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カスタマージャーニーを実データから可視化する!? 時系列キーワードの開発日誌 Vol.1


プロローグ:なぜ谷口本部長はコーヒーを買ったのか?


その日、私は、東京にいた。

「相談したいことがある」と、私の上司の上司の上司にあたる谷口本部長から呼び出されたからだ。

谷口本部長は、某大手コンサルティングファームから弊社にやってきて、若手ながら新規事業の責任者に抜擢された。

技術戦略にも大きく関わり、社内の魑魅魍魎が集まるプレゼン大会で何回も優勝している。

間違いなく、これからのヤフーを担う人間である。

一方の私は、バリバリの平社員で、地方勤務。仕事は社内システムの開発。

プレゼン大会に出場したことはないが、私の後は場が荒れるからプレゼンはしたくないという声も聞こえてくる。

我が身ながらお世辞にも会社から注目されているとはいえないポジションと、業務内容である。

そんな谷口本部長が、こんな私に一体何の用件だろう。

まさか本部長のコラ写真を作って遊んでいたのがバレたのか。

飲み会で蜂の子を無理やり食べさせようとしたことをまだ怒っているのか。

ぐるぐると思いを巡らせたがピンとくる答えもないまま、新幹線は東京駅のホームに入ってしまった。

ヤフーの紀尾井町オフィスは、東京駅から丸の内線で一本。

オフィスに到着し、指定された時間に、指定された会議室のドアをあけると、そこに谷口本部長の姿があった。


本部長はこちらを振り返らず、タンブラーを持って、突っ立ったまま窓の外を見ている。

「失礼します。」

私の存在を認知していない可能性を考え、念の為声を出してみた。

「あそこに新しいコーヒーショップができたんだ。」

本部長はやはり窓の外を見たまま呟いた。

視線を追うと、青山通りの並びにコーヒーショップがあった。しかし大阪で勤務している私にはそれが最近できたものなのかわからない。だいたい毎回来るたび景色が変わっている気がする。

「僕が今飲んでいるこのコーヒー。そこで買ったんだけど、なぜこれを飲んでいると思う?」

本部長はこちらに向き直り、手に持ったタンブラーを前に突き出した。

「オープンしたから、お試しで、という感じですか?」

「それもあるけど、それだけじゃない。」

「喉が渇いたから、ですか?」

「それなら水を買うかな。」

「誰かにオススメされたから、ですかね?」

「それも理由の1つではある。でも買おうと思った理由が他にもある。」

私に何をさせたいのだろう。これは何かのテストなのだろうか?

沈黙に耐えきれず、視線を落とした。その瞬間、妙な違和感を覚えた。

いつもの本部長のオフィスカジュアルに似つかわしくないものが足を包んでいる。ランニングシューズだ。

「ランニング、はじめたんですか?」

ヤフー紀尾井町オフィスは皇居の近く。仕事の前や後に皇居ランを楽しむ社員も多い。

「いいね。核心に近づいてきた。このコーヒー、ソイラテなんだ。大豆はタンパク質を多く含んでいるから運動後に摂るのが良いんだよ。」

「なるほど。ランニングをはじめたから、ということだったんですね。」

「そう。なんでだと思う?」

「えっ」

「ランニングをはじめた理由ですか?」

「そう。」

まだあるのか。正解にたどり着いたと思ったら、足首を掴まれ、深い穴に引きずり込まれた。終わりのない禅問答は続く。

本部長を改めてよく見てみる。なにかヒントがあるはずだ。

「もしかして、ですが、」

遠慮がちに口を開いた。

「寝不足、ですか?」

本部長は少し驚いたような表情を見せた。

「・・そう、なんだ。よくわかったね。」

まだ時間としては昼前だ。その割には本部長はどこか疲れているように見えた。

そして最近深夜にメールが飛んでいたことも記憶の片隅にあった。

「最近眠りが浅くてね。調べたら、日中に運動すると良いらしいから、ランニングをはじめてみたんだ。」

「なるほど。寝不足でランニングをはじめて、運動後のタンパク質摂取にソイラテを飲んでいると。」

やっと満足する答えを導き出せた。

ようやく本題に入れると安堵していると、間髪入れずに本部長は続けた。

「これをデータで説明して欲しいんだ。」

私の仕事は、ヤフーのデータを可視化するシステムの開発。相談の内容が朧げながらわかってきた。

「・・といいますと?」

「僕は寝不足の悩みについても、ランニングについても、検索サイトで調べた。ソイラテもQRコード決済だ。データは全部オンラインにあるはずだろ?」

「おっしゃることはわかりますが。」

「君はそれを可視化するシステムを作っていると聞いた。だから呼んだんだ。話を聞かせてくれないか、"KQS" というやつの話を。」

KQS、それは私を含む大阪チームで開発した、今までにないデータ可視化ツールだった。


ヤフー社内の可視化ツール「KQS」について


はじめまして。ヤフーでDS.INSIGHTというプロダクトを開発しています。田村と申します。

導入のエピソードが大変長くなってしまいましたが、ごめんなさい、半分以上嘘です(谷口本部長はこんな禅問答はしません)。

DS.INSIGHTでリリースする予定の機能「時系列キーワード」について書いて欲しいと、いつもお世話になりっぱなしの同僚の矢吹さんからリクエストもらったので、

開発秘話というか、雑記というか、どういうものになるか自分でもわかりませんが、ほそぼそとnoteで書いていきたいと思います。

冒頭のエピソードでも書いてますが、私はもともと(今もですが)社内向けのデータ可視化ツールの開発担当でした。

担当しているツールの1つが、”KQS” と呼ばれるものです。

このKQSが、DS.INSIGHTの新機能「時系列キーワード」へとつながります。

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KQSとは一体なんなのか。それはこのツールの正式名称を聞けばわかります!

KQS、は、
「(K)この、(Q)クエリを検索する人はこのクエリでも検索してます、(S)しらべまくりツール」
の略です!

・・・!

ブログ記事だとこれを読んでいるあなたがクスリと笑っているかどうか確かめられないのがつらいところですが、話を先に進めます。

このツールは、名称のとおり、ヤフー検索のデータを使って、

とあるキーワード を検索している人が、他にどのようなキーワードを検索する傾向にあるか?を可視化するツールです。

※個人の検索履歴を可視化するものではなく、統計値です

例えば、「ハワイ」を検索している人は、「グアム」を検索する傾向が強いですし、「卒業旅行」とか「海外保険」とか「国際免許の取り方」でも検索しています。

これだけでも、

ハワイ旅行を検討している人の他の候補地はどこなのか?(グアム)
なんでハワイ旅行を検討しているのか?(卒業旅行)
旅行にあたってどんな準備をしているのか?(海外保険、国際免許)
のようなことがわかります。

さらに、検索の前後関係も調べることが可能です。

「冷蔵庫」を検索する30日前に、「東京 1人暮らし」を検索する傾向がある、とか、さらにその60日前には、「エントリーシートの書き方」を検索している、ということがわかります。

つまり、就職活動をして、どこかに内定をもらい、東京での1人暮らしが決まり、家具家電を検討している、ということがどんな時間軸で進んでいるか、がわかります。

※わかりやすく説明するための例であって実際のデータではありません

KQSを使えば、このようなレポートが作れます

ビッグデータから見えたママの悩みと育児あるある 生後102日頃には子供をモデルに応募したくなる?


谷口本部長の要望である「行動のきっかけ」は完璧にわからなくても、検索キーワードの時系列変化をみることで、

「子供が生まれてから何日後に旦那にイラつきはじめるか?」のような、ある事象と事象の前後関係は、データで説明できそう、ということがKQSを利用した様々な事例でわかってきました。

これが、どういうことに役立つのか?

たとえば、

自社(あるいは競合)の製品を検討している人は、他にどういう製品を検討しているのか?
自社(あるいは競合)の製品の検討の前後に、どういう検索行動があったか?(興味のきっかけや、潜在ニーズを知る)
が、わかることで、

● 潜在顧客に、いつ、どんなコミュニケーションをとると効果的か?
● 自社製品購入後の顧客に、どのようなアフターフォローをすべきか?
● 競合との差別化のために、どのようなポジショニングをとるべきか?
などの検討材料として利用できるのではないか、と考えています。ここに書いたのは一例ですので、他にも様々な活用事例があります。

そんな社内向けのKQSが、DS.INSIGHTに「時系列キーワード」として登場しました。みなさんも使えます!

さあ、まずは ここから 資料ダウンロードしましょう!

なんか開発日誌というよりプロダクトの紹介になってしまいましたが、開発日誌Vol.1 は以上です。Vol.2 のお届け日は未定です!それではまた会う日まで。

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