽しくはない。

給料は激安だ。税金、保険を引くと20万いかない。

実家ぐらしで、家賃は特にいらない。月々3万円だけ家にいれている。
だから特にお金も使わないし、貯金もできている。
働けるだけでありがたい時代だ。

でも楽しくはないよ。もちろん。

「タクさー、年金高くね?」

昼休み、喫煙室で同僚のサトルと二人たばこをふかしていた。

「高いよ!ホントに。天引きじゃなきゃ払わんよ」

「だよね。しかも、おれらが年とってももらえないらしいじゃん」

「えっ、もらえないの!」

「おまえ、ほんと物しらねーな」

そういうと、サトルは得意げに話し始めた。

国の借金がたくさんあること。(サトルはたくさんとだけ言った)

老人がやたら増えていくこと。

子供が少なくなっていること。

「だから、おれらはもらえないんだよ、もう払いたくないよな」

僕はTVではお笑い番組しか見ないので本当に無知であった。

(もっと貯金するしかないか・・・)

仕事にもどっても、サトルの言ったことが気になる。

なにか急に不安になる。

両親は健在だが、若くはない。

両親になにかあればたちまち貧困に陥る。

(転職しようかな。ここにいても全然給料上がんないし…)

でも、何かやりたい仕事があるわけではないし・・・
まだまだ先の話だし、まあいいか。

タクはいつものように面倒くさいこと考えないようにした。

世間はバブル崩壊後の後始末に追われている。
日経平均は一万円を割り、悲観の空気が支配していた。
皆が暗い顔をしていた。

(やっぱ転職なんてできない。再就職なんて絶対無理)

のらりくらり働いていればいい。給料もらえればいい。
ボーナスもあるし。

ところがその年ボーナスが全額カットされた・・・

ボーナスカット! 倒産!

「ふざけんじゃねーよ!」

朝からサトルの鼻息は荒い。

もちろんタクも同じ気持ちだった。

「ただでさえ、安月給なのに、ボーナスも
 なしなんて、あり得ないよ!」
「やってられねーよな」
喫煙室で朝一のタバコをふかしながら
タクと同僚のサトルは愚痴っていた。

「でもさ、そんなに会社やばいの?
なんか知らないの、サトル?」
「いや、なんにも聞いてないな」

しばらく2人は黙ってタバコを吸った。

(そういえば最近社長見ないな)

タクの心に不安が影を落とす。

(大丈夫だよ)

自分に言い聞かせる。

もう履歴書は書きたくない。
慣れ親しんだ場所でのんびり生きたい。
タクは祈った。

始業の音楽がなる。
2人はタバコを揉み消して、店に戻った。

次の月もちゃんと給料は出た。
少し心配していたのでほっと一安心。

一時的に落ち込んだだけだったんだ、
タクはそう思い、
次のボーナスは出るだろうと楽観的に考えた。

だが次の月、25日給料日。
いつも通り出勤してみると、店の前に
人だかりができていた。

「どうしたの?」
人だかりで見つけたサトルに声をかける。
「社長がやりやがった・・・」
「えっ」
「夜逃げしたよ、倒産だよ。うちの会社」

正面の自動ドアに貼られた「債権者様へ」の紙。
テレビでしか見たことがなかったが、社長の字だった。

様々な情報が錯綜していたが、どうやら社長は
投資で失敗したらしかった。

投資用のワンルームマンションが五部屋、社長が買った時は
一億円近かった。それが今や半額以下・・・
融資を受け借金してそれらを買ったらしい。
その頃は土地の値段は絶対に下がらない。と言われていた。
社長ばかりが悪いわけでない。日本中が浮かれていたから。

そんなことより、明日からどうするんだ。
いきなり無職だ・・・。

とりあえず給料は八割払われた。給料債権は結構優先される。

失業保険もすぐ出る。
半年は節約すれば生活できる。
その間になんとか次の仕事を見つけなければ。

10社面接したが全滅した。

選り好みしているわけでない。

ハローワークはいつも超満員だ。
パソコンで検索するのでさえ順番待ちだ。

求人も少ない。ガテン系の仕事さえなかなかない。有名大学出てるような奴らでさえ、
職を求めてハローワークに来ているんだ。
のらりくらり生きてきた僕なんか、どこも採用してくれない…。

徐々にハローワークから足が遠のく。
(あと、半年は失業保険もあるし、なんとか最後の1か月位で見つけよう。)
開き直ると気分が少し晴れた。
(今日は天気もいいし、競艇でも行こう。)
まだ昼前だ。4レースくらいからやれそうだ。

ウキウキしながらタクは多摩川競艇場に向かう。それから1週間通った。

競艇がない日は、漫画喫茶で過ごす。
なるべく親と顔を合わせたくない。
顔を合わせると決まって
「仕事は見つかったの?」
だからだ。

飯はだいたい吉野家か松屋で済ます。
節約だ。
でも、タバコはやめられない。
毎日19本吸う。一本余らせている。
これも節約術だ。とタクは思っていた。

こんな生活を続けいれば当然お金はなくなって行く。

(こんな節約しているのに、なんで…)

やはり仕事を見つけよう。

認定日以外の日に久しぶりにハローワークに
行く。

履歴書を出す。1週間後、面接。さらに1週間後、不採用の連絡。1週間落ち込む。

また、1週間かけて、会社探し。1週間かけて、
履歴書を書く。その時多摩川競艇場でレースが6日間行われるので行く。履歴書出す。
不採用通知が来るまで1週間…。

こんな生活ではあっという間に、失業保険期間は終了してしまう。

のんびり屋のタクもさすがに焦った。
(とりあえずバイトでいいから働こう)

警備員の仕事を見つけた。日給8000円。

長い事続けるはめになる…。

僕は金持ちになる!あの本に出会った!

警備の仕事は思ったより楽でなかった。

道路の工事現場での誘導の仕事だったが、

夏は暑い!

日陰がないから、死にそうになる。

冬は寒い!

じっとしているから、芯まで冷えてくる。

これで日給8000円は安い。

タクは最初こそ毎日でていたが、だんだん休みが
多くなってきた。いまでは3日に一回くらい。

当然給料も少ない。

平均6、7万円というところ。10万超えたのは初月だけ。
実家暮らしだからよかったものの、贅沢はなにもできない。

家に入れていた3万円ももうだいぶ入れてない。
親はなにも言わないが、なにか言いたそうな顔をいつも
している。

(ああ 金がほしい。お金があれば、この家を出て自由に
 やれるのに。お金があれば、警備員なんてすぐやめてやるのに。
 大卒のやる仕事じゃないよ。)

運が悪い。

タクはため息をつく。

運が悪い、これが最近のタクの口癖になっていた。

のらりくらりの生活。
キツイ仕事。一日出ては休む。休みの日は家で
ゴロゴロ。テレビをみるか、寝ているか。
金がないから出かけられない。

まずしい食事。親の顔を見たくないから
いつもカップラーメンだ。
たまに吉野家。ごちそうだ。

一年続ける。
さすがのタクもうんざりしてきた。
(この生活をやめたい。まっとうな生活に戻りたい)

なんどかハローワークにもいったが、これといった仕事はない。

警備の仕事を続けるしかない。

警備の仕事も一年以上やっているので少しずつ顔見知りの
人も出来てくる。

太郎さんという、タクより3つ年上の人とよくしゃべるように
なった。
太郎さんは小太りで、丸い眼鏡をかけていた。
真面目な人間だったが、どこかどんくさい感じ。

タクは内心バカにしていたが、他にしゃべる人もなく
太郎さんにいつも愚痴を言っていた。

基本的にタクが一方的にしゃべることが多く、
太郎さんはうんうんと聞いているばかりだった。

その日は太郎さんと同じ現場だった。

「太郎さん、おはようございまーす。」
タクが挨拶する。
「あっ タク君おはよう。」

カラーコーンやら、バーやらを用意して、
職人さん達がくるのを待っていた。

「タク君
 実は俺、今日でこの仕事やめるんだ」

「えっ!まじすか。太郎さん」

「うん」

「なんでですか。なんか仕事みつけたんすか」

「いや、そうではないけど・・」

「じゃ、なんでですか?」

「タク君、俺ねこの仕事で100万貯めたんだ。
 このお金を元手に投資でやっていくって決めたんだ」

「投資ですか・・・株とか為替なんかですか?」

「うん。お金を貯めながら、投資の勉強をしてたんだ」

「投資って・・。100万貯めたのはすげーすけど
 投資で食っていけるんですか。」

「勝算はあるよ。自信もある。めちゃくちゃ勉強したし。」

「投資なんかギャンブルじゃないですか。
 それよりも就職したほうがいいんじゃないですか。」

「タク君、俺らみたいな、学歴もない、職歴もない、
 その日暮らしのプータローがお金を得るには
 投資しかないんだよ。
 なんにもしなければ、安い給料でこき使われて、
 ずっと搾取されていくんだよ。
 
 車も買えない、家も買えない、結婚もできない。
 一生ね。」

 その時トラックに乗った職人さんたちが到着した。

 仕事中も太郎が言ったことがずっと気になる。

 その日暮らしていければよかった。
 何にも考えたくなかったし。
   
 でも太郎さんの言う通りだ。
 このままだと僕は一生貧乏なままだ・・・

 五時になり、仕事がおわった。

 「太郎さん・・・」
 
 「あっ タク君世話になったね。」

 「太郎さん、投資って僕でもできますかね?」

 「もちろんだよ。でもどの世界でも成功するのは
  一握りの人達だ。甘い世界じゃないと思っている。」

 「僕もう貧乏いやなんです。」
 
 「それはもちろんよく分かっているよ。
  でも環境を変えるには何かを変えていかなければ
  ずっと同じままだよ。

  そうだ。」

  そう言って太郎さんはカバンから一冊の本を
  取り出し、タクに渡した。

  「金持ち父さん、貧乏父さん」だった!

  「タク君、この本を読むといいよ。
   俺はこの本を読んで投資家になろうと
   決めたんだ。」

  太郎と別れ、帰りの電車の中でさっきもらった本を
  読む。

  「朝起きて仕事に行き、請求書を払う・・
   そしてまた朝起きて仕事に行き請求書を支払う・・・」

  これは僕のことだ そうタクは思った・・・

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