荒野のグリーゼル

揺れる海原は地平まで続く荒野に変わった。
波を切る水飛沫は肉を削ぐ砂埃に変わった。
塩と錆は今も変わらない。

歯車は欠け、配管は破れ、軋む船体は今にも崩れ落ちそうだ。
しかし船は未だ進み続けている。生きている。
一歩、さらに一歩と、砂と岩を踏みしめて前へと。

青空は誰も見たことがない。
空を覆うのは分厚い酸性の雲。
赤く濁って、太陽の位置さえ分からない。
夜の光は恐れの群れ。

目指すべき場所がある。
緑と水の大地が待っているという。
それがどこにあるのかは分からない。
明日も船は歩き続けるだろう。一歩、また一歩と。

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