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「まこと」という弟

相続関係図をつくるために、とあるおばあちゃんの家族の戸籍を集めまくっていました。
最終目的は司法書士さんに相続登記をしてもらうことなんですが、相続人が増えに増えて、中にはご縁断絶している親戚もいるとかで、おばあちゃん「こんなつもりではなかった」とあきらめムードです。

とはいえ、こちらとしても受けた以上は中途半端に終えるわけにもいかないし、終わるとしても、ここまでやりましたよという説明をせねばなりません。というわけで、お会いしてお話をしてきました。

除籍謄本を確認していたときに、このおばあちゃんには生まれてすぐに亡くなった弟さんがいることがわかりました。
その子の存在を知っているのだろうか?ちょっと気になっていることでした。
そこで、「〇〇さん、もう一人弟さんがいたの知ってますか」と聞いてみました。虚を突かれたような表情のおばあちゃん。
そこでその弟さんが載っている除籍謄本を見てもらいました。

あっ・・・覚えてる。戸籍に載ってるの?私この子のことすごくかわいがったのよ。教科書でみた「まこと」っていう名前を私がつけたの。

その子は「まこと」ではありません。ご両親が名づけ、出生と死亡の届出がされていました。ここからは私の想像ですが、わずか5日間の命だったその子は、出生と同時に長く生きられないことをご両親は悟ったに違いありません。長女であるおばあちゃんはそのころ6歳。両親が守っているその小さな赤ちゃんを「まこと」と心の中で名づけ愛おしく思っていたのでしょう。もしかしたら亡くなったときに抱かせてもらったのかもしれません。

本人曰く「激動の人生」を送るうちに、まことと名付けた弟のことは記憶の片隅にしまっていつしか忘れていたのでしょう。しっかりと戸籍に残る弟を70年ぶりに目の当たりにしたおばあちゃんは、今にも泣きそうでした。

現段階で判明していた相続人の相続関係図、お渡しするために持っていったのですが、おばあちゃんの希望で、手書きでその「まこと」ちゃんを追加してきました。

触れていいものかどうか…と思っていたのですが、言ってよかったです。
おばあちゃんの大切なものが一つ増えたようでした。


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