痒い言葉

なにが苦手といって、蚊に刺されて痒いことほど不快なことはありません。痛みには結構強い方だと思うのですが、痒いのはホントにだめで我慢できません。

皮膚感覚にはさまざまなものがあります。熱い、温かい、冷たい、柔らかい、硬い、痛い、なめらかな、など。そしてこれはどれも「言葉」の形容詞になるんですね。「温かい言葉」「痛い言葉」・・・日常会話の中でも使われると思います。

しかし「痒い」だけは当てはまりません。「痒い言葉」?イメージが湧きませんよね。「むず痒い」というのはありますが、「痒い」そのものとは少々違います。

そもそも「痒い」とはどういう状態を指す言葉なのか。手元にある『広辞苑』(第4版)によると「皮膚を掻きたいような感じ」とあります。「痒い」状態は強弱の差こそあれ人類に共通の感覚で、他の言葉で説明するのは難しいようです。似たような感覚に「こそばゆい」や「くすぐったい」あるいは「むずむずする」がありますが、こちらは言葉の形容詞として使われますよね。でも、痒いだけはそうではないんです。

「痛くも痒くもない」「痒いところに手が届く」。そんな言葉はあっても、痒いという感覚だけは、他の例えへの転用を寄せ付けないほど独立した、強烈で、そして我慢できない感覚であるようです。

でも、将来ひょんなことから「お前、なんか痒いこと言うなぁ」といった新しい使われ方が生まれるかもしれません。意外と手厳しい雰囲気ですね。



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