海外大学院留学記:なぜ海外大学院にいくの?

こんにちは、Aalto UniversityにてCollaborative and Industrial Designの修士課程に在籍している森一貴です。

これまで、全く海外とは縁のない生活を送ってきました。海外旅行はたぶん3,4回くらい。そんなに海外に憧れもありませんでしたし、むしろ日本のローカルに強く関心を持ってこの5,6年を過ごしてきました。そんな僕がなんで海外大学院にいくことを決めたのか、簡単に書き残しておきたいと思います。(この記事は、なぜアアルト大学に決めたのか?ではなく、なぜ海外大学院にいこうと思ったか?に関する記事です)

自己紹介は以下。

この記事は、2020年の年明けに書いた以下のnoteをふくらませたものです。

1. 限界値の更新/軸の変更

24歳で前職(アビームコンサルティング)を退職してこのかた、ニートとフリーランスとアルバイトのはざまでふらふらと仕事に取り組んできました。徐々に仕事の規模や難易度も大きくなってきつつ、その中で感じていることが2点あります。

ひとつめが、「フリーランスって、自分の限界値を消費する働き方だよなあ」ということ。

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企業であれば、上司が様子を見てくれていて「そろそろちょっと難しい仕事やってみようか」といった、コンフォートゾーンを抜け出る変化があるでしょう。

しかしフリーランスでは油断していると現状に満足してしまい(意外に次々に仕事がくるものだから)、自分の使える能力が限界値に近づいてきていることに気づかないままになってしまったり、その限界値を押し上げるためのまなびをおろそかにしてしまったりといったことが往々にしてあります。

もちろん、自分でうまく時間の余裕をつくりながら暮らすことができれば、そこに本を読んだり、自分でまなんでアクションしてみたりといった変化を起こしていくことは可能なのですが、これを個人のレベルで実行するのは根気がいることです。

この視点において最近は、僕は自分の限界値すれすれの漸近線付近で仕事をしているなという感じがしていました。限界値をぐっと押し上げるためにはどうしたらいいだろうか?という問いがあったわけです。

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更には一定の実績を積んできた今、全く異なる文脈にジャンプすることも非常に難しくなってきています。より抽象的な視点で言えば、世界認識の枠組みがかなり固定化されてきてしまい、全く異なる点を打つことがむずかしくなってきている。

こうしたなか、僕が取り組んできたことは、取り組みだした当初は全国的に見ても珍しくおもしろい取り組みだったかもしれませんし、あるいは軌道に乗せるまでは難しいかもしれませんが、軌道に乗って、より容易に回せるようにもなってきました。

この点で、ではいかに自分自身の世界観や、持てる枠組みを拡張するか?といった問いが生まれました。

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上記の2つの問い、つまり「限界値をぐっと押し上げるためにはどうしたらいいだろうか?」および「いかに自分自身の世界観や、持てる枠組みを拡張するか?」に対する僕の中での方針が、

「とりあえず全く知らない方へ進んでみる」

ということです。具体的には「海外にいく」「子どもができる」「他の組織/土地に入ってみる」といった選択肢があるのではないかと考えました。その中で、海外にいくという選択肢の延長線上に、海外大学院の留学が浮上してきたわけです。

2. 自分がやってきたことの体系化

これまで、色々なことに取り組んできましたが、一体これがどんな軸でつながっていて、どんな言葉で表現されるのか、正直まったくわかっていませんでした。

色々な生き方と出会える場をつくる「生き方見本市HOKURIKU(現:生き博)」。フリーランスになるための小さな階段を作る「田舎フリーランス養成講座(現:ワークキャリア)」。ほしい未来を自分でつくる人を育てる「ハルキャンパス」。半年間家賃無料で自由に住める「ゆるい移住」。ものづくりの祭典「RENEW」。そしてシェアハウス。

これらは僕が意義あると信じて取り組んできた領域なわけですが、なかなかそこに一貫した軸を見出すことができない。特にシェアハウスやゆるい移住は、おそらく極めて重要ななにかを内包しているはずなのですが、それはどのように言語化され、どのように学問領域のなかに位置づけられるのだろうか?

自分がやってきたことを整理し、体系化していきたい。

これは海外というよりは、大学院に行きたい理由ですね。

3. 共同体感覚の拡張

僕たちは、無意識に、気づけば国という枠組みにめちゃくちゃとらわれている。これは思ったよりも強く僕たちのなかに根ざしている。

例えば、「大学進学」と「海外大学進学」では全く意味が違うように見えるし、海外大学のほうはなんかとんでもなく難しくて、とんでもなく意識が高いようなことに見えてくる。

でもこれは本来的に考えると結構おかしいことだ。だって、地球に国境はないのだから。宇宙飛行士の毛利衛は、はじめての宇宙から帰還したのち、こんな言葉を残しています。

「宇宙からは国境線は見えなかった」

しかし、頭ではわかっていても、やっぱり将来は日本に住みたいと思うし、僕の言う「社会を変えたい」は「日本の社会を変えたい」であり、「好きな人たちと暮らしたい」と思い浮かべる顔の中には、日本人しか浮かんでこない。

この、日本という枠組みにとらわれている自分の感覚を解きほぐしたい。私たちは、生まれた瞬間に自動的に国籍は決まってしまうけれど、おそらく住む場所だって、本当は自分で選べるはずなのだ。

その、日本人としての、日本という共同体に所属している感覚を超えて、もうひとつ抽象的なレベルで、私たちは共同体なのだという感覚を持ちたい。その共同体感覚を拡張するために、海外に自分の所属意識を持つという実験をしたい。

(途中で別のテイストの記事を読んでいたから文体が引っ張られてしまった。)

4. 理想の内面化と相対化

日本ではよく、フィンランド(やスウェーデンやデンマーク)の教育や福祉政策が引用される。それもそのはず、フィンランドはいまや、世界で一番幸福な国なのだ。

しかし、そんな国に、"実際住んでみて"どう思うのだろうか?嫌なところが見えてくるのか。それともやっぱり、とっても幸せな国なのか。じゃあどうして北欧から日本に移住してくる人がいるのか?まあ、そんなことは一人ひとり全然違うので、一概にまとめるわけにはいかないのだけど、フィンランドの人に聞くと、「こんなにアル中が多い国が世界で一番幸せなわけないじゃん」って言うらしい。(ちなみに次のリンクによれば、フィンランドは2010年時点でアルコール依存症が多いよランキングで190ヶ国中20位。 http://top10.sakura.ne.jp/Finland-p6.html )

こうした現実は、住んでみないとわからない。フィンランドに住んだ人の目線で、フィンランドの人と同じようにフィンランドの状況を語ることができるようになりたい。

もしかしたら"留学生界隈"という極めて特殊な界隈では、"フィンランド人"の事情はわからないかもしれないから、そこは個人的に"フィンランド"のツテを広げていく必要があるんだろうなあと思う。

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加えて、僕自身の身体に対する実験的な態度もある。

やっぱり僕の中では、フィンランドは結構いい国だと思っているわけだけれど、そこに住んでみたとき、自分はそこに「住みたい」と思うのか。それとも「やっぱり日本に戻って、これを日本に実装したい」と思うのか。それとこれとでは多分全然違っていて、でも今はまだわからない。それを知りたい。

5. 海外コンプレックスの解消

海外にいく以外にも色々と選択肢はあるなかで、ひとつ意外と大きな理由がこれ。

実は英語というものに結構拒否反応があるというか、昔から割と苦手意識がある。もちろん、苦手といっても勉強ができないみたいなやつじゃなくて、英語がめっちゃ流暢にしゃべれないことに対する恥ずかしさみたいなものです。

周囲の人たちは、当たり前に仕事などでも海外に駐在しているわけで、負けん気とか悔しいとかっていうことでもないのですが、自分なりのけじめみたいなものですね。英語が話せないのに、「これからはグローバルよりローカルに目を向けていこうよ」とかって言ってるのめちゃくちゃダサくないですか?

めっちゃ英語もできるし、グローバルでも色々とやったしできるけど、それでもやっぱりローカルがいいと思うんだよね、と言いたい。このあたりはコンプレックスがあって、このコンプレックスを持っていること自体が何よりダサいと思っているので、それを解消したいというのがあります。

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あとはもう一つ別の理由で、当たり前に英語圏の情報にアクセスできるようになりたい。僕が取り組んできたRENEWやゆるい移住のような事例は、海外にはないのか?どうして僕たちは、海外の地方創生の事例をほとんど知らないのでしょうか(ポートランドくらいではないか)。そもそも、地方創生という言葉自体、英語に訳せない(統一的な定義が決まっていない)というのも変な話です。おそらく色々な情報が世界で出回っているはずで、そこにもちろんこちらからも情報を流通のなかにのせていきたいし、その出回る情報を当たり前に取り入れていけるようになりたい。みたいなとこもあります。

最後に

まとめ。超よくある言葉でまとめると、要するにこういうことです。突然めっちゃあるあるな留学生みたいになりますね。おもしろいなあ。

1)自分の視野を広げたい
2)自分がやってきたことを言語化したい
3)同じ地球に住んでいる人みんなと共感できるようになりたい
4)フィンランドの社会を自分の目で見てきたい
5)英語できるようになりたい

ところで、最近おもしろいことに気づきました。

僕、福井県からフィンランドに留学してるんですが、「日本一幸せな県・福井県」から「世界一幸せな国・フィンランド」へ留学することになるんですよね。そう考えると、福井からフィンランドっていう選択は意外と素朴で、自然な流れだったのかもしれないなあと思ったりします。

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