防水バイノーラルマイク

防水バイノーラルマイクを制作しました。用途としては浴室や荒天時の録音・配信くらいになると思いますが、一部の需要のために制作方法を公開します。性能としては、上および横方向からのシャワーの直撃(マイク素子に直接シャワーがかかる)では何ともありませんでした。

作り方の概要としては、内径6.2mm・外径7.0mmまたは8.0mmのパイプの先端に直径6mmのマイクを入れてシールド線を配線して、隙間は接着剤+コーキング剤で埋めて防水します。そしてシリコン製の耳模型にパイプの外径と同じ(Φ=7mm or 8mmの)穴をあけて、パイプに挿して固定して完成です。

タカチケース

まずはプラスチックケースを加工していきます。人間の耳介の外側は、接する面が平行ではなくやや前下方を向いているのですが、今回使用する耳模型は内側の平らな面を平行にして作ると人間の耳とは角度が異なるため、ある程度角度をつけて配置する必要があります。そのため、左右のパイプはそれぞれ前方に、かつ下向きになるようにする必要があります。プラスチックケースにパイプを通して接着しますが、通す部分だけで接着するよりも、ケース内側の後面及び上面にパイプの端が触れるようにしてそこも接着したほうが強度的に有利になります。したがって、穴の位置は重要です。今回は、蓋を外して立てた状態で蓋の側を前面としたとき、ケースの前面から約10mm、上方から約8mmの位置を中心として穴をあけました(パイプの外径は8mm)。まずは少し細めのドリルから段階的に、上記の位置に垂直に穴をあけます。

垂直穴あけ

Φ8mmのドリルで垂直の穴をあけた後、ドリルの先端がケースの後面および上面に触れるようにしながら、斜めに倒して穴を拡げていきます。

ドリル斜め

下の画像のように表面が少し削れたような状態になります。

斜め穴の確認

穴が開いたらパイプを通してみて、ケースの中央よりやや外側の位置で上面と後面に接するかどうか確認します。画像ではケースの内側に傷がついていますが、これがドリルの当たった部分です。

パイプ入れて穴確認2


今回使用した台の部分は百均の漏斗で比較的大きい穴をあけないといけないので、下面はドリルで穴をあけた後リーマで拡張します。穴の大きさは、漏斗の斜めに切ってある部分が完全に入る程度です。

底の穴をりーま

ケースの加工が済んだら、まずは台を固定します。

台挿入

今回はポリプロピレンの漏斗の接着のため、プライマーを併用する特殊な接着剤を使用しました。ABS樹脂の台を使う場合は普通の接着剤を使用可能です。

接着剤

台を固定したら、台の部分の下前方に、シールドケーブルが通るくらいの穴をあけます。左右分離可能なケーブルのため、下の画像のように小さめのドリル穴を2つ並べてあけています。

台に穴あけ2

次はシールド線のRCA端子側を切断します。端子を切断した後、左右どちらか分からなくならないよう注意してください。今回使用したケーブルの場合は芯線の被覆の色が違う(左=白 右=赤)ので問題ありませんでした。

シールド切断

プラスチックのパイプを約8cmの長さに切ります。これを左右2本分用意します。その後、台の側から線を通していきます。この段階で左右を間違えないように注意してください。

線を通した状態

次に、マイクを半田付けします。ポイントは、線の軸方向がなるべくマイクと垂直で、マイクの中心から大きく外れないようにしてください。防水マイクは半田付け可能な部分の面積が小さいので、あまり高出力のものではなく、電力が15~25W程度のハンダゴテが適しています。ケーブルの先端とマイクの端子部分に先に半田を持っておいた方がいいかもしれません。一度ハンダ付けした状態で熱を加えずに接合部分に力を加えて曲げようとすると、マイクの端子部分が剥離して使用不能になるので注意が必要です。下の画像のような状態でもぎりぎり許容範囲か、アウトです。

マイクはんだ付け後

半田付けが完了したら、両方のマイクをパイプのぎりぎりまで引き込んでパイプの内側でテープのようなもので仮固定して、下の画像のように並べて、レコーダーに接続して何らかの音源に向けてみて、左右のバランス(メーターの振れや聞こえる音の大きさ)を確認します。マイクの個体差その他の要因で左右の音量のバランスが大きく違う場合は、この段階でマイクを交換しないと後戻りがかなり大変になります。マイク素子は個体差の問題に加えてはんだ付けの難易度も高めなので、失敗前提で余分に購入しておいた方がいいと思います。

マイクテスト平行

次に、マイクの内側の面と線がむき出しになっている部分をコーキング剤で完全に覆います。マイクよりも大きく膨らんでいる部分は全て乾いてから切除します。特に、マイクの側面に付着したコーキング剤は完全に除去する必要があります。

マイクをコーキング

コーキング剤が乾いて余分なシリコンを切除したら、マイクの側面をアルコールで拭いて脱脂して接着剤を塗ってからパイプの中に引き込みます。この時、接着剤がはみ出してマイクの表面に付着しないよう、予めマイクの表面にシールを貼っておくか、少しずつ引き込んで出てきた接着剤を外に向かってふき取っていくと良いと思います。今回、接着剤は防水と固定性を考えてG17を選択しましたが、代わりに再度コーキング剤を使用して固定するのも良いかもしれません。

G17接着剤

マイクを引き込んでパイプに接着し、乾いたら、パイプの内側端部分をコーキング剤で防水します。接着剤が乾くまでマイクが動かないよう、内側でパイプとケーブルをテープで仮固定したほうがいいです。

内側防水

パイプ内側端のコーキング剤が乾いたら、位置合わせ・確認をします。ケーブルの捻じれを取った状態で、アーム内側の上面・後面にコーキング剤がパイプの径よりも出っ張っていると接着の邪魔になるので、切除します。

アーム調整

パイプを少し回転させ、ケース上面と後面部分に接する部分、およびケースを通る穴の部分に瞬間接着剤等を塗った後、所定の位置まで差し込んでしっかり固定します。ここでは瞬間接着剤を使用しました。防水が不安であれば、パイプ挿入部とパイプ内側のケーブルが出てくる部分にさらにシリコンコーキング剤を盛ります。

アーム接着

パイプを固定して線の長さを整えたら、今度はパイプを通している穴の内側と、台の部分のケーブル出口をコーキング剤で防水します。パイプの内側端部分がしっかり防水されていれば、この部分の防水はあまり重要ではありません。

下部防水

線を引っ張って抜けることがないよう、漏斗にあけた穴の内側に結束バンドをつけます。

抜け止め

耳を加工します。耳の加工は、接着剤やコーキング剤を乾かしている間に並行して行うと効率的です。耳の穴の部分は外側(表面)からでないと分かりにくいので、外側から穴の中心と思われる場所にキリで穴をあけ、次に内側(裏)から穴の中心に印を付けて、使用するパイプの外径と同じ大きさの革ポンチで内側からくりぬきます。くりぬく際に強い力を加えると変形して正確な円形の穴にならないので、注意が必要です。

耳キリ貫通

耳穴位置い印

耳の穴これからあける

耳穴あけ中

穴あけ加工した耳模型をパイプに挿して、パイプの先端(マイク)が耳の穴の外側とぴったりになるよう位置合わせをして完成です。

画像26

本来のダミーヘッド(頭部の構造を有するもの)とは違って耳なし芳一(亡霊視点)のような見た目ですが、バイノーラル収音は問題なく機能します。

材料 (一例です)

シリコン耳模型
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B085WYJBCQ/ref=ox_sc_act_title_1?smid=A1XYC98IR51YTV&psc=1

防水マイク(2個使用)
https://jp.cuidevices.com/product/audio/microphones/electret-condenser-microphones/cmc-6035-130t
https://www.marutsu.co.jp/pc/i/27032531/

ステレオケーブル(1m以下)・・・・先端が直角のものとストレートのものがあります。形状・長さとも、お好みで。
https://item.rakuten.co.jp/auc-enzandenki/ps-10a/?s-id=ph_pc_itemname

プラスチックケース(Takachi SW-65B)
https://www.takachi-el.co.jp/products/SW
https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-15128/

プラパイプ・・・ 外径8mm(OM-246)
https://www.hobby-wave.com/products/om221-235_241-255/
https://item.rakuten.co.jp/akibaoo-r/hm000582530/

台(百均の漏斗等) できればポリプロピレンよりも普通のプラスチック(ABS等)のほうが接着しやすいです。今回はポリプロピレンで製作したため、特殊な接着剤が必要になりました。

PP漏斗

シリコンコーキング剤・・・ノズルが細いほうがいいです。一応100均にもあります

画像27

その他:瞬間接着剤(部品にポリプロピレン等を使用する場合は対応のもの)、G17接着剤、結束バンド等

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