"僕の起業の物語 僕の職場は漫画喫茶?

前回は↓

電話はなかなか掛かってこなかった。

自信満々だった僕も少し不安になる。
(満額は無理かな?)
根回しもしているし、3分の2、いや半額でも独立しよう。
でも、その後がきつくなるが・・・。

二週間が過ぎた頃ようやく電話が来る。

テレクラ並に電話に出る。
「社長、今回満額融資できました。500万円ご融資させていただきます。」

第一関門突破!ガッツポーズが自然と出る。

「ありがとうございます。!」
心からお礼を言って電話を切る。

(よーし、やるぞ!!)

それからは忙しかった。
退社の意思を伝える。
すんなり聞いてもらえる。イエスマンではない僕のことが
邪魔だったのだろう。特にもめることもなかった。

退社までの一か月間は通常の勤務をこなしたあと、
起業準備。道具そろえたり、書類つくったり・・・

忙しかったが楽しい日々だ。
もう人の下で働くことはないのだから。
僕が社長なのだ。

会社を立ち上げるにあたって、決めた事がある。
ただ金儲けする会社にはしたくなかった。
今までの経験から理不尽に思ったり、無駄だと思った事はやらない。

かなり傲慢な方針だった。

・お歳暮・お中元は送らない。意味がわからない。
・嫌な仕事は断る。予算が合わない仕事はやらない。
・現在社員は一人だったが、従業員にはできるだけ高給を支払う。
 安く使って利益を上げるやり方はしない。
・基本残業なし。早く家に帰る。子供と遊ぶ。
・接待しない。

など、だ。
 
理想に満ちた経営方針だが、出来ないわけではない。いや、やるんだ
と息巻いてた。

今あげた項目はほとんど守れている。
守れていないのは、早く帰る だけだ。

やはり、酒を付き合わなくても、いい仕事をしていれば仕事は
発注してもらえる。

対人関係、特に取引先との関係で僕が悟った事がある。
「絶対に縦の関係にはならないこと」 だ
大企業の社長でも、カリスマ経営者でも、皆同じだ。
尊敬したり、勉強になることはもちろんある。が、基本同じ経営者だ。
僕だって従業員の生活を守る義務がある。
社員数や会社の規模は関係ない。一対一の人間として接することだ。

だから接待はしない。仕事をもらう。仕事をやる。という上下の
関係、つまり縦の関係にはならない。
だから堅苦しい敬語も使わない。

横の関係として、仕事仲間として付き合う。

それで怒る人ならそれまでだ。縁をきるだけ。

こうした姿勢を気に入ってくれる人がほとんどだ。
結構フランクに付き合っていけている。

この横の関係が ”人脈” だと思う。
名刺交換しただけが人脈ではないのだ。

そしてサラリーマンとしての最終日がやってきた。
引継ぎも終わり心置きなく退社した。
仕事を回すよ、と社長は言ってくれた。
でもそれから一回も連絡はなかった。

ライバルになったのだから。当たり前だ。

そこは僕が甘かった。
いくらかは依頼があるのでは、と見込んでいたからだ。

さて開業初日。
不安な朝だった。いまでも、その感覚を覚えている。
押しつぶされそうな不安・・・
拠り所がないのだ。いままでは会社が仕事を取ってきて、お給料をくれた。
これからは自分が動かなければ収入はゼロだ・・・
胸がドキドキする。誰かに弱音を吐きたくなる。

「いってきます」

もちろん何もいわず家を出た。不安なのはきっと奥さんも一緒だろうから。
幸い仕事が入っていた。本当に良かった。初日から収入があるのだ。
その日は仕事に没頭した。不安を振り払うかのように。

その次の日も仕事だ。

でもそのあとの予定がない・・・。

家を出た後、漫画喫茶にいく。他に行くところがなかった。
初めはいい骨休めと思っていたが3日も4日も漫画喫茶にいると
焦りがでてくる。
(どうしよう・・・)
漫画なんて読めなかった。

ただ電話を眺めていた。いくら眺めていても電話は鳴らない。

不安が波のように襲ってくる。

耐えるしかなかった。誰も頼ることはできない。
僕が社長なのだから・・・

耐えるしかなかった。
これが独立するということなのだから・・・

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