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胚培養士の不足問題深刻

 2021年に体外受精出生児は約11人に1人となり、不妊治療のあり方が昨今大きく変わりました。その中で現在、胚培養士の不足が重要な課題の一つとなっています。胚培養士は受精卵の培養や選別、移植を行う専門家で、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)などの生殖補助技術(ART)において欠かせない存在です。不足すれば不妊治療の発展に大きく影響することが危惧されます。
 不足の背景にはいくつかの要因があります。一つは世界的な需要の増加で、それに伴い胚培養士の供給不足が生じています。また、胚培養士になるためには高度な専門知識と技術が必要ですが、その養成プログラムや専門教育機関が限られていることも問題です。胚培養士は医学的な知識だけでなく、倫理的な観点やコミュニケーションスキルも必要とされるため、その育成には時間と労力が必要とされています。
 この問題に対処するために、山梨大が2023年に「胚培養士養成特別教育プログラム」を新設するなど、現在さまざまな大学が取り組みを行なっています。また、胚培養士の役割や重要性を社会に広く理解してもらうことも必要です。胚培養士への関心が高まれば、将来的に供給不足が解消される可能性はあると思います。
(日本経済新聞 2024年3月4日)