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サウジアラビアのザムザム・ウォーター

サウジには30年前に初めて足を踏み入れて以来、現役の時は結構通っていた。
時代はMBSに替わって、まず、入国時の役人の対応が劇的に変わった。昔は列に並んでいると外国人は牛馬並みの酷い扱いでノロノロ歩いていると怒鳴られて鞭打たれるぐらいの勢いだったが、時代は変わり、揉み手をするぐらいのニコニコ顔で「ようこそ、サウジへ」と言われると、違った国に来たような気分になった。

サウジと言えば、メッカ。残念ながら、イスラーム教徒でないと入れない街だ。ジェッダには何回も出かけたが、ハイウエイを通り、ゲート前のインターチェンジでUターンして帰るだけだった。メッカのカーバ神殿の回廊は日本企業が設計し、いつもの地元企業が改修した。日本のおもてなしの技術が活きているその日本企業の成果を見に行ってみたい。

メッカに行きたいもう一つの目的は、かの有名な(イスラーム教徒でないと知らないかも?)ザムザム・ウオーターを手に入れることだ。今から7年前ぐらいに、ジェッダ空港のインターナショナル棟の外に、なんと販売小屋が出来ていた。イスラーム教徒でなくても買えるとのことで、皆で買い求めた。5リッターで8サウジ・リアル=当時で240円程度であり、サウジのスーパーで買うミネラルウオーター程度の価格であり、良心的な価格だ。そして、驚いたことに、箱に入ったザムザム・ウオーター様の専用受付カウンターがあったのだ。当然、荷物受け入れのコンベアーの周りは水浸しであり、他の荷物が被害を受けないように専用受付を設けた訳が分かった。

ドバイに帰り着いて、早速イスラーム教徒のスタッフと分かち合い飲んでみると、日本の名水100選の水に負けじ劣らず、粒子の細かい柔らかい水だった。飲めば体内の毒素を流し去るのだろう。霊験あらたな理由も分かったような気がした。日本に持って帰った人は、スーツケースの中が水浸しで、半分ぐらい残っていた水を近所の大学に持ち込み、イスラーム教徒の留学生に振舞い、とても喜ばれたそうだ。

日本人はすぐにビジネスを思いつくが、これは輸出商品にはなり得ない。本来ならメッカでしか飲めない、メッカで飲むべきものを、よく空港でのお持ち帰り品にしたなと、空港で見つけた時に驚きを感じた。しかしこれは、年老いてハッジ/ウムラを終えたイスラーム教徒への優しい心遣いだったのだ。
ドバイに帰り早朝のアザーンを聞きつつ、イスラーム社会の粋なはからいに思いを馳せながらザムザム・ウオーターに酔いしれた。(了)

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