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米大、培養脳を使ったコンピュータ開発

 幹細胞由来の神経細胞が集積された「培養脳」を用いてコンピューターを構築するといったマンガのような研究が進んでいる。開発しているのは米インディアナ大学ブルーミントン校や東北大学、豪コーティカル・ラブズ等。
 培養脳を用いたコンピュータのメリットは、従来のコンピュータよりも低電力で計算ができるという点。実用化により電力消費問題を解決する一助になり得る。ロンドンの研究者によると、機械学習モデルのシミュレーションにおいて、従来のコンピューターでは約800kWの消費電力であるのに対し、人の脳は約20Wと40万分の1で済むという報告をしている。
 インディアナ大学ブルーミントン校の研究チームは、実験室で培養した「脳オルガノイド」を高い密度で電極を並べたシリコンチップに接着、「ブレイノウエア」というシステムを作成した。ブレイノウエアは電気信号を与えられると反応し、神経活動データを出力する。有効性を調べるために、8人の被験者から録音した日本語の母音の音声を使用し、ブレイノウエアが特定の1人の声を識別できるかのテストを行ったところ、2日間のトレーニングだったにもかかわらず、約78%の精度で話者を識別することに成功した。
 実用化に向けた一番の障壁は倫理面だと思われる。オランダのプリンセス・マキシマ小児腫瘍センターなどは、中絶した胎児の脳から採取した神経細胞を培養し、脳オルガノイドを作成。脳オルガノイドはシャーレの中で半年以上増殖し続けたと報告している。脳は思考に関する重要な臓器であるため、脳オルガノイドが意識を持つ可能性もあり得る。今後の議論が不可欠だろう。
(日本経済新聞 2024年2月9日)