黄泉から
月遅れのお盆さんですね。
この時期になると読み返したくなる短編があります。それは久生十蘭の『黄泉から』。
敗戦翌年の7月でしょうか、お盆の時期です。主人公の一族は次々と亡くなってしまい、いとこのおけいという娘だけになってしまいました。しかし彼女は婦人軍属になりニューギニアに渡り、そこで病死。主人公は洋行から帰りそれを知ります。
今日1日は彼女を追想しようと予定を全て断り、新盆の支度をしようとしますが、古いしきたりを過去の記憶から引っ張りだそうとしてもうまくいかない。自己流で…と「女の子だから甘いもの」と考えて用意しますが、飾る写真が一枚もないのです。
彼女の同僚が彼のもとを訪ねくれて、ニューギニアの様子や最期を教えてくれました。
主人公はこの後、彼女の魂は家庭塾生としてお世話になっていたルダンさんの家にも行くだろうと考えて、女中に懐中電灯ではなくあえて提灯を用意させます。ラストシーンに胸がいっぱいになりました。
最初にこの話を知ったのは『世界堂書店』というアンソロジーでした。米澤さんの解説をそのまま引用させていただきます。