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影のひとりだち


01 こいのぼり


昔は空を泳いでいたけれど
今は額の中に飼われてる。

利便性や簡易性が重要視される
世界になったからだろうか。

どうやら、「こいのぼり」は
住む場所を変えたらしい。

小さなころは
毎年、祖父が大きな
3びきの「こいのぼり」を
あげてくれていた。

それはそれは雄大で
こどもの日が楽しみだった。

「こいのぼり」が空を泳ぐのを
見なくなってどのくらい経つだろう。

いつからか、ぼくの中から
こどもの日もなくなって...

まぁそれだけ大人になった
ということかもしれない。

2年前の今日。


ひさかたぶりに
空を泳ぐ「こいのぼり」をみて
ハッとしたのを思いだした。

空高く、川を横断するようにならんだ
大量の「こいのぼり」の影が水面にうつり
まるで大きな魚が川を泳いでいるかの
ように見えたのだ。


生きている。
ぼくは思った。


「こいのぼり」に命を与えたのは風と水。
そして影である。

ニセモノがホンモノに化けた
瞬間を目のあたりにしたような

そんな衝撃的なできごとだった。

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02 鷹のカイト


地方では、よくみる光景なのだが
農家が使う害鳥よけの「鷹のカイト」は
カラスにとって脅威である。

この「鷹のカイト」に命を吹き込んでいるのは
風そして空。

でも「鷹のカイト」の場合
烏はだませるが人間はだませない。


そもそも「鷹のカイト」が
人間をだます必要なんてないのだが。


あのとき、どうしてぼくが
「こいのぼり」を生きていると感じたのか。


気になって考えたくなったのだ。


そして


もしも「鷹のカイト」が
もっと高いところに飛んでいて

「鷹のカイト」とその影が

「こいのぼり」とその影と

同じくらいの関係で

離れていたとしたら

影はひとりだちして

きっとボクはホンモノの鷹と
間違うだろうな。


だなんて


そんな結論に到りました。

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本文中

ニセモノという
表現で「こいのぼり」や「鷹のカイト」を
説明したけれど

これはあくまで
人工のモノという意味で使いました。

《 ニセモノ が ホンモノ 》に化けた

というのは

《 つくりモノ が 生きモノ 》に化けた

ということ。

「こいのぼり」や「カイト」は、
日本が誇る伝統工芸。

まぎれもない本物です。

ぼくは昔から
これらの大ファンです。

ドライブをしていて
「こいのぼり」や「カイト」があがっているのを見ると、いまでも小さかったころのワクワクを思いだします。

コメント欄に
「鷹のカイト」の動画のリンクを
はっておきます。

よろしければ。



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