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ルカの福音書 ”わたしたちの間に成就された出来事”

神に愛され人に愛された人間イエス・キリストの誕生から死と復活、昇天までを、ギリシャ人らしい知恵深さに裏付けられた筆致で描いているのが、ルカ。その本質が人間であり、かつ神であるとは・・・?

著者

ルカは知性あふれるギリシャ人の医者だったようです。ギリシャ語で書かれている原文は、非常に格調高く、しかも当時の一般の人にも読みやすいギリシャ語だそう。新約聖書のほかの箇所に「医者」として紹介されています(コロサイ4:14)。「ルカ」という名は、ラテン語名のLukanos ["光"という意味]からきているそうです。

当時の知識人として、豊富な知識をもち、なおも学究心旺盛なルカが、イエス・キリストの福音を聞き知って、さらにその出来事をまとめようとしたのでした。医者ルカが、神であり人であるイエス・キリストをどのように描いているか、とても興味深いものがあります。

ルカの特殊性は、ユダヤ人ではないと考えられている点です。パウロは、ユダヤ人の「すぐれている点」として、「神の言が彼らにゆだねられたこと」(ローマ3:1-2)としています。直接的には、聖書の著者はすべてユダヤ人だ、とも読める言葉です。異邦人ルカが、どうしてその務めを担うことができたのか。ルカがそもそも、異邦人ではなくユダヤ人だった、としたら、話は簡単ですが。

パウロと行動を共にしていたルカですから、異邦人伝道をつぶさに見聞きしています。異邦人クリスチャンが増加の一途で、神の働きの中における異邦人の重要性もますます明らかになってきていました。キリストによってイスラエルと異邦人が一つとされたことは、とても大きな事柄で、この時点で、神の言葉が異邦人にもゆだねられた、となったでしょう。異邦人ルカの登場は、新時代の神の産物とも言えるわけです。

内容

イスラエルの片隅の一点に生れたユダヤ人イエス・キリスト。その活動により、神の福音が全世界、全ての民族にいたるまでに広められるプロセスのスタートが、この福音書と使徒行伝を通して描かれます。

ユダヤ人の地域、特にガリラヤの田舎に公に始まった神の国の福音運動、キリスト運動が、根も葉もないものではなく、まずエルサレムの神殿祭司に神の御使いが語りかけるところから始まったことをルカは記します。さらにキリストの誕生となり、その活動とともに神の国の福音がユダヤ人に伝えられながら、その成就の前提となる贖罪のためにペレヤを通りエルサレムに至る過程を克明に記します。

マタイがまとまった説教を記録しているのに対し、ルカはむしろ、さまざまな教えが、そのなされた状況と共に記録しています。教えが人の息づかいと共に伝えられているのです。それが十字架の場面でも顕著で、左右に共に十字架にかけられていた人との会話を、ルカだけが記しています。

最後にキリストの受難と復活によって福音の核心が成し遂げられた後、罪のゆるしによる救いの福音は今度はエルサレムに始まりサマリヤに伝えられ、さらに異邦人に至ります。民族を超えた福音の世界的な拡大が、ルカの描く福音の最終目標です。それが後編「使徒行伝」にまとめられます。

ルカのこうした視点、全体像は、パウロと行動をともにしている間に、パウロから学び取ったものでしょう。

さて、もし、イエス・キリストがほかの民族の中に生まれていたら、どうなっていたんだろう、と、考えさせられます。たとえば、もし、イエス・キリストが日本人だったら、日本はどうなっていたんだろう、と。旧約聖書に記されている、ユダヤ人の味わった辛酸を、預言の通りに日本人が経験することになったんだろうなぁ、と、思うのです。

遠い外国で起こった昔の出来事、として自分には関係がないことと突っ放してはおけない事柄でもあるのです。

世界の中の、エルサレム。そこに程近いところに生まれたイエス・キリストは、エルサレムの郊外で十字架にかけられ、死にます。そして、三日目によみがえった後、40日間、さらに弟子たちに神の国のことを教えてから、エルサレムの隣にあるオリーブ山から、天に昇ったのでした。福音は、ここから伝えられ始め、現在に至って、世界中に広まっているのです。

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梗概

I. ユダヤとガリラヤでのはじまり(vv183) (1章-4:13)
II. ガリラヤでの活動の中で(vv275) (4:14-9:50)
III. ガリラヤからエルサレムまでの間で(vv424) (9:51-19:44)
 III-1. イエスが天に上げられる日が近づいた (9:51-13:21)
 III-2. イエスは教えながら町々村々を通り過ぎ (13:22-17:10) 
 III-3. サマリヤとガリラヤとの間 (17:11-19:44) 
IV. エルサレムでの栄光(vv269) (19:45-24章)

I. 「キリストとして現れるまで」ユダヤとガリラヤで のはじまり (1章-4章13節)

[1]ルカ1:1-25;最初の出来事;
[2]ルカ1:26-56;イエス・キリストの母となるマリヤ;
[3]ルカ1:57-80;ヨハネ誕生と預言;
[4]ルカ2:1-20;救い主イエス誕生;
[5]ルカ2:21-52;幼少のイエス
[6]ルカ3:1-38;預言者ヨハネと主イエス
[7]ルカ4:1-13;荒野での悪魔の試み

II. 「弟子たちとの福音宣教」ガリラヤでの活動の中で (4:14-9:50)

[8]ルカ4:14-44;ガリラヤでの活動開始
[9]ルカ5:1-16;イエスは言われた
[10]ルカ5:17-39;罪がゆるされて神に生きるスタート
[11]ルカ6:1-19;安息日の主
[12]ルカ6:20-36;敵をも愛するさいわいな弟子
[13]ルカ6:37-49;キリストの教えの原理と実践者
[14]ルカ7:1-23;百卒長の僕の癒し~神は恵みによりその民を顧みて下さった~
[15]ルカ7:24-50;主に評価される人々
[16]ルカ8:1-25;イエスの御言葉に従う人々
[17]ルカ8:26-40;ゲラサの地でレギオンを追放
[18]ルカ8:40-56;ヤイロの娘と長血の女
[19]ルカ9:1-17;弟子たちによる神の国の福音宣教 (5千人の食事)
[20]ルカ9:18-36;神のキリスト
[21]ルカ9:37-50;神の偉大なわざに鈍感

III. 「受難のエルサレムに向かって」ガリラヤからエルサレムまでの間で(9:51-19:44)

 III-1.~さて、イエスが天に上げられる日が近づいたので、エルサレムへ行こうと決意して、その方へ顔をむけられ~(9:51-13:21)

[22]ルカ9:51-62 ; エルサレムへの旅の始まり
[23]ルカ10:1-22 ; 神の国の収穫のための働き人
[24]ルカ10:23-42; 主イエスを愛し御言葉を慕う
[25]ルカ11:1-26; 祈りによる父からの力
[26]ルカ11:27-54; 御言葉を聞き行う者の内なる光、きよさ
[27]ルカ12:1-21; 真の神信仰を侵す誘惑
[28]ルカ12:22-40;御国を下さる父の御心の下で
[29]ルカ12:41-59;地上に火を投じるキリスト
[30]ルカ13:1-21;神の国に生きる者たち


 III-2.~さてイエスは教えながら町々村々を通り過ぎ、エルサレムへと旅を続けられた~(13:22-17:10)

[31]ルカ13:22-35;神の国への戸口~エルサレムへの旅を続けて~
[32]ルカ14:1-24;パリサイ派のかしらの家で
[33]ルカ14:25-35;主イエスの弟子となる
[34]ルカ15:1-32 神は喜ぶ、神と共に喜ぶ;
[35]ルカ16:1-31 真の富を得る者;
[36]ルカ17:1-10 主イエスに仕える信仰;

 III-3.~イエスはエルサレムへ行かれるとき、サマリヤとガリラヤとの間を通られた~(17:11-19:44)

[37]ルカ17:11-37 神の国の現在と未来
[38]ルカ18:1-34 神が共におられるなら
[39]ルカ18:35-19:27 ダビデの子イエスによる救いと神の国;
[40]ルカ19:28-44 エルサレムへの平和の使者イエスの涙

IV. 「エルサレムで栄光を現わす」(19:45-24章)

[41]ルカ19:45-20:19 真の神殿の権威者
[42]ルカ20:20-47 この世の宗教の神理解
[43]ルカ21:1-38;
[44]ルカ22:1-23;人の裏切り・神の真実
[45]ルカ22:24-46;神の国のための危機のステップ
[46]ルカ22:47-71;キリストの十字架への決定的な瞬間
[47]ルカ23:1-25;異邦人によるイエスの裁判
[48]ルカ23:26-56;十字架の死と埋葬
[49]ルカ24:1-32; 空の墓の証言
[50]ルカ24:33-53;キリストの顕現と宣教の大命令

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(手前はオランダ時代の建物、1911年築。現在メダン中央郵便局。朝焼けの光を受けているホテルと)

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