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仮面をつけた人

人には2つの状態があると思う。仮面をつけた状態か、子供のように無垢な状態かである。
子供のように無垢な状態であることを保った大人は少ない。たいてい仮面をつけている。というよりも、子供は成長の過程で必ず仮面をつける。社会に属する中で仮面をつける。一方で、大人で仮面をつけてない人がいる。大人で仮面をつけてないと、バランスの取れた性格となる。論理的に考える冷静な一面も持つし、誰かに共感したり、絵画などを見て感動することもある。理論的でもあるし、感情的でもある。また、ひとりで何かを生み出したり、創作したりする。他にも何事にも意欲的で、エネルギッシュな一面も持つ。内向的でも外交的である。さまざまな性格を持ち合わせて、俯瞰的である。そして、深い洞察を得る。強いて言えば、個性がないような状態となる。

この状態は子供では行きつかない。子供の場合、生まれた時の物静かであったり、何かと動き回るといった性格をもち、偏りがある。しかし、そんな偏りも周囲の人と関わる中で、様々なことを経験する中で、色々な性格を有していく。仮面をつける。例えば、ふとしたことをして、誰かに感謝されたとるす。ありがとうと言われる。感謝されると、気持ちがいい。相手が笑顔になっていることが嬉しい。笑顔が自分に向けられていることが嬉しい。再び同じようなことをした時に、ありがとうと言われる。嬉しい。高揚感がある。こうして、人の助けになりたいと思うようになる。一方で、これをしたら喜ぶかな?と期待して行動すると、期待通りにならないことがある。たまたま感謝されない時がある。すると、期待が裏切られるので、寂しい気持ちになる。傷つく。感情に支配されると、相手をコントロール、支配するようになる。最初はエゴなくやったことが、経験とともにエゴが出てくる。気持ちよくなりたくて、それに執着する。

誰かに怒られたとする。相手が少し余裕がなくて冷酷な態度をとったり、不機嫌な態度をとったりする。そういった時は傷つく。相手が仕事が忙しかった、悲しいことがあったと知っていた場合であっても、心は揺さぶられる。何度も何度も同じ態度をとられる場合は、脳が慣れてくるので、心は揺さぶられなくなる。

仮面をつけた状態は誰でもなる。脳が正常に機能しているとも言える。経験から学習し、いいと思った状態を続けようとする。これ以上傷つかないように行動する。動物だってそうである。えらいね、いいこだったねと撫でて褒めたりすると、ご機嫌になる。しかし、もっと褒めてくれないの?とまた同じことをしてこちらの機嫌を取ろうとしてくる。また、怒られると、ふてくされてシュンとどこか元気がなくなったりするし、一見気にしていない、つまり寄ってこない状態になったと思ったら、時間の経過と共にデレデレしてきたりする。甘える。

こうした仮面をつけた状態、過去や未来に囚われたりしないための初めの一歩は、ひとりになることである。ひとりになることは、論理的思考能力を高める。ひとりで試行錯誤すると、論理的になる。多くの複雑な事象を理解するために、目的ごとに小分けにして、階層化して、つなぎ合わせる。整理する。体系化させる。そういった一連の作業は、一歩引いて物事を把握することに役立つ。人との関わりでも相手の状態を客観視して、一歩引いて観察する。俯瞰している場合は、相手が搾取してきたとしても、大きな状態の中の一つとして認識するので、心は揺さぶられない。

私はリケジョの30代研究開発者であるが、こういった人にたくさん出会ってきた。子供のように無垢で、いつも何かに目をきらきらさせている。性格はバランス良く、社交的でもあるし、内向的でもある。人のことに気を配ったりするが、支配しようとしたり、強要したりするようばこともない。言ってみれば、人に対して無頓着である。しかし、論理的思考ができても、仮面をつけている人はたくさんいる。何かに囚われがある。そういった人に足りないことは、休息することだ。頭も身体も空っぽにすることである。すると、これまではこうしなければいけない、ああした方がいいと考えていたことを手放す。自分は大丈夫と思えるようになる。理詰めで根拠を積み立てて自分は大丈夫と思うことではない。根拠はないけれども、大丈夫と思えるようにするなる。このためには、頭も身体も空っぽにするしかない。空っぽな状態にすると、やる気がみるみる湧いてくる。それまで考えてた、これがベストでしょーと思っていたこととは違うことを始める。これまでベストと思っていたことは、何かの執着からのベストである。この世界で正常に対応してきた、その時なりに最善の選択を取ってきたベストである。避けがたい困難を経験して、その中でその時の自分が取れる最善の選択である。限られた世界の中で、自分の身体が反応するままに、時には色々と調べたり、聞いたり、見聞を深めたり、根拠立てて考えたベストである。

仮面をつけた状態には誰もがなる。成長の過程で誰もがつける。しかし、目の前のことに対応してきた結果、仮面をつけたままになっている。

仮面は誰にでも外せる。しかし、それができる、できないを知らないと、仮面を外すことに大変な時間がかかる。人によっては、おじいちゃん、おばあちゃんになっても仮面をつけている人がいる。一般には個性と言ったりする。その人らしさと言ったりする。しかし、仮面をつけていると窮屈である。不機嫌となり、どこか不安である。日常は平坦のままであるし、どこかワクワクしない。仮面を外すと、それまでは予想していなかった世界に自分を運んでいく。あ、これがやってみたいといった興味で行動し、時間もお金も心の余裕も出てくる。どんな自分にもなれる。例えるならば、ピアニストで、植物学者で、パイロットで、映画監督で、旅人でもあるといった人になる。ただ、他のことは選択しないだけで、その時はそれに興味があったから、やりたかったからやるとなる。何かのステータスや意見に束縛されない。

誰でも、仮面を外してより満たされる世界に行ける。




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