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まず、土になる! 【イベントレポート】

学会の合間の夜、下記のイベントに参加しました。

ここんところ、よく介護系のイベントに参加してますが、日本語教育と介護(福祉)って、根っこの部分でつながっていると感じており、また、他業種の人と話し合うことで、新たな気づきが生まれることが多く、交流を楽しんでいます。

で、今回のゲストは、影山知明さん。
国分寺のクルミドコーヒーとか、哲学カフェとか、地域通貨とか、なんだかおもしろそうなこと、いっぱいやっていて、これはぜひ、話を伺いたいと楽しみにしていました。

クルミドコーヒーのWebサイトは下記。

この週末2日連チャンの学会の合間のイベントで、頭の中が、ぐわんぐわんしており、ちょっと、不安も感じながらの参加でした。

しかし!参加してよかった!!

学会の怒涛の主張に圧倒されながら、何もできていない自分にちょっと落ち込みながらの参加でした。が、影山さんの一言一言が、心に刺さる。
その言葉を忘れないうちに、書き留めておこうと、学会終了後、この文章を書き始めた次第です。


ここからは、当日の私のメモを見ながら、書き起こしてみます。(今回は、ちょっとライトな感じです)

きれいごとも、徹底してやれば、結果はついてくる

オンラインイベントでは、スライドや動画が当たり前、という世界で、影山さんは、スライドは一切使わず、まっすぐ画面を見ながら話をします。スピーカービューにしていたら、画面越しに、私に向けて話かけられているようでした。

経営コンサルに、ベンチャーキャピタルという資本主義経済真っ只中で活躍してきた方がなぜ、カフェやシェアハウス、地域づくりのような生き方を生業にしようと思ったのか?

影山さんは、まず、「種」の話から始めました。

私たちは、何か事業や活動を始めるとき、周りの環境分析から始めます。そして、その事業にニーズがあるのか、競合相手はいるのか、などを考えながら、環境にフィットするものを考えがちです。しかし、そうやって環境に合わせて始めたものは、「世界観を作るのが難しい」とおっしゃいます。薄っぺらいものになってしまう。

しかし、カフェを作るプロセスの中で、
あなたの中に、種のあることをやりなさい
と言われたような気がしたと…

この話を聞き、影山さんの中の「種」がクルミドコーヒーの世界観を作っているのだと感じました。

この感覚は、私もよく理解できます。
私は、だいぶ年をとってから大学院に行ったのですが、その大学院で、自分の中の「種」と呼べるものを探し当てたように思います。

しかし、この「種」。何だかわかっていても、なかなかそれを育てるのは難しい。

今日の学会だって、共生社会を作るにはどうすればいいのか、国籍や言語の壁を超えてみんなが幸せに暮らすにはどうすればいいのか、そんなことを真剣に考えながら、研究したり、実践したり… そんな研究者や実践者の話ばかりでした。納得しながらも、何もできていない自分を省みて、押し潰されそうになります。

そんな気持ちのとき、影山さんは、こうおっしゃいました。

「今日話すことは、理想ばかりのように聞こえるかもしれません。でも、きれいごとも、徹底してやれば、結果はついてくると思っています

「徹底してやれば、結果はついてくる」
やってるつもりなんだけどなあ。影山さんと私は、何が違うんだろう?

ちょっと、逃げ腰になって、あきらめそうになっている自分にとって、今日の一つ目のパワーワードでした。

まず、土になる。

ここからは、後半の話についてまとめます。

クルミドカフェは、木曜日は定休日だそうです。
しかし、定休日と言っても、休むのではないそうです。この日にカフェの従業員が全員、集まって話をするのだそうです。12年間で600回(と確かおっしゃっていた)話をすることによって、軋轢を解消していくのだと。話し合いがエンジンになっているということでした。

それだけ話し合ってわかった話し合いのコツ。それは、

1. 話すことより、聴くこと
2. 違いを楽しむこと

自分が思っていることを、的確に「ことば」にできる人というのは少ない。そのうまく「ことば」にならない言葉尻を捉えて、批判するのではなく、まず聴く、ということが必要なのではないかとおっしゃいます。
話を聴く人、つまり、受け手が必要だと。

この話すときの技術として指摘した2点。画面越しに握手したいと思いました。
なぜならこれは、以前、運営していた日本語学校の言語目標と重なると思ったからです。

日本語学校では、以下を目標にしていました。

1. 自分の考えをわかりやすく伝えることができる
2. 相手の考えを丁寧に聴くことができる
3. 相手の考えや立場の違いを理解することができる
4. 意見の違いを理解した上で、調整することができる

「聴く」ということのパワフルさは、よく理解しているつもりでした。
なのに、最近は、「何かしなきゃ」「なんとかしなきゃ」と焦っていて、もしかしたら、この「聴く」ということをなおざりにしていたかもしれないなーと思いあたりました。

人がイライラしたり、不安定になったり…
なぜ、こう感じるのか?
それは、報われないという気持ちを受け止めてくれる「受け手」がいない、「受ける文化がない」ということが原因なのではないかと、影山さんは指摘します。


種が発芽するためには、まず、「土」が必要です。
「土」とは、「受けとめてくれる人」だとも指摘します。

受けて欲しかったら、「まず、自分が土になれ!」と。
今日、2つ目のパワーワードです。

「土」となるためのカフェ。シェアハウスや出版事業、地域通貨… 考えてみると、やっている事業には、通底した共通点があります。これが、「徹底してやる」ということなのだと理解しました。


地域には、いろんな人が暮らしています。
それぞれがいろんな思いを持って暮らしていて、面倒くさいなーと思っても関わらなければならないこともたくさんあります。
なんで、あの人、理解してくれないんだろう?と思うこともあります。
自分のやろうと思っている理念のために、人を手段にしてしまうことも、、、あったと思います。

でも、自分は、どこまで相手の気持ちを受け止めていたのか?
相手を生かすための「土」になれていたのか?


そんなことを考えながら、落ち葉で埋もれた土を踏みしめ、木を眺めながら、学会疲れの頭を癒すために、山の中を歩いてきました。よく考えてみたら、今まで、花や木は、よく眺めていたけど、土は見てなかったなー。そして、改めて見ると、こんな山の中なのに、アスファルトで覆われた地面がなんと多いことか。

最近、なんだかうまくいかないことが多く、気分が滅入っていましたが、もう少し、心を落ち着けて、まず、土になることから始めてみようと思いました。

ステキな時間を共有できたことに感謝です。
企画してくれた皆さん、話を聴いてくれた皆さん、本当にありがとう。

共感していただけてうれしいです。未来の言語教育のために、何ができるかを考え、行動していきたいと思います。ありがとうございます!