絵が描けない…

脳内にきれいな絵がいくつも浮かんでいる。構図や色も思い浮かべている。でも、描けなくて悲しい。絵が描けるようになりたい。字よりもバズるだろうから。多くの人に伝えられるだろうから。安い共感で気持ちよくなりたい。
みんな割と文字を読まないし、文字から何も汲み取ろうとしない。脳を滑り去るだけ。言葉の力を真に発揮させられる人はこの世に一握りで結局感受されず溢れるものばかりだ。
想像する。白い背景。上から腕が伸びている。斜めではない。画面の真ん中に、真っ直ぐ上から、柔らかそうな腕が差し出されている。線は補足で、鉛筆やボールペンみたいな、サンプルな筆記具で書かれている。その手のひらのあたりからガラス片のような、細かな破片が下へ降り落ちている。色はない。そしてその手が掴みそこねた手が画面の下の方にかすかに見えている。ひらかれて力の入っていない手のひらが、こちらにさよならするように薄っすらとだけ、見えている。それだけの絵。
宙に浮く絵。ソファの上でひっくり返って仰向けの頭だけ縁から出して背中を沿っているみたいな、そんなポーズで満月の上に少女が浮いている。風呂でくつろいでいるときみたいな格好といえば伝わるかな。だらんとしている。笑顔が逆さまに見える。ちょっと怖い絵。
全部見えているのに絵にはかけなくて悲しい。字に書いてもつまらないだけなのに。

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