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不安な夜のあなたへ

不安な夜を過ごしている10歳の私へ。

お父さん、帰ってきたね。今夜もうるさいね。
お隣さんの犬がめちゃくちゃ吠えてる。お父さん、犬に怒鳴ってるし。

明日、隣の子がきっと何か言ってくるね。
怖いね。学校行きたくないよね。
でも、あなたは真面目な子だから行くんでしょ。
そして何を言われても我慢する。何も言い返さず、ただ勉強する。

お母さんはよく「強い子になりなさい」って言うけど、あなたは誰よりも強いよ。そしてあなたの周囲は弱い人ばかりだ。

あなた、今、一人で生きて行こうって思ってるでしょ。
勉強して仕事をして、誰にも頼らず、自分で稼いだお金で一人で生きて行くって。

あなたはそれが「自立」だと考えてる。
一人で生きることが強い生き方だと思ってる。

今日は、あなたのその大きな勘違いについて話したいの。

まず、あなたの未来について、ちょっと伝えておくわ。
あと十年も経たないうちに、あなたは勉強を頑張ったご褒美に大学への切符を手に入れる。
そこであなたは今までとはまるで違う世界を見ることになる。

最初はショックを受けるかもしれない。
こんなに頭のいい人たち、今までどこにいたんだろうって。
自分が今までいかに劣悪な環境にいたかを知ることになるし、世の中の不公平さを感じることにもなる。

でも、そこであなたはかけがえのない友人たちを手に入れる。
その友人たちは一生の友になるわ。

そして、あなたはたくさんの人に愛される。
愛されて、今度は自分が愛することを学ぶ。

彼らをみて、あなたは意外に思うわ。
彼らが一人じゃないことに。

あなたは、一人で生きて行くことが自立だと思ってるね。
一人で生きて行くことが強いことだと思ってるね。

それ、実は逆なのよ。

みんなと一緒に生きて行くことが自立であり、みんなと一緒に生きて行くことが強いということなの。
たくさんの人に愛し愛され、頼り頼られ、信じたり信じられたり、そうやって人は自立していくの。強くなっていくの。
本当に強い子は、困ったときに誰かに「助けて」と言えることなんだと思う。
「助けて」と言えるほど、人を信頼することなんだと思う。

今のあなたも、あなたのお母さんも、その力が欠けている。
一人で頑張ってしまう、一人でなんとかしようとしてしまう。「大丈夫」って言ってしまう。
それは、決して強い生き方ではないのよ。

彼らはみんなに頼りにされるけど、実は誰かをしっかり頼ってもいる。
彼らは人を信じること、愛することに臆病にならないの。
もちろん裏切られることもあるだろうし、信じるに値するような人ではなかったと後で気がつくこともあるでしょう。
でも、彼らはそれでも人を信じることをやめない。
彼らは強いから。

彼らは愛されている。
そして愛されることに決して傲慢にならない。
もちろん、恋愛がらみで大変そうと思うこともあるし、あなたも巻き込まれたりもするけど、彼らはそれさえ自分の魅力に変えてしまう。

あなたは愛されている彼らをみて、ちょっと寂しくなるかもしれない。自分の孤独を噛み締めるかもしれない。

でもね、今度は教えてもらいなさい。彼らはあなたを愛してくるから。
愛されることにあなたは戸惑うだろうけど、すぐにその素晴らしさと心地よさに感動するわ。
そして、あなたはやっと「助けて」と言えるようになる。信頼できる人ができる。

誰に何を言われても我慢して「大丈夫」と言い続け、自分を隠してきたあなたは、彼らに自分の気持ちを言葉にすることを教えてもらえるわ。

今では、困ったときはすぐに友達にlineして、みんなでランチしてるわよ(笑)
最初は不満や不安を吐きだしているのに、最後はなぜかいつも笑い話になってるのが不思議なんだけどね。
そしてあなたもたくさんの人から悩み相談を受けるわ。
それはあなたにいろんなことを考えさせるきっかけになり、「一人がいい」と言ってたあなたがいつしか「人って面白い」と考えるようになる。
そして、そんな人たちを「書きたい」と思うようにまでなる。

そうそう、マクドナルドを「マクド」と言ったあなたに「マックフライトポテト、マックシェイク、マクドナルドは『マック』だよ」と言ってくる彼がいるの。
でも、そのマックの彼は、いまやあなたの一番の相談相手。
困ったことがあれば、すぐにあなたは彼に「助けて」と言っている。
もちろん、彼はすぐに助けにきてくれるわ。

信じられないでしょ?
でもね、そうなるの。
あなたはとても生きやすくなる。
よく笑うし、冗談まで言えるようになって、愛する人を笑わせることに喜びを感じるようになる。

だから、その不安な夜を抱きしめなさい。
その不安な夜は、決して無駄にはならない。

その夜があるから、あなたは愛し愛されることの尊さが理解できるようになるのだから。