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博物画ポストカードを新たに7種類製作しました。

試験的に製作したクラーケンの博物画ポストカードが想像以上の仕上がりから、以前より製作したかった図版から、更なる試作的意味合いも含めた製作を行いました。

自身はこれまで印刷用の入稿データを作成した事が無く、印刷仕上がりとの色再現性や、特に解像度がどこまで保てるかといった事は実際に作ってみないとわからないことが多く。
元の版画からスキャンして、汚れなどを修正して、CMYKに変換して、などなど。
不慣れなことが続きます。

様々な試行錯誤と疑問、そして、仕上がりへの不安の後に7種類が完成しました。

今回はそれぞれの紹介となります。

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ケープキンモグラの図2種類。
南アフリカに生息するケープキンモグラがうつ伏せと、ひっくり返っている図です。オランダの薬剤師で博物のコレクターであったアルベルトゥス・セバによって1730年代に出版された「博物宝典」に収録されています。
このキンモグラの剥製を見て、二名法を確立・普及したカール・フォン・リンネはキンモグラの学名記載を行っています。

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という逸話はさておき、ひっくり返っている絵が、あえて説明はしませんが、カワイイ。

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ナッタージャックヒキガエル
ヨーロッパに棲息するヒキガエルの1種の図は、1700年代に画家のアウグスト・ヨハン・レーゼル・フォン・レーゼンホフによって製版、出版された欧州の両生類図譜の中の1枚です。
彼の作品は昆虫や池の水に棲息するヒドラやプランクトンの図など、当時の従来の図版とは異なる、画家としての視点、特に生きている姿を写実的に描写する点が特徴です。

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こぐま座(北極星)とおおぐま座
英国で1820年に出版されたThe cyclopaedia に収録された星図より、こぐま座(北極星)と、おおぐま座の図を抜粋したものです。
北極星とすぐそばに北の極点がある事、おおぐま座の胸(というか背中)に位置するα星が私の屋号のdubhe の由来そのものとなります。
私的な意味としてもアイコンとなる1枚です。
そして、きりん座も描かれてます。それがふと気付くと、視線がキリンに向いてしまいますね。こぐま座とおおぐま座の星図でのみ、尻尾がとても長く描かれています。このしっぽの長いクマの描写の始祖と言われているものはアルブレヒト・デューラーによる星図になります。彼の観察力や各国の国王が所有する珍しい動物の飼育園や、都市でのクマ使いなどの見せ物を見る事が出来る環境から、実際のクマのしっぽが長いと誤認していたのではなく、星座の星の位置に合わせて尻尾を伸ばした描画を行ったと、私は判断しています。

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アオリイカ
1820年代にフランスによる世界一周の探検航海をおこなったコキーユ号の成果を示した大判図譜の1枚です。体表の色素細胞による斑点さえも、点刻の銅版画で描き写したもので、今回のポストカードではどこまで出力されるか心配だったのですが、とても良い仕上がりとなりました。
今回のポストカード製作の1枚目である大タコのクラーケンと対をなす形となりました。が、イカタコは今後も自身のポストカード製作で一大勢力となる兆しです。

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ブドウの図
丸々として、葉や蔓の配置など“置いている感”のある図は、1860年代フランスで出版された「植物界」の食用植物を纏めた巻に収録された1枚です。
描画にはルーレット(金属製のローラーに一定のトゲを立てた道具、銅や鉄の板上で回転させることで、微細な彫りを簡便に行う)を使用しています。

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色相図
こちらはブドウの図と同じ1860年代の植物界の図譜に収録された1枚です。なぜか色相図が1枚収録されています。当時の色彩論はプラトンからゲーテまで、思想を基にしていたものが、この図では色のグラデーション、カラーシステムとして描かれています。

古い色相図は中々無く、色相図のみを入手しようとすると非常に困難となっています。その理由として、当時において、版元での着彩は顔料代、工程コストのかかる事、結果、購入できる人が限られていること。科学史だけでなく美術史、哲学史の視点での蒐集が現代において行われてきた事が挙げられます。

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現在は8種類の展開となりましたが、その後も印刷用のデータ制作は継続しております。現在検討中の物は、近日詳細を公開予定の、3月20日、21日に北品川の鯨塚すぐ近くでの催し事で販売開始し、5月までに15〜20種類を用意できればと思っております。

※3月20日、21日の催し事の詳細については3月1日より公開開始予定です。

そして、これらポストカードの販売についてですが、順次、私自身が出展している催し事に持っていく予定です。しかし、会場都合やブース広さによっては、陳列できない場合もあります。その時はひと声お声かけください。カタログファイルを出しますので、その時はコソコソせず、ご覧になり、選んでいただければと。


現在の状況や遠方による理由によって、行く事が困難な状況への対応として、テーマに絞った5枚や10枚といったセット販売をBASEなどで実施検討中です。また、店舗や企画展などでの販売を検討については、もう少し種類が増えてから検討できればと思っております。

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