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I bought an ashtray in the shape of Mussels.

1.みさきのお店無くなっちゃった

みさきのお店が無くなったのはつい2年前のこと。
みさきには7個上の彼氏がいて、出会いはキャバクラで働いていたときのボーイの男の子だった。
家の事情もあり、昼はネイルの学校に行っていたため、必然的に夜の仕事をするようになった。
人を喜ばせることは昔から好きだったが、自分の好意ある人とそうでない人では気持ちの入り方にやはりどこか無理している自分が出てしまっていた。
逆もそうで、好きな人からもらうものはなんでも嬉しいと思えるが、
頭は薄く、豚のような容姿と体、鼻息が荒く、さっきまで仕事をしてきた臭いがするような人から

「はい!これぇ、バッグだよ!」

といわれてもらった高そうなブランド物のバッグも煌びやかな宝石もチープに見えて
何をもらっても心の底から喜ぶことはできなかった。
みさきが7個上の彼氏から初めてもらったのはムール貝の形をした灰皿だった。
タバコをいままで飲んだアルコールの空き缶に入れていたが、もらったその日からはそれを使ってタバコを消すようになった。
夜の仕事はある程度で朝まで引っ張られないようにしていた。
全ては小さい頃からの夢であるネイルのお店を開くためだった。
彼氏との約束も、明日が学校ならば断り、練習を欠かさず行なっていた。
そうやって過ごす自分は誇り高いとも思っていた。
今思えば自分に酔いしれていた。
月末になれば給料が振り込まれ、
半分が学費、後の半分で生活をやりくりする。
そーいった生活は苦手ではなく、自炊をしたり、なるべく出費を出さないように暮らすのはなんなら楽しいとも思えていた。
そして2年後
学校を難なく卒業し、キャバクラをやめる決意をした。
彼氏にも話した。彼氏は

「ネイルを始めて余裕あればまたやれば?」

と言ってくれた。
ネイルのお店はすべて彼氏が準備してくれた。
彼いわく、

「俺の先輩に店立てる仕事してる人いるから、話通しとくよ」

願ってもない話で、心の底から喜んだ。
そして、二ヶ月後に彼氏から詳しい話をきいた。

「えっと、店開くのに大体300あればいいって」

少しずつ貯めた貯金は大体100ぐらいだったので、あとの200は消費者金融と親から借りた。
そしてなんとか作った金を彼に渡し、お店ができる場所や構想を絵に書いたり、SNSで告知をしたりして、浮き足だっていた。

「みさきのお店もーすぐ決まるんだぁ!」

次の日から彼氏と連絡がつかなくなった。
そんなわけない。
ゆめだとゆってよ。
そーなった時に真っ先に考えたのはSNSだった。
あんなこと書いといて、騙されたなんて言えない。
でも、もしかしたら誰か助けてくれる人いるかもしれない。
キャバクラのお客さんのジジイどもはきっと助けてくれるよね。
そう頭で逃げ道をさがしながらストーリーを投稿した。
自分の夢であるネイルのお店は…


「みさきのお店。無くなっちゃったミタイ。涙」





2.44歳トリキで!
先日マッチングアプリであったサラリーマンの男性は渋谷で待ち合わせしているが、待ちあえるとはおもえないほど待ち合わせる人がいる。
顔はそうでもないが、仕事はかなりいいところに勤めているらしい。
実際に会うと顔は画像よりよく見えた。
44歳という年齢を感じさせないような笑顔をみると、
「あそんでんなー」
と思わざるをえない。

「初めまして。じゃあ行きますか。」

「はい。」

「お店どこか決めてるんですか?」

「いや、実はまだ決めてなくて。どこがいい?」

「さとしさんに全部お任せしますよ。」

「そーか。んーーー。」

30秒ほど悩んで、結論が出た。

「んじゃあ、トリキいきますか!トリキで!」

脳が一瞬停止して、即座に目がすわる。
そして足が止まる。
全身の血が沸騰したように暴れ、怒りが心と頭を通っていった。

なんなんこいつ。
「トリキで!」じゃあないだろ。
なめんなよまぢで。
おめぇいくつだよ。44歳でトリキにディナー行かないだろ。
一生懸命仕事してこれですか。
今日はもおむり。

「帰ります。お疲れ様でした。」

「あ!ちょっと!」

追いかけられる前にささっと改札を通った。
44歳でトリキなんかいってんじゃねーよ。
まったくもお。

つぎあったらなぁ!!

私が直々にわからせてやるからなぁ!!!

拳で!!!!!!

とか言ってもいいよね。
たまには。
はぁ〜…。
BAR行っちゃおっと。
                  いじょ


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