バイノーラルについて

バイノーラル(録音)は、人間が聴いているのと同じように音を捉えて音声信号にして、それをヘッドホンで聞くことで、録音された場所で(人が)聴いているのと同じように聞こえるもので、具体的には耳もしくはダミーの耳に入れた左右のマイクで収音されたものです。

人間や多くの動物の耳は、左右にあることと耳介が存在することで、音の鳴っている位置を知覚することができます。音声が左右の耳に届くタイミングのずれと、たとえば後方からの音が耳介に一部遮られたりすることで直接波と反射波の大きさの比率やタイミングが変わるため、前後方向の違いも分かります。このように前後方向も分かるような音声(バイノーラル)を、一般的な(広い意味の)ステレオ音声に対して『立体音響』と呼びます。

通常のステレオというのは例えば、いろいろな楽器をそれぞれの音源の近くで個別に(モノラル)録音したものを、楽器ごとに左右のバランスを振って、ギターは右寄り、ヴォーカル・ドラムは真ん中、ベースは左寄りといった広がりを付けたりしていますが、バイノーラルの場合は録音の時点で部屋の反響を含めステレオで記録しています。ギターアンプにマイクをくっ付けたり、ウィンドシールド1枚隔ててマイクに口が付きそうな距離で歌を収録している映像を見たことがあるかと思います。音の位相をずらしたり残響を付けたりといった効果を持つエフェクターもかなり昔からありますが、最近ではコンピュータでバイノーラル音声をシミュレートすることもできるようです。

バイノーラルの録音・配信には自分の耳またはダミーの耳、マイク、マイクの音声をPCやスマホに送るためのインターフェース等が必要になります。機材としては、耳またはダミー耳に差し込むマイク、ダミー耳とマイクが一体のもの、マイクからの音声を直接スマホに入力できるもの、別途インターフェースが必要なものなど、いろいろな種類の製品があります。

最小構成であれば自分の耳もしくはダミー耳スタンドにセットするタイプでiphoneに直接接続できるバイノーラルマイクがありますが(Scenes Lifelike社製イヤホンマイクなど)、音質的にはインターフェースを別途使用するタイプのほうが良いようです。

私はインターフェース機能付きレコーダーに、自分で配線したコンデンサマイク(ダミー耳と一体型)を接続して使用しています。自分で配線すると、高性能なマイク素子を使用することができてコストもかかりにくく、いろいろなタイプのマイクを使用可能です。

具体的な機材構成の例は下記のようになります。

・自分の耳orダミー耳 + インターフェース不要のイヤホンマイク + iPhone

・自分の耳orダミー耳 + インターフェースの必要なイヤホンマイク + インターフェース(レコーダ等) + PC(またはLightningアダプタ +  iPhone)

・ダミー耳一体型イヤホンマイク + インターフェース(レコーダ等) + PC(またはLightningアダプタ +  iPhone)

こちらのノートでは、ダミー耳一体型マイクを使用する場合の機材やマイクの制作方法について紹介しています。

ダミー耳にイヤホン型(耳に差し込むタイプ)のマイクを差し込んで使う場合、マイク素子が耳介よりも外側にあるので、厳密にはバイノーラル音声になっていない可能性があります。

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