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体じゃないのよ、顔なのよ

夫のチームに新入社員君がやってきた。
夫は「僕にこれぐらいの子供がいてもおかしくないんだね」と妙に感慨深げ。

その子は趣味がボディビルらしい。

「すごく小さな子なんだよ。凛子さんぐらいかな」

私の身長は160cm半ばだ。確かに男性にしては小さい。

「背が低いのがコンプレックスだったみたいで、大学に入ったときに体を鍛え始めたんだって」

大学時代からボディビルの大会に出場していたという彼。

自己紹介のとき、社員の一人が「大会でかけられたら好きな言葉はなんですか?」と彼に質問したらしい。

言葉?

言葉って何だろう。
夫も「?」となったようだ。ボディビルに全く興味がない私や夫には何のことかわからない。
夫が、その質問をした女性に「言葉って何?」ときいたところ……

「大学の大会では、観客が選手に声をかけるらしいんだよ」
「へ~、例えば?」

「腹筋グレネード!」


「グレネード?」
「グレネード。手榴弾だよ。ほら、腹筋が手榴弾みたいにぼこぼこしてるから」
「あら、面白いわね。他にはどんな言葉があるの?」

「肩にジークのっけてんのかーい」


「ジーク?」
「なんだろうね?ドイツ語で『勝利』って意味なんだけど意味がわからないね」

翌日、その新入社員君に確認したら「ジープ(車)」でした。夫の聞き間違いでした。

ちなみに、その子が一番好きな言葉は「自分の番号」だそうです。

番号を呼ばれると、ものすごい高揚感がわいてくるんだそうな。
私にはよくわからない感覚です。
なんだろう。「さぁ、俺を見てくれ!」みたいな感じ?

「その子、面白いわね。写真、撮ってきて。見てみたいわ」
「うん、わかったよ」

翌日、夫の「写真撮っていい?僕の奥さんが見たいんだって」というお願いに「わかりました」と彼は快諾。

わーい、見せて見せて。どんな子?

夫のスマホには、新入社員君の背中アップの後ろ姿。
それはそれは見事な逆三角形。
肩幅が広すぎるのかウエストが細すぎるのかよくわからん。

と、いうより。

背中じゃなくて、私はあなたの顔が見たいんですけど。

どこまでも体が中心の新入社員君でした。