俺たちの本棚

レダ

今日は、故栗本薫女史の傑作SF小説であるレダを紹介したいと思う。

物語はファーイースト30というユートピアが舞台となっており、そこで自分のことを平凡でなんの取り柄もないと思い込んでいる少年イヴが、反社会主義者である紊乱者(ディソーダー)のレダと出会い、時分とは対極にある圧倒的な個性に翻弄されつつ、世界の見方を少しずつ変容させていく物語だ。

レダの作品としての魅力は論理的に完成されたように見える世界観が徐々にイヴを通して違和感を感じていくという絶妙ともいえる表現力にあると自分は思う。

ファーイースト30は、一般的なSFで描かれるユートピアとは少し違い、科学万能の世界観というよりは、コミュニケーションの方法論を究極にまで論理立てて構築し、その方法論が文化にまで昇華された世界というイメージになっている。

科学万能の世界観に対しては、読者として最初からある種の違和感を感じることができるのであるが、読み始めたばかりの読者にとってファーイースト30は、本当に理想郷であるかのごとくに映ることだろう。

人々は洗練されており、個人というものが極限にまで尊重される世界。

その尊重をするための方法論として、ありとあらゆる会話がパターン化され、そのパターンごとに対する作法が事細かに決まっているのだが、決して窮屈であるという印象を与えない表現になっている。

一言でいえば、理系の理想郷ではなく文系の理想郷というイメージだ。

そこでは、誰しもがその能力の有無にかかわらず、適切な職業に就き、多くのやりがいを得ている。

幸せになるための方法論が世界そのものを構築しているような場所で、徐々に浮き彫りにされていく「違和感」。

その正体が何であるのかは、ぜひ皆さんに読んでいただきたい。

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